目覚める力ーーオーラに呼ばれて
無理
目覚める力ーーオーラに呼ばれて
ミラーシャルドラゴンの翼が、ふわりと広がった。
虹色の光が空に反射し、まるで世界が一瞬、静止したかのようだった。
かんなは、ほうきの上で動けなかった。
その巨大な顔が、すぐ目の前にある。
けれど、恐怖はなかった。ただ、胸の奥がざわついていた。
そして――
ドラゴンの前脚が、そっとかんなの身体に触れた。
その動きは驚くほど優しく、けれど確かな力を持っていた。
「……え?」
次の瞬間、かんなの身体がふわりと宙に浮いた。
ほうきが離れ、空気が変わる。
ミラーシャルドラゴンの背に、かんなの体がそっと乗せられていた。
「ちょ、ちょっと待って……!」
かんなが声を上げたときには、もう遅かった。
ドラゴンの翼が、再び大きく広がる。
「かんなーっ!!」
りゅうとの叫びが、森に響いた。
彼はすぐに駆け出そうとした――が、
バンッ! バンバンッ!!
森の奥から、再び銃弾が飛んできた。
りゅうとの足元に、土が跳ね上がる。
「くそっ……邪魔だっ!!」
「かんなー!!待ってクロー!!」
クロも、ふわふわの体で必死に駆け出す。
けれど、銃弾がその進路を遮るように飛んでくる。
「クロ、下がれっ!」
「でも、かんなが……!」
ミラーシャルドラゴンは、何も言わず、ただ静かに空へと舞い上がっていく。
その背に、かんなを乗せたまま。
「りゅうとー!クロー!!」
かんなが叫ぶ。
けれど、風がその声をさらっていく。
「かんなーっ!!」
「かんな、待ってクロー!」
空と森の距離が、どんどん開いていく。
りゅうともクロも、追いかけたくても追いつけない。
銃弾が、まるで“引き離すため”に撃たれているかのようだった。
ミラーシャルドラゴンは、雲の中へと消えていく。
その背に、かんなを乗せたまま――
どこへ向かうのか。
なぜ、かんなだったのか。
その答えは、まだ誰にも分からない。
ただ、空に残った虹の光だけが、すべてが現実だったことを物語っていた。
---
次章予告:「連れ去られた空――ドラゴンの目的」
ミラーシャルドラゴンは、かんなを連れ、空の彼方へと消えた。
りゅうととクロの叫びも届かず、銃弾がふたりの足を止める。
なぜ、かんなだったのか。どこへ向かったのか。
次回、ドラゴンの目的が明らかになる。
空の上で、かんなが見るものとは――
そして、りゅうととクロの決意が、再び動き出す。
無理




