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居酒屋なみのり  作者: マメ
居酒屋なみのり1

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3/27

3話 〜水に流そう〜

年末なので、呑む機会も多いと思いますので、酒のお供に読んで頂けたらと、連続投稿する予定です。


「あれ!?きっしーはまだトイレ?」


カウンターに座る常連の目が、きっしーの席とトイレを行き来する。


「ああ?」


と、答える俺はマスターさ。年は秘密ね。


「男のクセにとか言わないの」




「きっしーは平気かね?」


一応客の手前、女将さんに聞いてみたら、


「いつものことでしょ。まだまだ出てこないよ」


荒々しい返しの女将。もっと柔らかく行こうぜ。


「そうなんだ。でも他の人たちも入りたいかもしれないし」


どーだ正論だろ?


「そしたらノックするか、ソワソワするでしょ」


と、相変わらずなつっけんどんを、できたばかりの料理に乗せて来た。


おい、それは辞めろ!



「うーんでも、酒飲んでるから近くなるでしょ」


やはり自論が捨てきれません。俺は。


「じゃ聞けばいいじゃん」


嫌そうに手を振り、みんなを指差す女将。


「はあ、オシッコしたいですか?て聞いて回るの?」


そんな居酒屋聞いたことねぇー。


頭いってんだろ?ある訳ないだろそんな店。


「じゃあ黙ってろよ」


はいっ男丸出しのお前、出ましたぁ。


(つーかほんとに男じゃないよねアナタは)




ま、気を取り直し、カラオケの手拍子でもしていよーっと。


パチパチパチ、


「いやーうまいね、いい歌だね」


今の俺には沁みるぅー。


お?次はあの子かぁ、どんな歌声なんだろ?




コンコン、


て、おい、お前!


ノックしとるやん。


「きっしー、平気?ちょっと長いよ」


出ましたぁ、『私はいいの!』て奴。


伝家の宝刀、女将の棚上げ。



「マスター、そんな口の形なんてアニメでしか見たことないよ」


と、笑うのは赤ら顔の番頭。この時間になると色が変わるらしい。


ま、うちの店が呑ませているとも取れるか?


いや本人の意思だ。そこは譲らないよ〜。



で?きっしーの返事はあったの?なかったの?


スタスタと付け場に戻る女将は、何食わぬ顔でマイグラスを煽る。



「全く、喧嘩しないでよ」


と、トイレのドアを叩き、


「きっしさん起きてる?みんな入れないよ」


俺の代わりに言ってくれるのは、きっしーの連れのママさん。


しかし、喧嘩しないでよ、て俺はそんな険しい顔していたのか?



いかんいかん、客商売、客商売。


「よし、飲もう」


笑顔を作るだめだ。


「店のためなんだ」



「そんなこと言ってマスター、飲みたいだけでしょ?一杯だそうか?」


と言うのは40がらみの常連さん。


「おお、良いこと言うね君。週2日から3日にシフト増やしてあげようか、何なら」


「はははっ、参ったなぁ、もっと飲みに来いってか?」


まんざらでもないんだろ?


その笑い方は、いいぞ週5でも出させてやるぞ、金さえ使ってくれればな?


へへへっ俺の中の腹黒がぁ〜ああ。



「またバカばかり言って、ママも言ってやって下さいよぉ」


女将は半笑いなのか?未だ読めない。


「ははは、マスターも呑ませてくれるお客さんは確保したいからね!」


控えめに笑うが言うことはキツいぞー!ママさん。




そして、ついに天の岩戸が開くのだった。


神々しい照明を背にホールに降り立つきっしー様。


「どしたんですか皆さん。トイレの前に集まって」


ズレたメガネを上げながら真顔のきっしー。


顔を見合わせる彼以外の全員。


「具合悪いの?」


トイレに駆け込みたそうなピンちゃんと言う女性の常連さん。


「いや、ただキレが悪かったんですよ。何でもないですよ」


「な、なんなのそれ?20分もずーとこうしていたの?」


おおっと、手振りまで付けちまった。


そして巻き起こる酔った笑い。




「や、やめて笑わさないで〜漏れる漏れるぅ」


と、ピョンピョンしながらトイレに駆け込むピンちゃん。



俺の取った笑いを、ちっぽけなものに変える大笑いを取るのだった。





             完





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