3話 〜えん結び〜
「あああ!どっち行った?」
「えぇっ!?あっち!」
「え、どこ?」
「あぁ、いや……テキトーに」
お久しぶりです、私はミナ26歳です。
あれから私もここ、『なみのり』の常連となったのです。
「いやぁ、逃げられちゃったよ」
「またぁ?」
「何だったんですか?」
「え、あぁ、さっきは悪かったね。食い逃げだよ」
ええ、そんな事が起きていたのぉ?
「しかもね、アイツね」
「て、店長ぉ近いんだけどぉ」
「ああ!?そんな事……で、そちらさんは?」
「え、何?店長」
あれ!?誰、お客さん?
「ん?いらっしゃいませ……かな?」
「あ、いや……一応、客です」
「ああ、ごめんなさい。気づかずに」
「こちらどうぞ」
確か……下にいた人?
「かんぱぁ〜い」
あ〜美味しいっ、うふっ。
しかし、私はいつからお酒が好きになったのか?
きっと、キョウのせいだよね——
オッケー、そういう事で今日も飲みましょ!
「でも、食い逃げって?大丈夫だったんですか?」
ま、大丈夫では……ないだろうね?
「へへ、アイツにね、食い逃げされるのは、コレで3回目みたいですよ」
は?
「ええ、そんなに……1人の人にですか?」
「そうなんですよ。だからってダメですよ真似しちゃ」
「店長!余計なことを……」
「いやいやいや、ホントの事だし」
「そお、なんだよね。毎回、毎回やられて」
マスター、同情しますよ。
「はぁ、アンタがいつも、いつもいいように騙されるからでしょ?」
「分かったよぉ」
「ハハハハー、ノリちゃん、片なしだぁ」
「そんなこと……て、お前誰だよ?」
ええ、ホントに知らない人なんだ?
「え、あ……いえ、下でお2人が話してたので、そのままつい」
「あ〜ぁ、つられて来たってことな、お前」
マスターって初対面でもコレなの?
酔うとホント変わるよねぇ。
「確かにミナちゃん可愛いしね、分かるよ」
店長ぉ〜、初めてアンタをいい人と思ったよ。
「て、ミナちゃんコウちゃんと上手く……」
「あ、やっぱいますよね〜彼氏さん?」
いやぁ〜、女将さん黙ってぇ〜。
コウちゃんとはダメだったのよぉ〜。
「ううん、ん、そんなんじゃなかったの」
「じゃあ、チャンスありっ!」
アリよぉ〜、私は寂しがりなのよ。
あなた、まあまあイケてるし!
「ええ!?ここは不縁の聖地なんじゃなかったの?ナミちゃん」
「う〜ん、どっちでもいいかなぁ?」
「は?」
ふふふ、何その話は、なんかのジンクス的な?
しかし、今日の私はやれる。
これはあなたにではなくて、私へのチャンスなのよっ!
「しかし、いいのマスター?」
「何が?」
ホント何が?だよ。
話を変えないでよね。
「え、いや、食い逃げていくら分やられたの?」
でも、それも気になる、うんうん。
「てゆーか、何で3回も?」
ホントそれ!
「いや〜、ほとぼりが冷めると来るんだよ」
食い逃げのほとぼりとは?
「そんで、この前はすみませんでしたつって、まとめてお支払いしますので呑ませて下さいて言うもんだからさ」
は、それを何回も?
アンタはバカな……の?マスター。
「ま、そのうち金ができたら払いに来るだろ?」
ま、マスターいい人と言うか、何と言うか?
「まぁ、2人が良いって言えばそれでね」
そうなんだけどね、他所でもやってなければ良いのですが……
「で、君は何て名前なの?」
そうそう、そっちの方がむしろ大事!
「ああ、マモルと言います」
「ふーん、で仕事はなにやってるの?」
「仕事は、配達員をやっています。脚には自信があります」
「そんなの聞いてねぇわ」
はは、マスター冷たい。
チリン、チリン、
て、あれ?
「あのぅ、さっき帽子を忘れて……」
「あぁ、はいはいコレね、て!?お前は!」
「ヤバっ!」
あ、逃げた。
「マモル行け!」
「はいマスター」
お〜い、マモルっちぃ、バカにされたのに、もう使われとるやん?
私の彼氏候補がそんなんじゃなぁ〜。
ん!?
いや、違う、違う、そうじゃないわっ。
アイツ……使い勝手がいいのかもぉ〜!!
完




