玄関の扉の先は、、、
無理!
玄関の扉の先には、、、
かんなたちが扉を開けると、そこには――
「……なにこれ……!」
思わず息をのむほど美しい会場が広がっていた。
学校のステージのような壇上に、パーティで使われるような立派な机。
そしてその広さは、なんと体育館の3倍はありそうだった。
「な、なんじゃこりゃ!」
かんなは目を丸くする。
まさか家の地下に、こんな豪華な会場があるなんて――いや、神殿だった。
すると、グランファリーがさらりと言った。
「ここは私の部屋のひとつ、ですけど?」
「えっ、まだ部屋あるんですか!?」
りゅうとも驚きの声を上げる。
部屋のひとつという言い方に、かんなも思わずツッコミたくなる。
(部屋いち? ってことは、何個あるの……?)
そのとき、クロがふと鼻をくんくんさせて言った。
「なんか、いい匂いがするクロね〜」
かんなも空気を吸い込んでみると、ふわっと石けんのような清潔な香りが鼻をくすぐった。
「匂いまで……完璧……」
感動していると、グランファリーが微笑んで説明する。
「これは、石けんのスプレーを使っているんです」
(ここまで整ってるなんて……でも、なんのために?)
かんなはふと疑問に思った。
ステージに、机に、香りまで。
ここまで整備された空間――一体、何の目的で?
「グランファリーさん、どうしてステージがあるんですか?」
するとグランファリーは、少し誇らしげに答えた。
「私は森の精霊ですが、水の精霊、炎の精霊、風の精霊……他にもたくさんの精霊たちがいるんです」
「えぇ!? そうだったクロ!?」
クロが驚きの声を上げる。
無理もない。クロはこのゲームの設定や精霊の存在すら知らなかったのだ。
グランファリーは続ける。
「その精霊たちが集まって、ここでいろいろなことを話し合うんです」
「いろいろって、たとえば?」
りゅうとが尋ねると、グランファリーは少し真剣な表情になった。
「たとえば……森に関すること。どうすれば森を守れるか、どうすれば人間たちが森を荒らさないか――そういうことを話し合います」
「でも、それって難しくないですか? グランファリーさんが止めても、別の誰かがまた荒らすかもしれないし……」
かんながそう言うと、グランファリーは静かに微笑んで答えた。
「大丈夫です。そういう人たちには、森に二度と入れないように呪いをかけるだけですから」
「の、呪い……ですか……」
かんなは少し背筋がぞくっとした。
森のお嬢様と呼ばれていても、やはり精霊。
その力は、ただ優しいだけではないのだ。
するとクロが、ふと思いついたように聞いた。
「今思ったクロけど、他の精霊たちはどこにいるクロ? 会ってみたいクロ!」
「そ、それは……人間が会うのは禁止されていて、精霊たちに気に入られないと……」
「そうクロか……」
クロはしょんぼりとうなだれる。
それを見たかんなは、にっこり笑って言った。
「大丈夫、クロ。私たちならきっと会えるよ!」
「そ、そうクロよね!」
「ああ、きっとそうだぜ!」
りゅうとも拳を握って応える。
そのとき、かんなはふと気になったことをグランファリーに尋ねた。
「グランファリーさん、精霊たちが集まって話し合うなら……どうして他の精霊の神殿じゃなくて、森の神殿に集まるんですか?」
無理!




