【閑話】少尉候補生リアナ
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ーーーリアナーーー
オリオン様に助けられたわたしとレイチェルお母様は、オリオン様の魔法により、わたしたちは帝国領に一瞬にしてたどり着きました。そこで迎えてくださったのはオリオン様の正室でいらっしゃるアリス様と、第二皇妃であらせられるレオノール様、元フィラノ王国国王のルドルフ様にカール元マクレーン公王の四方です。
「「「「お帰り((なさい))」」」」
「お父様……アリス……おじ様……っ!」
レイチェル様は駆け寄っていかれました。五人でよかったよかったと無事を喜びます。そして喜びの感情が薄れたころ、レオノール様がポツリとこぼしました。
「ところでレイチェル姉様。どうしてわたしのことは呼んで下さらなかったのですか?」
「えっ?」
レイチェルお母様が固まりました。そして目を泳がせています。あれはお母様が都合の悪いときになさる仕草です。使用人に咎められたときにも見せたお姿ですね。あれはつい忘れてしまっていたのでしょう。かなり焦っておられます。そんなお母様の心情を見透かしたかのように、レオノール様はよよよ、と泣き崩れました。
「ひどいです、レイチェル姉様」
「ああ、泣かないでレオノール。悪かったから! 何でもするから!」
「……本当ですね?」
キラーン、とレオノール様の瞳が光ったように見えました。やっぱりわざとですね、あれは。恐ろしいお方です。レイチェル姉様を手玉に取ってしまいました。
「あっ! レオノール、あなたね!」
「旦那様〜」
謀られたことに気づいたレイチェルお母様がレオノール様に詰め寄りますが、すぐさまオリオン様の背に隠れてしまいます。お母様はオリオン様を睨みます。ただ、それ以上はできませんでした。身内のおふざけとはいえ、助けてもらった恩義があるため強くは言えないのです。ですがそのことはオリオン様も承知されていて、
「こら、あんまり揶揄うものじゃないぞ」
とやんわりとたしなめていました。レオノール様も素直に従っておられます。こうなることまで計算されていたのであれば、本当に恐ろしい。
「では俺は戦争を終わらせに戻ります」
「ありがとう、オリオン」
戻ろうとするオリオン様を呼び止めて、ルドルフ様が頭を下げていました。レイチェルお母様はルドルフ様の娘。無事に連れ帰ってくれたことに謝辞を述べたのです。
「お気になさらず。当然のことをしたまでですから」
オリオン様は何でもないようにそう答えられました。ですが、決してそんなことはありません。敵の中枢に乗り込んで要人を連れ出したのですから。魔法という技能があっても、それは至難の業です。
ルドルフ様は言葉もなく、再び頭を下げました。そしてオリオン様はいよいよ戦場に戻ろうとされています。
「わたしも行きます!」
わたしは慌ててオリオン様に飛びつきました。そして一緒に転移したのです。だって、一家水入らずにしてあげたいじゃないですか。
ーーーーーー
大王国改め、ナッシュ王国の女王となったわたしですが、実務はすべてカレン様にお任せしています。それがオリオン様のご意向であるからです。不満はありません。わたしが表に出たところで何もできませんから。それにレイチェルお母様が施してくださったご恩に報いることの方が重要です。
戦争が終結して凱旋したオリオン様とともにわたしは帝都カチンへやってきました。
「な、なんですかこれは!?」
そしてわたしは驚きのあまり大きな声を上げてしまいます。ですが責めないでください。こんな大きな都市を見たことがないのです。前に転移した都市は旧王都。ナッシュ王国の王都と同等の規模でした。しかしここは別格です。王都の二倍ーーいえ、三倍はある大通りを人が埋め尽くしています。そしてそこへ至るまでの道も、すべて石畳で覆われていました。わたしの乗る馬車は揺れひとつ感じませんでした。ナッシュ王国も帝国とのナハ紛争の後に道路を整備しましたが、帝国のそれとは雲泥の差です。帝国の強大さを思い知らされました。
「リアナ、見ましたか? あの人の数を」
「はい。驚きました」
「妾もそうです。まさか祖国がこんなことになっていようとは」
レイチェルお母様も驚いておられました。帝国が建国されて十余年。たったそれだけの期間でこれほどの都市ができてしまうのですから。現在の人口は百万人以上。王都は十万ほどでした。その差は百倍。それほどの都市が、わたしが生まれたころには寒村だったというのですから、驚きの度合いは非常に大きいです。
戦勝記念パーティーで出された料理も独創的でとても美味しかったです。レイチェルお母様は『美味しくて場に相応しい料理ですが、何か違う!』と首をかしげておられました。アリス様によれば、これらはすべてオリオン様の仕業なのだそうです。軍事のみならず内政にも優れていらっしゃるのですね。とても偉大なお方です。
そんな驚きの連続のカチンでの滞在でしたが、わたしにはやらなくてはならないことごあります。レイチェルお母様のご恩に報いるべく、軍人となってお守りし、御心を安んずるのです。
わたしはオリオン様の命で竜帝国の士官学校に入学しました。冷遇されていたとはいえ、レイチェルお母様のおかげで王族として恥ずかしくない教養を身につけています。なので今さら学校で学ぶことなんてない……そう思っていました。しかし、それは甘い考えだったのだと思い知らされます。
入学式当日。帝都カチンの郊外にある学校で華やかな入学式が執り行われました。三世皇帝に内定しているウィリアム第一皇子殿下が臨席されていました。
「帝国軍人はその職責を自覚し、自らを律し、高い教養を備え、国家の安寧に尽力することを本分とする。その指導をするのが士官たる我々の役目であり、それに相応しい人物となれるよう勉学に励み心身を研磨することを望む」
祝辞で殿下はそう述べられました。わたしと少ししか違わないのに、大人に見えます。ああなれるように頑張らないといけませんね」
その後、入寮式を済ませ(この学校は身分にかかわらず全寮制です)、夜になると食堂でお夕飯をいただきました。明日から本格的に学校が始まるーーそう思っていました。
「総員、着替えて校庭に集合ッ!」
睡魔が襲い、ベッドに入ろうと思っていたまさにそのとき、教官の声がしました。
「……え?」
すっかり寝る気になっていたわたしはその声に反応できませんでした。他の人も寝ようとしています。やはり今から集合だなんて幻聴でしょうか?
「こらっ! 新米ども、早く着替えて集合しないか!」
教官が部屋に怒鳴り込んできました。……幻聴ではなかったようです。わたしたちは慌てて着替えて校庭へ集まりました。
「遅い!」
着いて早々、教官に怒鳴られます。今から寝ようという時分に集合をかける方が非常識でしょう……。
「教官。こんな時間に集合させるのは非常識では?」
「馬鹿者ッ!」
生徒のひとりが質問しましたが、教官に一喝されてしまいます。
「なら訊くが、戦場において敵が夜に襲ってこないといえるのか?」
「それはそうかもしれませんが、だからといって今やる必要はーー」
「甘ったれるな! 貴様らは何になるのだ? 軍人だぞ! にもかかわらず、市井の一般人と同じような考え方でどうする!?」
「「「……」」」
誰も二の句を継げませんでした。多くの生徒は教官の剣幕に呑まれて何も言えないのかもしれません。ですが、わたしはハッとさせられました。たしかに、これから軍人となる身で一般人のような心構えではダメです。そのことに恥ずかしながら今、気づきました。
「わかったか!? ではやり直し! 第二制服(普段使いの制服)に着替えて再び集合せよ! 期限は五分!」
教官の指示を受け、わたしたちは一斉に駆け出しました。しかししばらくやっても時間内にできず、結局は八回もやり直しになってしまいます。
訓練はそれからは夜通しで行われました。校庭ランニングや筋トレなど、深夜にやるとは思えないハードなトレーニングです。わたしたちはヘトヘトになりながらこなしました。
訓練の終了を告げられたのは朝日が昇ったころのこと。厳しい訓練を乗り越え、わたしたちの間には連帯意識が生まれていました。共にこの日々を乗り越える仲間なのだと。
「よし。貴様らよくやったな。寮に帰って休むといい。浴場、食堂は使用自由とする。午前中は鋭気を養うように。ただし、昼食からは平時の日程に復帰する。午後はこれからの生活についての話だ。遅れるな」
「「「はいっ!」」」
やっと休めます!
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士官学校に入学して一年が経ちました。ナッシュ王国の女王であるからと差別されたりせず、むしろ厚遇されました。帝国軍の規則では他国の人間はその身分に応じた待遇をする、と定められているのです。捕虜にもこの規定は適用されます。脱走を試みる者についてはその限りではありませんが。ともあれ友人もできて、楽しい学校生活を送っていました。
ここで少し、士官学校のカリキュラム説明をしたいと思います。士官学校は正規カリキュラムで三年、留学生などの特別カリキュラムで二年の就学期間が設定されています。わたしは後者ですね。
特別カリキュラムでは一般教養ができていることを前提にした訓練が課されます。最初の一年はトレーニングと並行して戦略や戦術などの講義が行われ、帝国軍人としての基本姿勢も教育されます。一年目を修了すると、陸軍と海軍のどちらに進むかを決める必要があります。わたしは陸軍に進みました。
二年目になると半年間の部隊訓練に移ります。一年間学んだことを実践する場です。実際の現場で兵たちと触れ合い、先輩方の薫陶を受けながら士官としての素質を磨いていきます。わたしが配属されたのは近衛師団の第一連隊。帝国最精鋭との呼び声高い部隊です。一般の師団では新兵の錬成を任せられるのが常ですが、ここは近衛師団。そんな方はいません。さらにこの部隊にきたのはわたしひとりでした(そもそも近衛師団に配属される士官学校の生徒は王族しかいない)。心細いですが、頑張ります。
「リアナちゃん、元気かい?」
「今日も頑張ってね、リアナちゃん」
「今晩、一緒にご飯食べましょうね」
……頑張ります。
わたしが任されたのは司令部の補助でした。演習を行なっているのを見て学べということです。
「ではこれより兵棋演習を始める。審判長である師団長より状況説明」
進行役の参謀が言うと、近衛師団長であるシルヴィア様が進み出ました。
「状況を説明します。今回の演習ではクレタ島での戦いを例にとります。青軍は五千。赤軍は一万五千。南部に青軍、北部に赤軍が展開しています。攻撃、防御の指定はありません。ただし戦場は東部のみとし、西部からの進撃は不可能。西部の兵員を東部方面へは割けないものとします。時刻は午前八時。その他、何か質問はありますか?」
「「……」」
青軍、赤軍ともに質問はありません。
「では始め」
シルヴィア様の号令で演習が始まります。兵棋演習は実際に兵を動かすのではなく、司令部の指示通りに駒を動かして行われます。行動の結果はサイコロを振って決められます。ゲームですが、みなさんとても真剣です。
……
…………
………………
場面は進み、戦闘が始まりました。赤軍は一気に南下して青軍に猛烈な攻撃を加えています。赤軍の強みである数の多さを活かした戦術といえるでしょう。ただ、青軍は陣地を構築して待ち構えていました。その防備に阻まれて、赤軍の進撃は完全に止まってしまっています。
青軍は数は少ないですが、強力なドラゴンを使うことができます。ただし一回だけなので、使い所が難しいですね。青軍と赤軍が陣地をめぐって攻防を繰り広げていますが、赤軍の数は総勢一万五千の全軍。対する青軍は不明です。この演習は限りなく実戦に近い形で行われるため、偵察もコマンドのひとつとしてあります。ただ、青軍は陣地にいるため偵察の成功率が低くなっているのです。赤軍は攻撃する一方で何度も偵察をしては失敗していました。
「赤軍、偵察成功」
ここでようやく偵察が成功します。そうして示された数字を見た赤軍は、
「「「っ!?」」」
飛び上がらんばかりに驚いていました。判明した青軍の数は三千五百。当初の数から大きく減っていました。戦闘での損失ではありません。どこかに潜んでいるのです。
「七日目。赤軍攻撃停止。全土に偵察」
成功判定が地域ごとに出され、成功した場所の情報が示されます(自分の支配地域であれば無条件に成功します)。その結果、残りの青軍部隊が発見されました。彼らは赤軍の背後に回り込み、補給線を断っていたのです。翌日からの補給が滞ることになっていました。補給が乏しくなると、そのレベルに応じて被害が割増しされます。それを怠ったのは赤軍のミスです。
「八日目。赤軍に被害五分増しのペナルティ。赤軍は移動開始」
「青軍、偵察成功」
「九日目。赤軍に被害一割増しのペナルティ」
「青軍が攻撃開始」
九日目に青軍が反撃に転じます。被害が割増しになっているため、赤軍の被害は深刻です。赤軍の後方に進出した青軍は赤軍の掃討部隊をひらりひらりとかわしつつ、補給線の遮断を続けています。五分ずつ被害は割増しされていき、ついに三割に到達しました。ここで青軍は切り札を出します。
「青軍、ドラゴンを使用」
この攻撃によって青軍と対峙していた赤軍は壊滅に近い損害を受けます。青軍は彼らを蹴散らして前進。赤軍掃討部隊と対峙していた青軍の別働隊と合同。包囲、殲滅してしまいました。
「勝者、青軍!」
参謀が結果を伝えました。これにて兵棋演習は終了です。ここからは反省会になります。演習は最精鋭の近衛師団だけあってとても高度な内容でした。わたしもしたことがありますが、レベルが違います。反省会では審判団が記録していた各軍の行動記録が開示され、それを元に検討が加えられます。演習自体も大切ですが、最も重要なのはこの反省会で出される多様な意見です。わたしも聞き逃さないように耳を傾けます。そのとき、シルヴィア様がこちらを見た気がしました。……気のせいですよね?
「まず、リアナさんはどう思いますか?」
と思ったら名指しされてしまいました。気のせいではなかったようです。
「えっと、わたしは……」
「気にしないでください。ここは自由に意見を述べる場ですから。学生だからと差別はしません」
わたしが口ごもっていると、シルヴィア様はそのように言って発言を促されました。そんなこと言われても、特に提案なんてないので困ります。それでもなんとか答えようと考えた結果、笑われてもいいやと率直な感想を口にしました。
「今回、青軍は素晴らしい戦術で勝利しました。ですが赤軍が持久戦を志向したならどうなっていたのか疑問が生じます。もう少し安全な戦い方はなかったのでしょうか? 逆に、赤軍はもっと上手な攻め方はなかったのでしょうか?」
わたしが思うところ、青軍の勝利は薄氷の上を歩いたようなもの。歯車がひとつ狂えばたちまち敗北したでしょう。戦いに必勝はありませんが、勝率を上げる努力はするべきです。劣勢である場合の立ち回り、優勢である場合の立ち回りをそれぞれ考えるべきだと思います。ーーとはいえ、しょせんは学生の浅知恵。軽く一蹴されてしまうと思っていました。ところが何も反応がありません。
「そうですね。私も同じ意見です」
シルヴィア様が同意見だと言われました。その他にも同意見と述べる方は多く、活発に意見が交わされます。わたしはその様を呆然と見守っていました。結論としては敵軍より優勢な勢力で当たることを基本とし、劣勢である場合は増援が見込めるなら踏ん張り、見込めないなら撤退することもーー上級司令部の意向も尊重しつつーー視野に入れることになりました。
反省会が終わった後、様々な士官の方から声をかけられました。たくさんのお褒めの言葉をいただき、とても嬉しかったです。これからも頑張ろうと思いました。
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部隊実習を終えて学校へ戻ってきました。充実した実習だったのか、みなさん自信に溢れた表情をしています。
「リアナ」
「ペトラ」
わたしに声をかけてきたのはペトラ・オルレアン。オルレアン男爵家のご令嬢で、士官学校の生徒もあります。わたしの親友です。やはり敵国の人間ですから、規則があるとはいえ最初はどこか他所他所しかったです。そのなかで話しかけてくれたのがペトラでした。それから多くの方から話しかけてもらえるようになり、とても充実した学校生活を送ることができるようになりました。彼女には感謝しています。
「実習どうだった?」
「とても勉強になりました」
「あたしも勉強になったよ。やっぱり学校で習うのと現場でやるのは違うよね。卒業してからだと戸惑ってたよ」
「ですね」
それには全面的に同意します。学校から直接部隊に行ったのでは戸惑ってしまったでしょう。一度部隊勤務を経験することで両者のギャップを踏まえた上での生活が送れますし。
「でもリアナはいいな〜。あの近衛師団でしょ?」
「た、たまたまですよ……」
と言ってて自分で苦しいなと思います。派遣先にはオリオン様のご意向を感じているのですから。
「本当かなぁ〜?」
ペトラはちょんちょん、と頬を突いてきます。わたしはされるがままでした。
そんなひと幕がありつつも学校生活は順調に進み、卒業を控えた時期になりました。ここで学生が気にするのは自身の成績です。士官学校にはある程度の学力があれば合格できます。しかし入学してからは厳しい進級/卒業要件を満たさなければならず、ここで多くの学生が挫折します。三度の落第は退学です。さらに卒業した後、上位の将校になろうと思えば大学校に進む必要があります。そのための基準として、卒業時に全体の一割に入っておくというものがあり、みなさん躍起になっています。それだけしか道がないわけではありませんが、他より楽なのは事実です。
そんな学生の人生を分ける卒業試験が始まりました。一般教養と専門教養の二分野がありますが、そのうちのひとつに『総合戦闘』があり、試験内容は伝統的に兵棋演習となっています。学生が最も気合を入れて取り組む試験です。なぜならこの試験にはオリオン様をはじめとした帝国のトップがやってくるからです。通称『御前演習』といわれています。
「状況を説明する。赤軍、青軍ともに保有戦力は一万。戦場は平原。侵入から演習を始める」
そしていよいよ試験が始まりました。まずは軍勢の配置から始まります。希望する陣地とその規模を書き、試験官に託します。成功するか否か、希望通りの展開になるかどうかでこの試験の結果が決まるといっても過言ではありません。このために準備してきた戦術が決まりますように!
「結果発表。青軍が陣地を先取」
「バカな!?」
よしっ! 思い通りの展開に、わたしは心の中でガッツポーズしました。取りたい陣地が被った場合には小規模な小競り合いが起こることになっています。しかしその場合は損害を被った上に取れないなんて事態も起こりました。そこでわたしは『少数の騎兵を全速で向かわせて陣地を先取し、旗指物を並べて多くいるように見せかける』という指示を書いたのです。教官がどのように判断されるのかは賭けに等しいものでしたが、無事に成功したようです。よかった……。
その後、赤軍は改めて配置を変え、侵入のフェーズは終わりました。そしていよいよ戦闘です。わたしの基本は待ちです。同数の場合、危険を冒すべきではありません。手堅く、確実に。なので本隊が到着した後は野戦陣地の構築を行なっていました。そこに焦れた相手が攻め寄せます。
「くっ、堅い……」
陣地防衛では防御側が損害軽減となりますからね。偵察を行い、敵の主力が展開している場所を重点的に守ります。こうしてじりじりと損害を蓄積させるのです。
……
…………
………………
さて、そろそろ撤退したいところではないでしょうか。あちこち攻撃しましたが、すべて防がれてしまいましたからね。損害も無視できないレベルでしょう。悔しそうに歯噛みしていることから容易に察せられます。ですが、これで終わりではありません。
「青軍騎兵、赤軍の主力側面を奇襲!」
「!?!?」
相手は言葉にならない様子です。奇襲ですからね。どんな指示を出そうと成功率は百パーセントです。
「青軍騎兵は赤軍主力側面より突入。敵中突破!」
「「「おおっ!」」」
これで赤軍は真っ二つにされてしまいました。そこを狙ってーー、
「青軍が赤軍に対して総攻撃!」
総攻撃をしかけます。半包囲しているため大きなボーナスがつき、赤軍は半数を失いました。
「そこまで!」
ここで試験官からストップがかかります。これ以上続けても逆転はないと考えられたのでしょう。上手くいってよかったです。
結局、わたしはこの試験をトップで通過。卒業席次も首席となりました。その表彰としてオリオン様より記念の刀を頂きました。任地は近衛師団隷下、新設の第三特務隊です。レイチェルお母様の護衛任務を拝命しました。これからも頑張ります!




