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異世界最強の自宅警備員  作者: 親交の日
第三章 ブルーブリッジ伯爵家
43/140

3ー10 シルヴィの願い

短いです

 



ーーーオリオンーーー


 エキドナを迎え入れるべきかどうかーーそれを議題に家族会議が開催された。

 その結果、


「では賛成四、反対〇により賛成多数。エキドナ殿を騎竜として伯爵家に迎え入れることを決定します」


 イアンさんが決議を発表した。可決されたことに俺は安堵する。なぜなら一度受け入れておいてやっぱ要りませんというのは通用しないからだ。下手をすると身銭を切らなければならないところだった。危ない危ない。

 ちなみに会議は当初から賛成多数となる見込みでスムーズに進行した。というのも、俺は言うまでもなく賛成派。シルヴィは俺の考えに異議を唱えることはない。イアンさんは王様が許可し、さらには竜王本人から頼まれたのであれば断れないという消極的賛成。ソフィーナも仕方ない、と言って消極的賛成。よって冒頭の立場表明が終わった途端に決議となり、賛成多数で可決となった。

 俺はこのことをメイドに指示して外で待っているエキドナに伝える。

 彼女がやってくる間に、俺はシルヴィに伝達事項を伝える。


「さて、これで会議は終わりなわけだが、シルヴィ」


「はい」


「今回のドラゴン騒ぎをはじめ、護衛としてよくやってくれているな」


「いえ。私はオリオン様に命を救われた身。その大恩に報いるためには当然のことです」


「とはいえその忠勤には応えたい。そこで、何かひとつ望みを叶えよう」


「そんな! 畏れ多いです」


「そう言わず、気持ちとして受けてくれ」


「……わかりました。しばらく考えさせてください」


「もちろんだ。いつでも言ってくれ」


 この遠慮ぶりからすると墓まで持っていきそうだが……まあ、使う気配がなかったら誘導すればいいか。

 そんなことを考えながらしばらく待っていると議場におずおずと入ってきた。


「竜王ファフニールが娘、エキドナです。この度、主様に騎竜としてお仕えすることになりました。よろしくお願いいたします」


 と、優雅に挨拶する。その姿、所作は気品に満ち溢れていた。まさしくお姫様、あるいは深窓の令嬢といった様子だが、えてしてそういう奴に限ってやらかすのである。天然ーーというよりは世間知らず。もっといえば対人スキルが低いのだろう。

 事件は、挨拶のあとの歓談で起こった。

 最初はドラゴンだということで萎縮していた様子のソフィーナたちだったが、エキドナが呼び捨てでいいとフランクな面を見せたことから和やかな雰囲気に包まれていた。


「エキドナはお兄ちゃんの騎竜になることはどう思ってるの?」


 ある意味当然といえるソフィーナの質問。ドラゴンという最強の存在が人間に使役されることについてどう思っているのか。それに対してエキドナは明確に答える。


「わたくしは主様の騎竜になれて嬉しいです。父上よりお強い方にお仕えできるなんて、夢のよう……。公私ともに全力で主様を支える覚悟ですわ!」


「公私ともに?」


 シルヴィが食いつく。こういうのに反応するのはソフィーナだと思ってた。意外。


「はい。わたくし、父上から主様のお話を伺って、そしてそのお姿を拝見して、ドラゴンの血が騒いで仕方ありませんの。いずれは稚児を作りたいですわ」


「ぶっ!」


 あ、イアンさんが咽せた。オーレリアさんのお兄さんだけあって動きのひとつひとつが洗練された紳士な彼も、この衝撃発言には驚きを隠せないらしかった。それはソフィーナやシルヴィも同じで、目を丸くしている。


「あの、エキドナ嬢。人間とドラゴンは子どもを作れないのですが……」


「前例はあります。わたくしのように人の姿をとれるドラゴンと人の間に子ができたそうですわ」


「でもエキドナって竜王の娘なのよね?」


「兄上たちがいらっしゃるので大丈夫です」


 イアンさんとソフィーナの懸念を、エキドナはバッサリ切り捨てていく。そしてシルヴィはその姿をじっと見ていた。

 やがて二人は説得を諦め、その流れでお開きとなる。部屋に戻ろうと席を立ったとき、シルヴィに呼び止められた。


「オリオン様。望みを叶えていただきたいのですが」


「いいぞ。部屋に戻りながら話そうか」


 と、彼女を伴って廊下を歩く。死蔵するかと思っていたらその日のうちに使うとは。意外だ。

 そしてシルヴィはずっと黙っていた。屋敷は広く、部屋を移動するのに数分かかることもざらにある。その間に十分話せることだと思ったのだが、言い出すのを待っているといつの間にか部屋に着いてしまっていた。


「シルヴィ。望みがあるんじゃなかったのか?」


「はい。ただあまり他人に聞かれたくないので、お部屋でもよろしいでしょうか?」


「そういうことなら構わないさ。人払いもしようか?」


「ありがとうございます」


 そんなわけで、部屋の前に立って警護してくれている兵士たちを一度詰所へ戻す。彼らもシルヴィの強さを知っているから、すんなり応じてくれた。


「よしこれでいいだろ。なら座ってーー」


「オリオン様」


「ん?」


「ーー好きです」


「……」


 思わず天を仰ぎたくなった。レオノールちゃんとの電撃婚約に、エキドナの登場。次いで腹心からの告白……。ちょっと最近イベントが多いぞ。


「もちろん、奴隷上がりである私では、妾としても格が足りないことは重々承知しています。ですが、この気持ちを抑えられないのです」


 シルヴィはずっと胸に秘めていた想いを吐露する。そして請願した。


「どうか、どうかお情けを。一度だけで構いません。一度だけ、一夜だけ、私に夢を見させてください。それだけで私には十分です」


 これはかなり勇気を必要とする願いだ。というのもこの世界で男はともかくとして、女には何よりも純潔が求められる。だから男として関係を持つということは、婚姻関係を前提としている。しかしシルヴィが言っていることーーただ一度の関係でいいというのは、その後は一生独り身か、妾や娼婦の道を選ぶことを意味している。つまり自分の人生を半ばかなぐり捨ててでも俺を求めているのだ。それだけ求めてくれるというのは、とても嬉しいことだ。


「……夜、部屋に来い」


「オリオン様!」


「ただし、一夜限りの夢ではないぞ。これからずっと、お前は俺の隣にいるんだ」


「っ……は、はいっ!」


 その夜、俺たちは結ばれた。




これにて三章は終了です。なお四章の最初は時間が少し飛びます。


予定していた新作は四章が終了した時点で投稿します。

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