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異世界最強の自宅警備員  作者: 親交の日
第二章 自立
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2ー2 ワケあり物件




ーーーオリオンーーー


 アーロンさんから天啓を与えられた俺は翌日、レナードのもとを訪れていた。


「不動産?」


「はい。不動産屋をしようと思いまして。ついては物件を手に入れたいのですが、紹介していただけませんか?」


「別に構わんが、買収が目的なら無理だぞ。金貨を馬車百台くらいに積まんとな」


「わかっています。ただ物件を手に入れたいだけですよ」


「ならいい。ロバートに案内させよう」


 レナードに計画を認められ、俺の『不動産経営で一生ニート生活』計画は実行に移された。シルヴィを連れ、ロバートさんが操る馬車に揺られてレナードが紹介してくれた不動産屋へ向かった。


ーーーーーー


「いらっしゃいませ、お坊ちゃん。私ドーン商会のブルーノ・イングラムと申します」


「はじめまして、ブルーノさん。オリオン・ゲイスブルクです。今日はあなたにとっていいお話を持ってきましたよ」


「それはそれは。興味深いですね。立ち話もなんですから、中へお入りください」


 ブルーノさんはにこやかに店の中へ招き入れてくれる。内心ではガチガチに緊張していた。元ニートに高度な対人スキルを必要とする交渉事は厳しい。でもどうにか上辺を取り繕って挨拶をしてから商談に入る。


「ゲイスブルク家の方々とは長くお付き合いさせていただいています。本家のお屋敷も当商会がご用意させていただきました」


「そうだったのですか。知りませんでした。父は常々、住みやすいと言っておりました」


 もちろんそんなことを言っていたかというとわからない。出まかせーーもとい、リップサービスである。


「それは私としても嬉しいですね。しかしオリオン様は素晴らしいですな。ゲイスブルク家のしきたりは有名ですが、それに十二という若さで参加を許されたのですから。それにお隣のお嬢さんも可愛らしい」


「ありがとうございます」


 隣に控えていたシルヴィが小さく礼をした。俺だけでなくシルヴィにも賛辞を贈るとはなかなかそつがない。だがリップサービスの応酬もここまで。ブルーノさんは表情を改めて切り出した。


「ところでお話があるということですが……」


「実はある事業を始めるのですが、そのために物件がほしいのです」


「当商会は王都で最良の商会と自負しております。いかなるご要望にもお応えできますよ。場所はどうされますか? お貴族様や大きな商会をお相手に考えておられるなら貴族街の近くに。幅広い客層を狙うなら王城前の目抜き通りに。平民を相手にするなら平民街の方の土地をご用意しますが」


 次々と提案されるのは王都でも一等地やそれに近しい場所。俺が大商会の息子だから高く売りつけるつもりなのだろう。


「値段はどれくらいですか?」


「そうですね……賃貸なら月金貨十枚。ご購入なら金貨一万枚になりますかね?」


 買えるか! 興味本位で訊いてみたらバカみたいに高かった。もう少し安ければーー買うのは論外としてもーー借りるのに。


「ちなみにオリオン様の兄上はこちらを借りられました」


 ブルーノさんが指し示したのは目抜き通りの一角。お家賃なんと金貨二十枚。ここでいったい何をするつもりなのだろうか。


「なんでも宿屋を開業されるとか。最近、王都は人口が増えて人が多く訪れておりますから。いい判断ですね」


 なるほど。王都は人口が増えているのか……なら好都合。


「ブルーノさん。少しおかしなお願いをしても?」


「もちろんですよ」


 ブルーノさんはにこやかな笑みで応じてくれる。いい人だ。たとえ営業スマイルだとしても。


「古かったり問題がある建物などを売ってほしいのです。すべて」


「それは……。たしかに変なお願いですね」


 不思議な顔をするブルーノさん。まあ要らない建物を買います、なんて突飛な客はまずいないのだから。買ったところで住めるわけでもないしな。金の無駄遣いだ。そして商人からしても売れない商品なんて早く処分したいだろうしな。しかし俺には《自宅警備員(ヒキニート)》の能力がある。これならどんなにボロい家でも瞬く間に新築同然にすることができる。安く買い取り高く貸しつける。商売の基本だ。


「できますか?」


「もちろんです。むしろ私たちからするとありがたいお話ですね」


 だがいくら安いとはいえそのまま買うというのは芸がない。


「当然、ご配慮をお願いしても?」


「もちろんですとも。精一杯勉強させていただきます」


 ーーというわけで長屋風の建物を十軒、戸建ての家を五軒の計十五軒の建物を金貨十枚という値段で購入した。普通に買えば金貨百枚は下らないからいい買い物だといえる。ついでに金貨五枚で目抜き通りにあるドーン商会の店の一角を借りることができた。取引は大成功だ。


「またのお越しをお待ちしております」


 ホクホク顏のブルーノさんに見送られて商会を後にする。


「オリオン様。古い家屋ばかり買われていましたが、商売になるのですか?」


「なるよ」


 帰りの馬車内で不安気に訊いてきたシルヴィに、自信満々に答えた。さて、働きますか。すべては将来のニート生活のために。




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