一歩目はパンから
第五話です。
クロが今まであったことを話すと、かんなは目を丸くした。
「え!?何してるの!全然約束守ってないじゃん!」
「だって……迷子でかわいそうだったクロよ」
「そうかもしれないけど……もしその子が怖い人だったらどうするつもり!」
「でも、結局何もなかったクロ!」
クロが力強く言うと、かんなはため息をついた。
「まぁ、そうだけど……次からは気をつけた方がいいよ。世の中には、泣いている人に近づいたら危険になることもあるんだから」
「んー。わかったクロよ。でも早く朝ごはん!」
「……はいはい」
かんなが出したのは、食パンのようなものがたった1枚だった。
クロはしばらく見つめた後、ポツリとつぶやく。
「え、これだけクロ……?」
「朝ごはんだからね」
「えぇ……。いっぱい動いて疲れたクロのに……。ところで、これは何パンクロ?」
「これはキャラメルフロートブレッドだよ」
「キャラメルフロークブレットクロ?」
「違うよ、キャラメルフロートブレッド」
「むむむ。ここの言葉は難しいクロね。でも、なんでハルマ君は覚えられたクロ?」
「多分、私が家で友達の話をしていた時に、それが聞こえたんだろうね。私にはハルマ君っていう友達がいたから」
「そういうことクロか!」
しかし、クロは話してばかりではなく、本当は早く食べたい。
だって、初めての食事なのだから!
でもかんなが話してきて、なかなか食べられない。
だから、かんなの言葉を遮り――
「いただきますクロ!!!」
そう叫ぶと、目の前のキャラメルフロートブレッドをガブリ。
その瞬間――
「な、何クロ!?」
口の中いっぱいに広がるふわふわの食感。
まるで綿菓子のような柔らかさ。
そして、ほんのりキャラメルの甘みが広がる。
思わず、クロは目を輝かせた。
「これは……ふわっふわでとても美味しいクロ!」
すると、かんなが説明を始めた。
「これは特別なパンなんだよ。ここのパン職人が丹精込めて作ったパンで、食べるとジャンプ力が上がるの」
「ジャンプ力!?クロがぴょんぴょん飛べるようになるクロ?」
「そう。だから値段高かったんだよねー」
そうかんなが言っているうちに――
クロ、完食。
「え、もう食べたの!?私まだ一口も食べてないのに!」
かんなが驚く。
その時クロは、かんなが食べている間に訓練のことを考えていた。
かんながキャラメルフロートブレッドを食べ終わると――
「かんな!訓練って何をするクロ?」
「まずは剣の使い方だね」
「剣以外にもハンマー、魔法の杖……いろんな武器があるけど、とりあえず剣に慣れていこう」
「剣が使えなかったら他の武器も難しいからね」
「そ、そんなにたくさんあるクロか!強くなるのも大変クロね」
「それだけじゃないよ。盾で敵の攻撃を防ぐ練習もあるし……剣だけで弱音を吐いていたら強くなれないよ」
クロは真剣な表情になり、拳を握りしめた。
「クロ、頑張るクロ!!!」
こうして、かんなとクロは訓練をするために、前にかんなが使っていた訓練所へ向かうのだった――。
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