クロ、一瞬でお箸なれ!?!?
無理
クロ、一瞬でお箸なれ!?
「あ……また落としちゃったクロ!」
クロが鉄板の上からお肉をつかもうとして、ぽとりと箸からこぼす。
湯気がふわっと立ち上がり、焦げる前に慌てて拾うクロ。
その姿を見て、かんなは複雑な気持ちになった。
(なんか……りゅうとが勝って……嬉しいような……でも、……ちょっと悔しいような……)
その時――りゅうとが盛り終えたお皿をドン、と自分の前に置いた。
「パ、パク……」
だけど、食べるペースは明らかに落ちている。
第一回戦でご飯をたっぷり食べた影響か、お肉が入らない様子。
15分の休憩があったのに、お腹はまだ回復していないようだった。
一方で、クロはまだお肉を取り中。
(でも、今の時点ではクロが不利……取らないと食べられないルールだし)
かんなはふと思った。
(だったら最初に取るの、ちょっと控えめにすればよかったのでは?)
でもすぐに思い直す。
(いや、クロは食べるのが早いのが強み。どうせ食べるなら、最初から満たんに盛っておく方が効率いいよね)
そして、クロの様子をそっと見る。
「よいしょ、よいしょクロ!」
箸を持つ手が、さっきよりもずっとスムーズに動いている。
なんと――一瞬でお箸の扱いに慣れたようだった!
そして二十秒後――
「パッパッパッ!」
滑らかにお肉をつかみ、リズムよく皿へ移していくクロ。
「クロは優秀なぬいぐるみだから、お箸の使い方なんて一分で覚えちゃったクロ!」
さっそく自分の皿に盛り盛りのお肉を満たして、満足げに笑う。
一方のりゅうとは――
「モグ……モ……グ」
顔をしかめながら、苦しげに咀嚼していた。
重たそうなお腹が、座っている座布団にずっしり沈んでいる。
クロの方はというと……
「モグモグモグ!」
(だよねー)
かんなは心の中で、テンポを真似してみた。
イメージね。本当じゃないからね。
もしかしてフォークに持ち替えるかと思ったけど、クロはそのままお箸で食べている。
そして速い。
「モグモグモグ! モグモグ……」
その頃、りゅうとはというと……
「パ……パク……」
一口にかかる時間が、クロの10口分くらいに見える。
(これ、絶対クロが勝つじゃん)
かんなの心の中で、予想がしっかり切り替わる。
すると――それが伝わったかのように、りゅうとが口を開く。
「俺も勝てるし!」
その意地っ張りな一言に、かんなはつい小さく笑ってしまった。
「クスッ」
頬がゆるみ、目元があたたかくなる。すると……
無理




