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異世界最強の自宅警備員  作者: 親交の日
第三章 ブルーブリッジ伯爵家
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3ー1 家臣集め

第三章の開始です




ーーーオリオンーーー


 伯爵に叙された俺はオリオン・ブルーブリッジと名を改め、商人としての仕事に加えて貴族としての仕事に忙殺されていた。

 前者はほぼソフィーナに丸投げしているとはいえ、名目上は未だに俺がトップ。ゆえに決裁しなけれはならない書類が存在し、その処理に追われているのだ。

 この時点でも首がほとんど回らないというのに、さらに叙爵によって増えたのが貴族としての仕事。多くが王都の開発に関するものだが、一部にそれと異なる仕事が発生した。簡潔に言うと貴族とのお付き合い。パーティーに招待されたり、されてばっかりだと格好がつかない(お姫様談)ということで招待したり。王都開発事業の利権を分けろ、俺の派閥に入らないか、などエトセトラ。

 そしてそれだけでも面倒なのに、新たなタスクが発生した。経緯はこんな感じ。


ーーーーーー


 叙爵後に初めて開催されたお姫様主催のお茶会にて、


「オリオン様。伯爵への叙爵、おめでとうございます」


「「おめでとうございます」」


「おめでと〜」


「おめでとう」


 この席にいるオーレリアさん、レオノールちゃん、ラナさん、べリンダさんがそれぞれの言葉で祝ってくれた。


「ありがとうございます」


 それに俺はお礼の言葉を返す。ここまでがお堅い社交辞令。いつもより引き締まった感じの空気はすぐさま霧散し、和やかな歓談モードになる。


「それにしてもオリオン様が伯爵になられるとは思いませんでした」


「はい。自分でも驚いています」


「子供なのに名誉貴族になったから何か凄いことをすると思っていたけど、まさか一気に伯爵になって、王都の開発をすべて任されるなんて、全然想像できなかったな」


 べリンダさんがそう言って笑う。

 --というようなやりとりがあり、叙爵のことで盛り上がっていたのだが、


「これから大変ですね。お屋敷の造営や家臣の雇用など家を整備することに加え、王都の開発事業を任されるなんて」


 そんなオーレリアさんの発言に俺は動きを止めた。


「……家臣って、要りますか?」


「もちろんです。オリオン様は領地がありませんので他の伯爵家よりも人は少なくて済みますが、それでも伯爵家に相応しいだけの数を揃えないとならないでしょう」


 何を当たり前のことを訊いているんだ、とばかりに首を傾げるオーレリアさん。やめて! そんな目で見ないで!

 俺が目を逸らすと彼女は恐る恐るといった様子で訊いてきた。


「ま、まさか家臣を雇われるおつもりがなかったのですか?」


「はい……。その発想さえありませんでした」


「ちなみに、家臣にできそうな人物に心当たりは?」


「ーーり」


「え?」


「ひとり」


 バツが悪くてボソッと小声で答えた。そんなのシルヴィしかいない。ソフィーナは商会を任せるから除外。母は母だからこちらも論外。メリッサさんとアーロンさんは商会の方で雇ってしまった。今引き抜けば混乱は必至だろう。無用な混乱を招くことは避けたい。そうやって除外していくと残ったのはシルヴィだけだったのだ。


「ひとりですか……」


 オーレリアさんも微妙な表情になる。ですよねー。


「ならあたしの兄貴たちを雇わないか?」


 そう唐突に切り出したのはべリンダさん。え? すると他の人たちも我も我もと身内を家臣にと勧めてきた。どういうこと?


「貴族となれるのは当主の後継者ーーつまりは長男だけです。それ以外の貴族の子弟は分家に入ったり、他の貴族の家臣となったり、冒険者になったりして自立するのです」


 俺が困惑していることを察したオーレリアさんが解説してくれる。なるほど。そういう慣例なのね。


「でも家臣になるっていいんですか?」


 なんとなく、貴族といえばプライドが高いイメージがある。偏見なのだろうか?


「たしかに嫌がる方もいますが、分家に入れるなんて稀ですし、冒険者の生活は稼げるようになるまではギリギリの生活を強いられます。それよりも貴族の家臣になった方が生活が安定しますから、多くの貴族子弟が家臣となる道を選びますね」


 現実的な意見が返ってきた。世の中世知辛いね。


「貴族の子弟を家臣として雇うのは貴族同士の互助の一環なのです。--というわけで我がボークラーク家の次兄を雇っていただけないでしょうか」


 さらっと身内を勧めてくるオーレリアさん。あなたもですか……。

 若干呆れた目を向けていると、彼女はあわあわと慌てる。


「あっ、べ、別に強要しているわけではありませんよ。ただ次兄の進路が決まっていないのでよければと思って……」


 オーレリアさんは優しいが、時折強かな面を見せる。そういったところが貴族らしく、またこうやって慌てる姿は年相応に可愛い。彼女の慌てぶり。おそらく彼女は俺の機嫌を損ねたのではないかと心配したのだろう。慌てて弁解した。たしかに解釈のしようによっては強要したともとれる。もっとも彼女の人となりを知っているからそんな風には思わないが。

 さて、家臣の雇用についてだが、彼女たちの言う通りに貴族子弟を雇うことに異存はない。だがそういって受け入れていたのではきりがない。ある程度の線引きは必要だろう。


「前向きに検討します。……そうだ。丁度いいから試験をしますか」


「試験?」


「ええ。これで基準を満たせば合格ということで」


ーーーーーー


 そんなわけで家臣選抜試験を行うことになった。会場は新築のブルーブリッジ伯爵邸。敷地面積は桜離宮とほぼ同じ。ついでにいうとお隣である。……あまりに敷地が広いのでお隣という実感はゼロなのだが。

 試験の内容は筆記(国数社)、実技(武術)、そして面接だ。内容は本当に基礎的なものばかり。合格者が多数出たら二次試験でもするか、と考えていたのだが。


 結果、合格者はひとり。


 ……ちなみに総受験者数は百名以上だった。受験者たちを苦しめたのは数学。平均点が十五点と聞かされたときには耳を疑ったね。日本だと中学二年くらいまでの内容なのに。

 唯一の合格者はオーレリアさんのお兄さんのイアン・ボークラークさん(21)。彼には我がブルーブリッジ家の家臣の取りまとめ役として頑張ってもらう。

 なお、あまりにも合格者が少なすぎるため、武術と面接の結果が良好だった者を武官として二十人ほど追加合格とした。この中にはべリンダさんのお兄さんのフレデリック・キャンベルさん(17)がいた。

 変わり種としては商会へ流れた人物もいる。ラナさんのお兄さん、ルーカス・ウェズリーさん(25)だ。彼は研究者として商会に入った。兄妹揃って研究者……とても似ていたとだけ言っておこう。

 ともかくイアンさんが文官、シルヴィが武官それぞれのトップとなってブルーブリッジ伯爵家の家臣団は構成される運びとなった。

 屋敷の使用人は俺が能力で生み出した。執事のセバスチャンとメイド長のステラを筆頭に執事ひとり、メイド十人の十一人態勢で屋敷を切り盛りしていくことになる。

 まずはこれでいいかな、と安堵した矢先にまた問題が起こった。もういい加減に休ませてくれよ。ニート生活はまだまだ遠いようだ。




よろしければご意見、ご感想をお寄せください。またブックマークもよろしくお願いします。


現在、書き溜めと新作の構想を練っているため更新頻度が落ちる予定です。なお新作は魔王様が暴れまくる内容になっています。自宅警備員が五十話に達するころに投稿を始める予定なのでお楽しみに!

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