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第6話 やってきました、勝負の日

 一夜明けた翌朝、俺は憂鬱な気分で学校に登校した。

 理由なんて一々説明するまでもないだろうけど、ここはあえて言わせて欲しい。

 今日の放課後、加賀美真白かがみ ましろ宅へお邪魔することになっているのである。

 銀髪蒼眼の小柄な女の子。

 俺なんかに好意を寄せるには勿体無いぐらいの美少女だ。

 でも、その本性は盗撮魔で俺が写った写真千枚をファイリングするほどの生粋の変態だった。

 ほんと、俺なんかに好意を寄せるのは勿体無いよ。

 もっとイケメンで寛容な男を盗撮すればいいのに……。

 七ノ宮(しちのみや)さんの件といい、ようやくモテ期到来かと思われた俺の青春だが、どうしてこんなことになってしまったのか。

 とにもかくにも、まずは目先の残念美少女たち(ふたり)をどうにかしないと俺はまともな学校生活を送ることすらできないわけで……。


 「あら、おはよう紙上かみかみくん。とりあえず、昨日学校に一人置いてった私に言うことはない?」


 下駄箱で遭遇するなり、七ノ宮(しちのみや)さんが般若のような形相でこちらに近づいてきた。

 けど、俺は紙上かみかみくんじゃないので無視無視。

 

 「あら、無視とは良い度胸ね。せっかく最高の提案をしてあげようと思ったのに」

 「だとしたら、会話の入り間違えてない? ついに俺を諦める決心でもしてくれたのかな?」

 「そんな雑魚い話じゃないわ」

 「俺にとっては魔王を倒すレベルの話だけどね」

 「ふふっ、馬鹿ね。それを言うなら魔王じゃなくて女神でしょ? 言葉は正しく使いなさい」

 「七ノ宮さんにだけは言われたくないんだけど……。てか、女神なら倒しちゃダメだろ。RPGの基本だぞ」

 「ふっ、つまりはそう言うことね。だから、あなたは私を愛でなければならない義務があるの」

 「……はいはい、そっすねー」


 適当に流して、俺は七ノ宮さんを置いて下駄箱を後にする。

 まあ、当然後から彼女が追いかけてくるんだけど……。


 「ちょっと! 私の話を最後まで聞きなさいよ!」

 「どうせロクでもないこと言うつもりだったんでしょ? もう俺には何も通じません」

 「いい? 一回しか言わないからよく聞きなさい——————」


 そして俺は、思わず自分の耳を疑った。


 「——————今日、私とデートしなさい」

 「…………え? デート?」


 自然と歩く足が止まっており、気がつけば七ノ宮さんの方を振り返っていた。

 リンゴのように顔を真っ赤に染め上げ、照れ臭そうにそっぽを向く彼女を目にしてつい動揺してしまう。

 なんという破壊力だ……。


 「そ、そうよ! 私とデートしなさいと言ったのよ! 悪い!?」

 「いや、なんでキレてるの!? 別に悪くはないけど……」

 「そ、そう? それじゃあ決まりね。そしたら……」


 彼女が提案するよりも先に、俺は問答無用で言葉を遮る。


 「あーえっと、今日はその……。先約があって難しいといいますか……」

 「……」

 「……」


 あー、この無言の時間気まずいよーーーーーー。

 でも、あのまま流されてたら予定がブッキングしてただろうし、俺の取った選択は間違えていないはずだ。

 そう思っても……いや、思い込んでも、俺の中の罪悪感は消えなかった。

 てか、なんで俺が罪悪感感じてるんだし!


 「……そう、先約ね。まさか()()()()()()とは言わないよね?」

 「……え? え、あ、はい」


 しまった、反射的につい違うと言ってしまった。

 でもしょうがない。

 だってここで女の子と約束があると口にしたら、きっと俺はここで抹殺されていた。

 それほどまでに、彼女の表情には感情がなかったのだから。

 

 「……そう、もし仮に嘘だったらどうするのかしら」

 「それは……、もう……、七ノ宮さんとデートしますとも……」

 「それは魅力的な提案ね。でも、それだとまるで私とデートすることが罰ゲームであるみたいじゃない?」

 「…………いや? そんなことは……」

 「声が裏返っているのも怪しいわね。本当に嘘吐いてない?」

 「は、はいっ! 決して嘘は吐いておりませぬ!」

 「そうね。もし嘘だったら——————」

 

 固唾を呑む音が、鮮明に聞こえてくる。

 そして彼女は、俺の耳元でボソッと呟いた。


 「——————奴隷生活は覚悟することね」


 そう言い残して、彼女は自分の教室へと向かっていった。

 まだ、胸が高鳴っている。

 でもこれ、多分恐怖の感情っぽいぞ。

 

 「おはよう、日出ひので。どうしたんだい、顔が真っ青だぞ?」

 「ひかる。もしかしたら、俺の平穏な学校生活は今日で終わるかもしれない」

 「それはまた……。何があったんだい?」

 「それが、実は……」


 これまでの経緯を順に説明しながら、俺と煌は教室へと向かう。

 その間、俺のポケットに入っているスマホが短く震えた。

 ……うん、多分あれだ。

 携帯会社からのメッセージに違いない! うん、きっとそうだ!

 精神を落ち着かせるために、俺は自分にそう言い聞かせた。

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