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AT教団のグラスホッパー

作者: 皐月 海裡

 世界大戦。工業力の進化により、戦車や航空機と言うような機械兵器が初めて実用化された戦争。

 そのなかで、とある異色の発明が行われていた。


――非自立式人工筋肉。


 つまり、刺激に対して反射運動を行うだけの『考えない』筋肉の発明である。

 当初、歩兵の積載荷重を増やす補助装置への使用を考えられていたこの発明に対して、異端ともいえる発想を得た者が居た。


――対戦車戦術教導団。通称AT教団である。


 実用化されたばかりの戦車への脅威を認識し、これに対する戦術を研究する。それがこの軍団の存在意義だ。

 対戦車ライフル、対戦車手榴弾、対戦車ロケット砲、対戦車無反動砲……。

 それらの歩兵が携行できる対戦車兵器の運用を確立するなかで、とある兵器の開発が行われた。

 それが非自立式人工筋肉を用いた、対戦車装備。


――通称グラスホッパーである。


 人工筋肉を用いた外骨格とも言うべきそれは、装甲はなく、伏せることもできないために被弾面積も広い。

 車両のように車輪を用いる訳でもないから速度も出ない。その上に無限軌道を持たない故に踏破性も高くはない。

 それだけでは有用性がない兵器だが、ただ一つ、出来ることが有った。


――跳躍することである。


 二本の脚で立つグラスホッパーは、その名の通りに人工筋肉とバネの力で飛び上がることが出来た。

「考えない」人工筋肉の反射運動の為に、速度を変えることもできず、ただまっすぐに進むのみだが、障害物に当たれば飛び上がり、走行を続けることが出来た。

 そして、この「跳躍する」ということには大きな利点があった。戦車の砲塔は、これを追尾できないのである。

 あるいは機関銃。歩兵小銃。これらで狙撃するのは困難を極めた。上下運動を加えた三次元機動に対して、人間は対応が出来ないのだ。

 この「グラスホッパー」を用いた戦術は一定の成果を得た。

 つまり、跳躍を織り交ぜて敵戦車に肉薄し、装甲の薄い天板にとりつくと、至近距離から徹甲弾を撃ち込むのである。

 一時期、戦車黎明期において、この兵器による対戦車戦闘のキルレシオは一対一を覚えた。

 試験官で培養される人工筋肉と歩兵一人で、高額な戦車と、訓練された戦車兵複数を撃破し得たのだ。


 しかし、このグラスホッパーが広く普及することはなかった。

 戦術の進歩と共に戦車には随伴歩兵が付けられ、天板に取り付いて動きを止めたところを歩兵に狙い撃ちにされることが続いた。

 やがて、キルレシオは三対一になり、五対一になり、十対一となり……。

 非自立式人工筋肉は「考えない」筋肉であり、その行動は予め決められた運動だった。

 走る速度は一定で、跳躍する距離も一定。やがて、対策が取られるのは自明の理であった。


 こうして、グラスホッパーは徐々に歴史の表舞台から消えていく。

 戦術的には一定の成果を得、その独特の見た目から衝撃を与えた兵器だったが、戦争の勝敗を決める兵器とはなり得なかった。


――AT教団のグラスホッパー。


 それは機械化黎明期における、試行錯誤の産物であり、後世に於いて珍発明と称されるそれだった。


 余談だが、この兵器が活躍する場が一つあった。それは宣伝用映画フィルムに見ることができる。

 煌びやかな装甲を身にまとい、二本の脚を持つ鋼鉄の騎士。それは銃後の戦意高揚に活躍した。

 AT教団のグラスホッパーは、首都の防衛を行う最後の騎士として、見事に散った。

 今となっては、その独特の見た目と、歩兵と比して積載力に優れることから、儀仗用に煌びやかな、しかし非実用的な装甲を施された機体が僅かに残るのみである。

思いつき設定……ぼくのかんがえたろぼっと、です。ジョークです。

別に仮想世界において対戦車兵器を担いでピョンピョンしている兵士のことなんてこれっぽっちも。


二足歩行兵器が実用化されるのなら、どのようにだろう。とか時たま考えますよね。

しかしこれは考えないし、機械でもないからロボットでもない……。

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