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第2話 さっそく事件が起こりました。

 午後の授業を乗り越えて迎えた放課後。

 なんか、クラスのあちこちから懐疑的な視線を向けられている気がするのは、俺がそう思い込んでいるからだろうか。

 ……うん、そうだ。きっとそうだ。


 「日出ひので、聞いたよ。七ノ宮(しちのみや)さんの告白を断ったんだって?」

 「全然気のせいじゃなかった」

 「ん? 何の話だい?」

 「いや、こっちの話だから大丈夫」

 「そうかい。てっきり頭でもぶつけたのかと思ったよ」


 そう言って笑うのは、爽やかイケメンこと月島煌つきしま ひかる。家がご近所で、幼少期からずっと一緒の幼馴染である。

 我が家は父、母、中学三年生の妹、そして俺の四人家族。

 だが、家にいるのは基本的に俺だけだ。

 そんな俺を気にかけてご飯のお裾分けをしてくれるぐらい月島家との仲は良好である。

 まさに、持つべきものは幼馴染ってやつだな。


 「誰が頭おかしいって? 俺は至って正常だ」

 「誰もそこまでは言ってないよ……。それよりも、七ノ宮さんの告白を断ったって本当なのかい?」

 「あぁ、断ったよ」

 「即答!? 可愛い彼女が欲しいとか言ってなかったっけ? 絶好のチャンスだったのに、何でそんなことを……」

 「まあ、一言で言い表すなら、可愛さを差し引いても余るくらい残念な部分があったというか……」

 「一言で言い表せてないよ、それ。でも、人って誰しも欠点は持ってるものだから、完璧を求めすぎちゃダメだよ?」

 「別に完璧は求めてないんだよ、ただ……」

 「ただ?」


 ただ、あの残念な部分を妥協してまで彼女と付き合いたくない。

 付き合ったら最後、骨の髄までしゃぶり尽くされる未来しか想像できないから。


 「あの子は俺の手には負えないってことさ」

 「一体、何を知ってしまったんだ……」

 「それより、煌はどうやって告白の件を知ったんだ?」

 「あぁ、それはね……」


 そう言いながらポケットから取り出したのは、煌のスマホだった。

 変な汗が、突然全身から出てる気がした。

 そして「これだよ」と言われて見せられたのは、SNSに貼り付けられた問題大有りの動画付き投稿だった。

 

 【拡散希望】

 お嬢様、告白。そして破局w

 やっぱり容姿が全てじゃないよね!

 #告白 #黒歴史 #下剋上

 

 動画に音声が付いてないから、辛うじて何を話しているか視聴者には伝わらないけど、でもこれは……。


 「うん、完全に盗撮案件だな」

 「まずはそこなんだ……投稿自体も学校内限定公開にされているけど、外に拡散されない保証はどこにもないよね」

 「まあ、そうだな……。音声がないとはいえ、投稿のネタにはなるからな」

 「そうだね。とりあえず、()()()()()()()()?」


 なに、その動くことが約束されているような言い方は……。

 まあ、動くんですけどね!

 女の子が困ってたら、何をしてでも助けろというのが父親の教えなんでね。もちろんやりますとも。

 そして席から立ち上がった、まさにその時だった。


 「——————あら、もう帰るのかしら」


 聞き覚えのある綺麗な声が、俺の耳を刺激する。

 文字通り、耳を刺激された。


 「うふぁ!? 耳元で囁くのはやめろ!?」

 「ふふ、ちなみにご感想は?」

 「うん、だからやめろ!?」

 「もう、興奮しちゃって。でも、年頃の男の子なんだから興奮しても仕方ないよね。許してあげる♡」

 「許すも何も興奮してないんだけど……。てか、教室の中で興奮とか言うな」

 「どうしてって、それは……」


 クラスの視線がより一層痛くなるからだよ!

 ただでさえ視線が集まりやすい状況になっているのに、どうして彼女は空気を読んでくれないんだ……。傍若無人にもほどがある。


 「とにかく、ここじゃあれだから場所を変えて話をしよう!」

 「えっ!? 意外と強引なのね♡ そんな強引なあなたが私の言いなりに……」

 「よし、一旦黙ろうか!」

 

 俺は彼女の口に手を押し当てて、これ以上の厄介事が起こらないように失言を未然に防ぐ。

 周りから黄色い声が上がったけど、彼女に口を開かれる方がマイナスになる気がするので、俺はこの状態のまま彼女を教室の外に連れ出した。

 そして、人目を避けて向かった場所は——————屋上。

 ここならあまり人も来ないし、密談するには適した場所と言えよう。


 「……んぅ! ……んんぅ!!」

 「あーはいはい。今手を退けますよ」


 手を離した直後、彼女は凄まじい勢いで俺から距離を取った。

 胸の前で腕を組み、頬を赤く染めながら睨んでくる。

 ……完全に、警戒態勢だ。


 「あなた、どういうつもり!? 女の子の口に手を押し当てるなんて……、マナーがなってないわ!」

 「ちがっ、仕方がなかったんだよ! そうでもしないと七ノ宮さんが余計なこと口走りそうだったから!」

 「私が原因だとでも言いたいの!?」

 「そう言ってるんだが!?」

 

 この調子では、一向に埒が明かない。

 とりあえず、話題をSNSの投稿の件についてに切り替えないと。

 

 「あなた、責任取って私の下僕になりなさい!」

 「何でそうなる! てか、下僕に退化してるんだけど!?」

 「退化して当然よ! だってあなたは私にわいせつな行為をしたんだから当たり前でしょ!」

 「わいせつな行為なんてしてない! だから退化はおかしい!」

 「それじゃあ、私と付き合いなさい! このままだと、恥をかくことになってしまうわ!」

 「助けて欲しいなら、最初からそう言ってくれるかな!?」


 こんな感じだけど、どうやら彼女もSNSの投稿が気になっていたらしい。

 そりゃそうだ。

 でなきゃ、わざわざ振られた相手のところまで来る理由がない。

 雰囲気の流れを変えるため、俺はコホンッと咳払いをした後に言葉を綴った。


 「とりあえず、投稿の件は俺の方で何とかしておくから、七ノ宮さんは気にせず帰っていいよ」

 「付き合ってくれたら、すぐに解決するのに……」


 彼女の提案はつまり、「俺と付き合うことで投稿の内容そのものを否定したらいい」というものだった。

 確かに、その手段を取るのが一番手っ取り早いことは間違いない。

 だけど、俺が嫌なんだ。

 それはつまり、奴隷ライフの幕開けを意味するのだから——————


 「大丈夫、こっちで何とか解決しておくから」

 「……分かった。でも、条件があるわ」

 「条件?」

 

 そして彼女は、天使の笑顔で呟く。


 「解決できなかったら、私と付き合いなさい」

 「……え?」

 「当然よね? あなたが解決できなかったら投稿だけしか残らないもの。私が後ろ指を指されながら学校生活を送ってもいいの? ()()()()()()()()()って、そうやって私を見捨てるの……?」


 やめろ、そんな捨てられた犬みたいなつぶらな瞳で俺を見るなよ……。

 捨てられた犬、という表現が今の彼女の境遇と酷似しているから余計に心を抉られる。

 まあ、この状況に追い込んだのは俺自身なんだけど。


 「……そっすね。七ノ宮さんの言う通りっすね」

 「まあ、そうよね! なら、私も全力で協力するわ!」

 「……あざす」

 

 この人、露骨に邪魔をする気なのかもしれない……。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

今後とも、よろしくお願いいたします!

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