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居酒屋なみのり  作者: マメ
居酒屋なみのり2

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17話 〜始点〜


沁みる——


と、言うほどの冷たさはなくなってきた、この頃の寒気。


しかし、沁みるものは、


ほかにも……




「はぁ〜」


と、ため息が出るのは、疲れなのか、そこに耽らせる思い出なのか……



バリバリバリっ、


「はあっ、もうおしまいっ」


と、空いた缶を捻り、また新しい缶を取り出した。


そして、


「はぁ〜」


と、またため息を吐く。


この人の場合——そのため息は酒のせいだったようだ。



丘の上の公園。


背もたれのない冷えたベンチを温める女。


コンっ、


剥がれかけたペンキを冷たい缶底が弾いた。


ふっと立ち上がり、焦げた色の鉄の柵に手をつき、オレンジに染まりゆくビルを見下ろした。


「ふぅ〜」


酒に燻された呼気が漏れる。


空は、またその息を白く泳がせていった。


女の目はそれを追わず、取り壊し中のビルに刺さったままだった。



そこに見ていたものは——


場所の思い出、


移りゆく儚さ、


そして……


そこで解体作業をしている人の中にも、そこを大切なモノとして、、、


悲しみながら作業をしている人もいるかもしれないと、勝手にそう思い、憂いていた。



「はあ〜」


いつしか、こんな思いも……


と、今吐いた白い息を、今度は見守り、、、


そして消えてゆくことに、重ねているようだった。



そして、振り向き鉄の棒に体重を預けた。


見上げた空には……


大きな雲が、、、


「はぁ〜あ、私たちの白い息が……ああなったのかね?」




私たち、、、


とは、今生きているものたちだけとは——限らなかった。




             ◆



         『居酒屋なみのり』


         〜season2・最終話〜



             ◆




「ああ!?こんなところに居た?」


夕陽に黒い影と化したその女に手を振り、丘を登って来る者がいた。


「ふぅ疲れたっ、こんな所があったんですね?」


自然に湧いてきた笑顔から、大きな白い息が漏れ、またそれは、空の白を大きくしていった。


「アユミちゃんにさ、ここに立って……」


突然吹いた風が、冷え切ったアユミの耳を擦り、その語尾を消して連れ去って行った。


「はあ〜、でも綺麗ですね?」


「そう?」


女はどことなく嬉しそうにしながら、


(でも、昔はもっと——)


心の中のモノは心に、そっと閉じ込めておいた。




——さあ、呑みましょ



「乾杯」


いつものような語尾の伸びはなかったが、2人には確かな言葉だった。


「ああ!?もうこんなに呑んでるぅ?」


コンビニ袋の中の空き缶を数えるまでもなく、ボヤくアユミ。


「まだ買ってあるから平気よ」


「違いますよ、ズルいんです?」


「な……」


何が?の言葉が吐けなかった。


「そっかぁ?アユミちゃんは地元じゃないから、私だけ……」


呑んで、浸って、、、



「ん、もう?桜もまだ咲いてないしさっ」


桜を美しくライトアップするはずのスタンドライトが灯り始めた。


まだ、オレンジ色の水にプルシアンを少し落としただけの空に、ライトの光は弱々しかった。



「でもさあ?」


黙って声の横顔を見つめるアユミ。


「いつかはさ、ここがアユミちゃんのさ……」


「そうですね?ピンちゃんが、他所からここにやって来たように、私も——ずっとここに居るぅー!!」



寒さを増した空に、消えない想いが雲を押しのけ1番星へと……届くのだった。



「あれっ?もうなくなっちゃった?」


「ええ?まだ買ってあるって?」


「そうだけど……ああ!アイツだっ!」


空を指差す向こうに、


「ホントだぁ?店長雲が呑んだんだぁ?」


「とっちめに行こう!」


「そうですね?今日は許しませんよ」


ははははっー


「何を!」


「いや?何でも、、、ノリさんもナミちゃんもみ〜んなっ!もう、逃さないっ」




ようやく、プルシアンに染まり切った空に……



振り続けられるコンビニ袋の……



空き缶の音だけが響いていた——




     

             呑


ここまで、一旦ありがとうございました。

またダラダラと第3へと続きますが、今後も宜しくお願いします。

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