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異世界最強の自宅警備員  作者: 親交の日
第五章 建国
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5-3 高まる戦意

短いので、二話同時投稿としています。


新作『お約束破りの魔王様』の方も是非ご覧下さい!

 



ーーーフィリップーーー


 謁見の間には緊迫した空気が流れていた。それも報告に現れた兵士が原因だ。彼の報告によればオリオンが王都を脱出したらしい。さらに彼の屋敷や桜離宮には人っ子ひとりいなかったという。アリスもいなかったそうだ。


「なぜ取り逃がした!?」


 殿下がお怒りだ。怖い。兵士は萎縮しながらも、


「幻を見せる効果がある魔法陣が描かれており、これに騙されました」


 と答えた。凄いなぁ。


「この役立たず!」


 殿下が手に持っていた銀製の盃を投げた。ひっ! やっぱり怖い。


「殿下。それよりも迅速に捜索させるべきかと」


「うむ。そうだな。すぐに捜索させろ!」


 父上の進言に従って殿下は捜索の指示を出した。その数日後、貴族たちから一斉に急使が送られてきた。彼らは口を揃えて、穏健派の貴族たちが反乱したと言う。筆頭はマクレーン公王とオリオンだ。生意気な。ひねり潰してやる。


「殿下! 逆賊オリオンの討伐をボクにお命じください!」


 オリオン討伐に志願して、ボクは先手の大将を任された。


ーーーオリオンーーー


 檄文をカールさんに届けた際、打ち合わせを行った。基本的に穏健派の行動は俺が立案している。それをカールさんの名前で発表しているのだ。


「地理的な関係上、大きな軍勢が集まることができるのは我々だけですので、他の方々には防衛を指示しています。こちらが用意できた兵は五万。敵は十万。このうち半数が主力の我々に向かったとして、残りは三万対五万。なんとか凌げると思います」


「個々の戦闘に関しては自己責任でいいか」


「当然でしょう。さすがにそこまでは責任が持てませんから」


 もしそんなことをしようとすればあと何万の兵が要るのかわからない。


「ところで決戦を行う我々はどのような戦いをするので?」


「一撃を加えてからの籠城戦ですね」


「籠城戦? 野戦ではなく?」


 カールさんに意外な顔をされる。


「野戦も選択肢としてはありますが、籠城戦の方が泥沼にできますから」


「ではこちらも籠城するとしよう。この城はかなりの堅城だからそう簡単には落ちない。いっそ婿殿もこちらに籠るかな?」


「いえ。むしろカチンがあるからこそこの戦法が成り立つのですから」


「そうか。婿殿と戦うのもよいと思ったのたが」


「戦えますよ」


 籠城戦に片がついたあとの反攻戦では嫌というほど肩を並べて戦う機会はある。少し残念そうにしていたカールさんをそう励まし、俺たちは握手を交わした。次に会ったのは互いに軍勢を引き連れて。ただし、俺が一万五千の全軍であるのに対し、カールさんはたった百だ。それにレオノールちゃんを連れて。そりゃ最初の野戦はうちが受け持つわけだから挨拶程度で済むけど、なぜレオノールちゃんがいるのか? しかも鎧なんかを着て。そこのところをカールさんに訊ねてみると、


「婿殿の戦いぶりを直に見てもらいたかったのだ。普通は渋られるが、婿殿のところにはシルヴィア殿がいらっしゃる。それに見たところ、ちらほらと女子もおるしの」


 確かにうちの軍はシルヴィが一軍を率いていますし、フィオナも魔法部隊の指揮官を務めています。そして魔法部隊には女性もいますよ。ですが、それがレオノールちゃんを戦場に立たせていい理由にはなりません。


「娘をよろしく頼む」


 しかし頭まで下げられてはくびを縦に振るしかなかった。押しに弱い日本人気質が恨めしい。

 カールさんとは軽い挨拶をしただけで別れ、戦場へと突き進む。事前に策定した計画ではまず敵の先鋒を破り、一時撤退して籠城戦、タイミングを見計らって攻勢に移ることになっている。目的地は王都から北へ向かう街道にある平原だ。ここなら野戦にもってこいの地形である。斥候によると敵軍は五万。陣立ては先鋒と中軍がそれぞれ二万、後詰めが一万となっているらしい。そして先鋒を率いるのはフィリップ。与し易いと見た。もっとも油断はしない。戦いに絶対などないからだ。目的地の平原にたどり着くと、俺は主だった将を集めて作戦を説明した。


「ここからさらに進んで敵を誘い出す。先鋒はシルヴィに任せる」


「承知しました」


「お待ちください。なぜシルヴィア様なのですか? 彼女は大切な奥方。そのようなお方に危険な役目を任されず、ここはどうか自分にーー」


「その申し出は嬉しいが、フレデリック。この作戦は先鋒がシルヴィだから成功率が高まるんだ。こちらがシルヴィ、相手がフィリップだからこそ上手くいく」


 ここで昔、フィリップがシルヴィに執着していたことを明かす。フィリップからすれば過去の痴態を暴露されているわけだから悶絶モノだろうが、ここにいないのでセーフである。だが、このことを説明すると不満気だった者たちも納得顔になった。


「なるほど。そういうことですか」


「そうだ。そしてフレデリック。お前には中軍を任せる。敵とはすぐに戦えはしないが、この仕事が作戦の成否を決める。心してかかれ」


「はっ。それで仕事とは?」


「それはなーー」


 説明し終わると不思議な顔をされた。いや、そんな顔しなくてもいいじゃん。

 ともかく作戦は動き、シルヴィが先鋒隊の三千を率いて先発。すぐにフレデリックの中軍二千も続いた。




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