17話〜ありがとうアユミ〜
1つの節目として、こんな未来を書いてみました。
チリン、チリン、
「あ!?セーちゃん久しぶり」
「よお、ルイ元気か?」
「うん、俺はね〜」
「俺はって?」
「アユミちゃんがね」
「どうかしたのか?」
「ずっと入院してて」
そうかぁ、アユミさんも……アユミちゃんかぁ?
「親父と俺でちょいちょい会いにいってるんだけど、正直あまり……」
「そうかぁ、でもリョウくんだってそんなに具合良くないだろ?」
「まあね、でも血筋が血筋だから平気だよ」
「そうか……」
って!?俺もその血を引いているのだが。汗
「それとモエちゃんたちが帰ってくるって」
「おお、顔を見て少しは元気になってくれるとね」
「そうだね。50年以上の付き合いだからね」
◆
『居酒屋なみのり』
〜season4・最終話〜
◆
翌日、俺も病院へと顔を出した。
「こんにちは」
「ああ!?セーちゃん。来てくれたんだ」
「ええ、今まで来れなくてごめんなさい」
「いいよぉ、遠いんだし。逆にあっちはどう?」
俺が住んでるところ、アユミちゃんの故郷だったんだよね。
何か……縁を感じる。
「まあ、そんなに変わり映えは……」
「そう……」
アユミちゃん、窓から空を見上げて、やっぱ寂しいんだろうなぁ。
「そういえばモエちゃんたちのこと聞いた?」
「ああ、来てくれるかもね」
「来るよ、絶対」
「そうだね。来てくれるよね」
ああ、必ず……
「セーイチロー」
「リョウくん」
「どう、アユミちゃんは?」
「少し眠ってる」
「そうか」
「リョウくんも体は平気なの?」
「ん!?俺は平気。恵三光菌が繁殖してるから」
「ははは、爺さんを菌呼ばわりとは……」
「失礼します」
「モエちゃん、ハルト」
「お久しぶりです2人とも」
「ああ、元気だった?」
「はい……て、あんまり驚いてませんね?」
「え!?ああ……」
「え〜っ、ベルギーからサプライズ帰国したのにぃ、何か拍子抜け」
「モエちゃん。サプライズするつもりだったの?」
「そうよハルトさん。まさか……」
「ゴメン、連絡してた」
「もぉ〜、私たちが顔出してからのエアメール作戦があ〜!?台無しっ」
相変わらずな凸凹ぶりだ。
はははー。
「ん!?おお、モエちゃん」
「アユミちゃん久しぶりです」
「ホントだね。でもアンタは変わらないね」
「変わりましたよぉ、もう〜お婆ちゃんですよ私も」
「ははは、あっちで楽しく暮らせていたのかい?」
「ええ、白人男性に囲まれて〜」
「モエちゃん……」
「ははは、ハルトくんも大変だね。変なの押し付けられちゃって」
「まあ……」
「ちょっ、酷ぉい、せっかくお見舞いに来たのにぃ」
「モエちゃん……騒ぎに来ただけ」
「リョウくん爺ちゃんも酷ぉい。ジッ!」
て、相変わらず効果音を口に出して俺を睨まないでモエちゃん〜。
「空が薄いねぇ」
「ん!?ああ……」
切なさが込み上げたのか、リョウくんは濡れた視線を逸らした。
「私もルツェルンに行っていたら、白人男性にチヤホヤされていたかね?」
「アユミちゃんならキッとそうだったろうね?」
「アユミさんな?セーイチロー」
「は!?ちゃんじゃ……」
「もう死にゆくお婆ちゃんなんだ。だから……」
なら、
「アユミちゃんだよ。やっぱさっ」
「そうか……それが私の人生だったね」
「そうだよ。アユミちゃんがいてみんなを励ましてくれて……」
「楽しい思い出をいっぱいくれました」
「モエちゃんもありがとうね」
「ありがとうなんて言っちゃダメですよ。まだこれから」
モエちゃん……
「私は……私たちは一緒に呑んで、一緒に歌って……」
そうだよ、アユミちゃん……
「そして、同じものを見ていたね」
「ホントに、リョウくん?」
何も言えなくなるリョウくん。
それに代わり俺が、
「そうだよ。何にしても俺はアユミちゃんと同じものを見ていたと思っ……思いたい!」
「セーちゃん……」
「そうだよ、みんなそうだったよ」
間違いないよ——俺が断言してやる!
「ノリさんもナミちゃんも、ジューモンさんも店長も……ココにいてくれるあなたたちが」
そして、やっと口を開くリョウくん。
「そうだよアユミちゃん。俺たちはみんなアユミちゃんと一緒だった……」
「それだけさ」
「それこそでしょ?セーちゃん」
ああ、
「ずっとこれからも……」
みんなが笑いながら泣いた。
何も言わず——
空が赤く黒く染まっていった。
「また肉巻きが食べたかったね」
「ちょっと電話……」
「ふ、セーちゃんはルイに電話しに行ってくれたんだね」
「ん!?ああそうだね。少し待っててねアユミさん」
「ちゃんな!リョウくん」
「ええ!?今自分で……ははは」
「そうさ、その笑顔が……みんなの笑顔が私を横須賀に引き留めたのさ」
「そうですね。なみのり……私たちの楽園」
ニッコリとあの頃の写真を眺めるアユミちゃん。
「まだ持ってたんだねそれ」
「リョウくん。まだとかではないのですよ」
「アユミちゃん、モエちゃんの口調が移ってるよ」
「えへっ、バレたセーちゃん」
「もお〜、私の永遠の妹キャラを取らないでくださいよぉ〜」
「ははははは」
「モエちゃん……孫が何人いるんだっけ」
「孫は別腹です」
「別……って、相変わらず変な子」
なみのりの店にいるかのような空気が静謐な病室に漂った。
「ああ、ナミちゃん、ノリさん……今行くよ。また呑もうね」
ツーツーツー……
「アユ!?」
「静かな寝顔ですね?」
「ああ……」
「持ってきたよ肉巻き」
「ルイ……そこに置いてあげよう」
「親父……遅かったかぁ」
「遅くないよルイ。ちゃんと食べているさ、みんなでな」
そう言って窓から空を……天高く見上げるリョウくんだった——
——私はアユミ32歳。
この街に越してきて早速そのドアを……
完
何の脈絡もない物語にお付き合いいただき、
ありがとうございます。
まだ続けるつもりですので今後とも……




