森の神殿の玄関の下は、、、
森の神殿の玄関の下には、、、
かんなたちは、グランファリーに案内されながら神殿の玄関ホールの中心へと進んでいく。
そこにはまっすぐ下へ続く長いハシゴが現れた。
「えっ……これ、どこまで続いてるの?」
かんなたちはハシゴを掴み、慎重に降り始める。
1分経っても地面は見えず、途中にはいくつもの部屋の入り口が並んでいるのが見えた。
けれど、まだまだ下がある。
――そして、3分後。
「おい、地面が見えたぞ!」
りゅうとの声が響く。
「そうだね……やっとか……」
かんなはすっかり疲れた様子で、足を滑らせないように慎重に降り続ける。
ようやく着地すると、グランファリーがにこやかに言った。
「皆さん、長いハシゴをお疲れさまでした。本当はもっと簡単な降り方もあったのですが……」
「えっ!? なんで先に言ってくれなかったんですか!?」
「ええと……一生懸命降りている皆さんを見て、すごいなーって感動していたら……タイミングを逃してしまって……」
「そんなー! クロの苦労、どうなるクロ〜!?!?」
「ほ、本当に申し訳ありません、クロ様!」
「……クロ様? クロのこと?」
「はい、そうですけど……?」
「まぁ、これからも“クロ様”って呼んでくれるなら、許すクロよ!」
「ありがとうございます、クロ様!」
「うーん、ただ呼ばれたかっただけじゃん」
かんなはあきれつつも、その先の景色に再び目を見張った。
そこには――またしても広大な空間が広がっていた!
「あれ……靴が置いてある、傘立ても……え、これってまさか――」
「第二の玄関!?」
「いやいや、そんなわけ……」
「ええ、正解ですよ、かんなさん!」
「ほら見たことか! でもなんで玄関が二つもあるんです?」
グランファリーは少し恥ずかしそうに笑いながら答えた。
「この空間のレイアウト、ずっと悩んでまして……いきなり居室だと落ち着かないと思って、玄関にしてしまいました!」
「ていうか……やっぱり玄関広っ!!」
そう、最初の玄関でも広い!と思ったのに、この第二玄関はさらに広い。
しかも、植物に自転車……いろんな物が置いてあるのにスカスカ。
ガラ空きすぎて逆に落ち着かない。
ただ、かんなの目は奥にある重厚な扉へと自然に引き寄せられていた。
(たぶん、あの先が本当の地下の部屋ってやつ……)
と、そのとき。
「……え、床、めっちゃピカピカ!?」
かんなは足元を見下ろして目を見張った。
土かと思っていた床は、なんと滑らかで光を反射するコンクリート。
森の中にある神殿とは思えない整いぶりだった。
「かんな、早く次に進もうクロ!」
クロが嬉しそうに声を上げる。
「そうだぜ! こんな広いところ、冒険するの楽しすぎるって!」
「広いところじゃなくて、神殿って言いなさい!」
呆れつつも、かんなは奥の扉へ手をかけた。
かんなが扉をゆっくりと開けて、玄関から次の部屋へと一歩を踏み出す――そのときだった。
「ガルルルルル……! ウォワワワワワワ!!」
その不気味な唸り声が響いたのは、扉の奥からではない。
――背後。さっきまでいた“玄関”の奥の奥、入ってきた方向からだった。
つまり……壁の向こう側。
でも、声は微かで小さく、かんなたちはまったく気づかない。




