クロ、お願いだから逃げて!!!!!!
無理
クロ、逃げて!
「もう……ダメなのかな……」
かんなの声は震えていた。
目の前にはザルヴァル・ウェイドの魔法が轟々と迫ってくる。
りゅうとも、表情に諦めがにじんでいた。
そのとき、グランファリーさんが言った。
「かんなさん……犠牲は、ひとりだけの方がいい。早く逃げてください」
「そんな……グランファリーさんも逃げましょう!」
一刻一刻、魔法は近づいてくる。
空気がひび割れたような気配が、肌を刺す。
「森を守れなくても……また守ればいいんです! これはグランファリーさんのせいじゃない!」
「それでも――無理です。私が原因でなくても、この場所は守らなければ……!」
グランファリーさんが手を差し伸べ、空に向かって詠唱する。
「精霊魔法《樹禍顕現》!」
地面が脈打ち、100本の花が一斉に咲いた。
けれどそれは、ただの花ではない。
花びらが無数の針でできた、精霊の防衛兵器――針花だった。
針花はザルヴァル・ウェイドの魔法に向かって一斉に飛ぶ!
「バンッ!」
鋭い衝撃音が響き、魔法の軌道が一瞬止まった。
しかし――
ザルヴァル・ウェイドの魔法は強大すぎる。
針が焼き払われ、溶かされ、次々と弾かれていく。
「……そんな、バカな……」
グランファリーさんの声には、衝撃と哀しみが混じっていた。
その様子を見て、りゅうとが言った。
「あいつ、マジでヤバい……! あんなとんでもねぇ魔法使ってんのに、かんなみたいにヘトヘトになってねぇし!」
「それ、ひどいよ!」
かんなは思わず叫んだ。
……だけど、こんなこと話してる場合じゃない。
ここにはクロもいる。
(もし、私がもっと強いガード魔法を知ってたら……! 怖がることもなかったのに……!)
魔法の炎が、もう目の前まで迫っていた。
「クロ!」
かんなは、クロを奥へと突き飛ばした。
転生してきたぬいぐるみ――けど、ここでは“本物”。
もしここでやられてしまえば、それで終わり。
「クロ、私が最初にいた村で待っててね……お願いだから……」
胸が苦しい。
怯える自分に腹が立つ。
前もモンスターに負けて、村に帰れた。
でも今回は……違う。
守らなきゃいけないものがある。
クロだけは――守りたい。
そうしてクロを安全な場所に追いやった。
でもクロは――
「かんな、危ないクロ!」
と叫んで、逆に駆け寄ってきた。
そしてかんなの前にすっと立ち、
「かんなは、クロが守るクロ!!」
「クロ……ダメぇぇぇぇ!!」
その瞬間、かんなの目から涙があふれ出した。
熱くて、止まらない。
泣きたくなかったのに……でも涙が勝手に零れていく。
(お願い……神様……クロだけは……! そしてできればグランファリーさんも……)
無理




