5話 〜やきとり〜
今日は休み。
朝から無計画に歩き回る、俺はシンヤ。
あれ?それを散歩と言うのか?
年寄りのするもんだなんて思ってたけど、おいおい俺ももうそんな歳なのか……
て、まだ29だし、汗。
しかし、あれだね?
スーパーに向かうでもなく、駅に急ぐでもなく、こうして歩くと普段見えない物まで見えてくる。
ああ、散歩て案外いいかも?
「ん、なんで?」
看板の電気点いてるし。
消し忘れか?
昨日酔ってそのまま帰ったとかか?
あり得る。
あの2人ならやりかねないな!
「ま、点いてるからには行ってみるか」
そこは『居酒屋なみのり』酒と歌好きが集まる店。
あれ、ドアも隙間が開いてるし、やっぱやってんのか?
ま、入ってみるか?
うわぁ煙っ、何だ何だ?
それでも、もうこんなにお客さんが……
「いらっしゃ、おお、どうしたの今日は?」
とマスターが笑顔のまま驚く。
「あ、はい。今日は休みで……ていうか早くないですか?」
「あ、ああ。でカウンターでいい?」
「あ、はい」
ねぇ、俺の疑問を解いてよぉ。
カウンターに座り周りをみると、いつもの顔が午前中からまた真っ赤かよ。
そしてー、あとは新規さんかな、見たことないなぁ。
「ビール?」
ああ、そうだった、まだ頼んで無かった。
「あ、はい」
にしても煙いなぁ、何を焼いているんだ?
「はいビールどうぞ」
「あ、はい」
「今お通し持って来ますからねぇ」
「あ、はい」
て俺『あ、はい』ばかり言ってんな、そういう日なのか?
それとも、このマスターは『あ、はい』を専門に狩る人か?
何言ってんだ?俺。
あ、マスターがまた来た。
ああ、お通しかぁ?
いやいや、気をつけろ!
また俺の『あ、はい』を奪いに来るぞ。
もうそんな簡単にやるもんか。
「はいお通しね。あと今女将さんがやきとり焼いてるから、サービスで少し出してあげるからね」
「あ、はい」
ぐぉ〜、あっさり奪われたぁ。
俺の今日6回目の『あ、はい』を、こんなに簡単にとは——
やばいやばい、なくなってしまう俺の『あ、はい』がぁ!?
てなくならないでしょ。
に、してもうまいなぁ今日もお通し。
これ出されて『カットして』とか『出すな』とか言う人いるんだよね?
うーんまぁ仕方ないか、人それぞれだしね。
しかし、うまい。
おっ、!?ついに女将さん出陣!
ああ、やきとり上がったのか、いい匂い。
「はい、シンヤくんもこれ食べてみて」
「あ、はい。ありがとうございます」
うわぁ〜やっちゃった7回目ぇ。
て女将さんには今日初か?
なら、まっいいか。
さーて何からいただくかな?
てあれ、これはタレだよね。
いつも塩しかないて言ってたのに。
「ああ、試しに作ってみたのタレ。だから試食してみて」
「あ、は……いただきます」
さすがに、8回目は簡単にはやれねぇよ。
どれどれ、皮からいくかな。
モグモグ、
「うまっ、本当にこれ作ったんすか?」
「そう女将さんのオリジナルのタレ」
「ええ、マジでうまいっすよ」
止まらねぇ〜、ビール、ビールと。
「ママさんこれいけるねえ。俺塩しか食わねえけどこれはいいよ」
おお、雑貨屋の番頭さん。
あんたやっぱ分かる人やねぇ〜。
「女将さん。これオーダーで出来る?にんにくももが欲しい」
おお!?あっちのお客さんも?
「はーい、ももねぇ。何本いく?」
女将さん機嫌いいねぇ。
いや〜午前中からヤバいなこれ、午後はずっと寝ていそう。
ホッケと豚汁ご飯で帰ろうと思っていたのに、これじゃ底なし沼だよ。
なみのりさんよぉ〜。
あ、ビール3本目頼んじゃうか?
「マスター、ビールねっ」
「あいよっ」
マスターもエンジンかかって来たな?
まだ昼過ぎだけど。
「はいビールお待ちっ」
おー来た来た。
そして8回目はまだ守ってるぞ。
と、やきとりがもう無かったわ。
「シンヤくん俺のやきとり食べるかぁ?」
「あ、はい」
て、おーい、8回目を奪ったのは、番頭さんかよぉ。
ま、席を移っておいしく、楽しく、『やきとり』パーティ!
たまにはいいもんだね!
完




