表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居酒屋なみのり  作者: マメ
居酒屋なみのり1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/27

7話 〜真実はひとつ〜


「ええ、開いてたの?」


「うん、今日来たらねぇ」


と、何か不気味さを隠せないでいる女将は、まな板を念入りに洗いながら例の番頭に返していた。


「しかし、どうやって入ったんだろね?まぁ鍵開けたんだろうけどさあ」


腑に落ちないマスターは、カラオケのモニターを点けながら振り返り、ドアにそっと視線を注ぐ。


「鍵は替えてもらっているから、前の人でもなさそうだし」


今度は、床に散らばったコースターなどを拾い集めるマスターだった。



「うーん、こんなに酷いんじゃ警察にでも連絡した方がいいんじゃない?」


それはごもっともなのだが、


「だけどお金も置いて無かったし、取られた物がまだ見当つかないんだよね」


カウンターから何からアルコールスプレーのマスター。


噂を嫌う女将がまな板をひっくり返す。


「そうかぁ難しいモンだね、あっおかわりね」


心配面を装う番頭の喉は、まだ潤いが足らなさそうだった。



「さあて、やるかぁ」


と熱湯に荒らされた食器類などを漬け込む女将は、続けてヤカンのお湯をあちこちにかけ出すのだった。


「あ、ママちゃんもう一杯おかわり」


すでに赤ら顔の正体を現した番頭。


それを、じとぉ〜とした目で見る女将は、


「無理っ」


と、ひとこと言うとゴム手袋をするのだった。


「あ、怖い顔が出たから、マスターこれ」


客なのだが、下手に出る番頭だった。




不意に、すーとドアが開いた。


振り返るマスターの顔が少し強張る。


どこかにまだ恐怖心のようなモノが宿っているのだろうか——


しかしその顔がほつれ、


「あ、いらっしゃいませ」


「鯖の塩焼きとジェノベーゼお願いできる?」


歩み寄りながら淡々と告げるのは、


「あ、大家さん」


顔を上げた女将がそう呼んだ。



「大掃除中?今日は無理かしらね」


番頭の呑む姿を認め、客がいることに安堵する大家。


「平気ですけど今消毒しているので、もう少しだけ良いですか」


流石に番頭への返しとは違う顔の女将がそこにいた。


「何かあったの?」


心配そうな大家は、状況から何かを探る様子だった。


それはそうだ、ここで何か有れば、この物件にも関わるのだ。



「ええ、実は……」


と暗い顔を作り語るのは女将だった。


昨日は休みで今日来てみたら店が荒らされていたのだった。


「もうここにあった果実酒とかが倒されて溢れてて」


と、実被害は、散乱とその酒だけなので、なるべく騒ぎたくないとも伝えた。


「そうだったの?鍵はちゃんと掛けてるものねぇ」


確認するような大家の顔。


無言で、当たり前だろ?と言いたげなマスター。



「ふーん、それじゃあお困りでしょ……あっそうだ!娘に電話して防犯カメラでも見てもらおうかね?」


閃く大家がスマホを手にする。


「え!?カメラつけたんですか?」


それにさえ気づけないマスター。


「ええ、世の中物騒だし、あった方が?と思って付けてみたのよ」


言いつつスマホを耳にあてるのだった。




「果実酒も倒されただけならいいけど、口つけて呑まれてたりとかね?」


二次災害の根を刈り取ろうとするマスター。


「そうねぇ、お客さんに出す物だから、勿体無いけど捨てるしかないわね」


躊躇わない女将もさすがと言えよう。




そして、またドアが開いたのだった。


「コレに移して来たから見られる?」


と、USBメモリを差し出す娘。


「ああ、わざわざすみません。こっちのモニターで見ましょうか?」


受け取り、セットするマスター。


「おっ、!?いよいよ分かるんですね?」


意気揚々の番頭は、1番の部外者だった。


「よーしコレで見られる、どんな奴だ?この野郎」


犯人の姿を想像して、怒りを露わにするマスターだった。



「あっ、ここだここだ」


「え!?」


一点を見つめる一同。



そこに気不味そうに口を開けるのは——


「ねえ、何でドア開けてんの?番頭」


怖い顔の女将が手袋を外す。


「え、あ!?いや……そうだ昨日やってるかな?て開けたんだった」


昨日も酔ってフラフラしていたらしいこの男。


「アレっ、ここ、白いのが入って行った」


「や、猫じゃないこれ」


猫が好きではない女将は露骨に嫌な顔をした。



「え、でも猫って出ていけないわよね、もう居なかったんでしょ?」


確かにそうだ!?


と顔を見合わせる一同は、先を急いだ。


すると、


「あれ、またあんた来てんじゃん」


遂に呆れる女将。


「あ、いや何で来たんだろ、俺」


記憶をなくすのも常習犯の番頭。


そして、そこをすり抜け出ていく猫の姿があった。



「しかし、何で鍵開いてたんだ?おかしいよな」


そこが腑に落ちないマスターは、拳を握りしめた。


「じゃ巻き戻って見てみましょうよ」


大家の娘が自然な提案をする。



リモコンの仕様上、ボタンを押しっぱなしの女将が苛立つ。


そして飽きを押し込める一同。


そして、やっと原因究明に至るのだった。



「コレってぇ?」


と、やはり顔を見合わせ黙り込む。




そして、女将が沈黙を破るのだった。


「ねぇ、アンタ——」


女将の鬼の形相が、マスターの目を怯えさせた。




「やばっ!」


と、カメラ映像のように鍵を掛けることなく、慌てて店のドアから出て行くマスターだったのである。




             完



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ