眠る水の魔法ーー目覚めの島
無理
眠る水の魔法ーー目覚めの島
かんなが目を覚ましたとき、最初に映ったのは、白い天井だった。
木の梁が走る、どこか懐かしいような小さな部屋。
潮の香りと、ほんのり焦げた木の匂いが鼻をかすめる。
「……ん……」
体は重かったが、痛みはなかった。
ゆっくりとまぶたを開けると、すぐ目の前に――
「……りゅうと……?」
「お、起きた」
「フェッ!?!?」
思わず変な声が出た。
りゅうとはベッドの脇に座り、じっとかんなを見つめていた。
その顔には、安堵と、少しの困惑が浮かんでいる。
「な、なんで……ここに……?」
「それはこっちのセリフだよ。まったく……」
そう言いながらも、りゅうとの表情はどこか嬉しそうだった。
そのとき――
「かんなー!!」
ふわふわの何かが勢いよく飛び込んできた。
クロだった。
「よかったクロー!!ほんとによかったクロー!!」
クロは、かんなの胸に顔をうずめて、ぽふぽふと泣いていた。
その小さな体が震えている。
「クロ……ごめんね、心配かけて……」
かんなは、クロの頭をそっと撫でた。
その手のひらに、ようやく力が戻ってきたのを感じた。
「……ありがとう、ふたりとも……」
「礼はいいから、無茶すんなよ」
りゅうとは、少しだけ顔をそらして言った。
けれど、その声は優しかった。
しばらくして、かんなはベッドからゆっくりと起き上がった。
足元はまだふらついていたが、歩けそうだった。
「ちょっと、外の空気……吸ってくる」
「……分かった……!」
「クロもついてくクロ!」
扉を開けると、外はすっかり静かになっていた。
焼け跡の向こうに、青い海が広がっている。
そして――
そこに、ミラーシャルドラゴンがいた。
大きな体を横たえ、空を見上げている。
かんなが近づくと、ドラゴンはゆっくりと首をもたげ、空を仰いだ。
次の瞬間――
ゴォォォォ……
ドラゴンの口から、虹色の炎が天へと放たれた。
それはまるで、光の帯のように空を舞い、
やがて、ゆっくりと形を変えていく。
「……あれ……文字……?」
かんなが目を細めると、炎の中に浮かび上がったのは――
「“ありがとう”……?」
虹色の炎が空に描いたその言葉は、
やがて風に溶けるようにして消えていった。
「……伝えたかったんだね」
かんなは、そっとつぶやいた。
ドラゴンは、静かに頷いたように見えた。
そのときだった。
かんなの目の前に、ふわりと光が浮かび上がった。
何もない空間に、突然現れた透明な板のようなもの。
「……え?」
それは、まるでゲームの――
「プロフィール画面……?」
そこには、かんなの名前と、見慣れないステータスが並んでいた。
そして、中央に表示された一枚の画像。
そこに写っていたのは――
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次章予告:「選ばれし者――虹の記録」
目覚めたかんなの前に現れたのは、見知らぬプロフィール画面。
そこに記されたのは、彼女自身の“何か”だった。
ミラーシャルドラゴンの炎が描いた“ありがとう”の意味。
そして、写っていたその画像が示すものとは――
次回、かんなの過去と、この世界の真実が、少しずつ姿を現す。
虹の記録が、彼女を新たな運命へと導いていく。
無理




