ワンピース
「はやく着きすぎちゃったかな?まあいいか」
ぽつりと呟くのは長い黒髪をポニーテールにし、水玉のふわっとしたワンピースを身にまとった一人の少女だった。少女の名は風音[カザネ]。今日はなんと、恋人と初デートという記念すべき日を迎えようとしている。
「あ、杉さ…じゃなくて、時成[トキナリ]さん!」
「よお風音。待たせちまったか?」
まだ慣れない名前呼びに苦戦している様子を見て、時成は目を細めた。
「いいえ、私も今来たところですから」
ふわりと花のように笑う風音に、若干目をそらしながら時成は答える。
「じゃあ行くか」
とくに予定もないまま二人で町をぶらぶら歩いた。気に入ったお店に入ったり他愛もない話をし、適当なお店で昼食をとる。
ふと話題が途切れ、心地よい静寂に身を包まれていると時成が口を開いた。
「今日はありがとな」
「えっどうしてですか?」
「いや、まぁ…オレが計画したことなんだけど、着いてきてくれて」
「そんなことっ、とっても楽しいです!私のほうこそ誘ってくれてありがとうございます…でも、もうすぐ終わっちゃいますね」
気が付くと日が暮れ、空には夕日が顔をのぞかせていた。
「、そーだな」
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
その後もふたり仲良くおしゃべりをしていたが、とうとう分かれ道に差し掛かっていた。
「じゃあ、私はこれで、」
「風音」
「は、、っ!」
笑顔で振り向き返事をしようとする風音の唇を、時成は自分のでふさいだ。
「じゃーな、気ぃーつけて帰れよ」
「は、はい、おやすみなさい、、」
後には顔を真っ赤にした風音が残された。
…かわいすぎんだろーこのやろー。