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語りの解放――リルドの沈黙と風の選択

無理

語りの解放――リルドの沈黙と風の選択

風が、アリサンの背を押していた。

語りの流れは、彼の歩みに寄り添いながら、

天の精霊たちのもとへと導いていく。


“はじまりの野”の中心に立ったアリサンは、

少しだけ俯いて、そして顔を上げた。

その瞳には、語りの光が宿っていた。


「だから……ずっと、いいなって思ってたんです」


その声は、風に乗って静かに広がる。

天の精霊たちは、彼の言葉に耳を澄ませていた。


「天の精霊さんたちは、いつも仲が良くて、

笑いあったり、泣きあったり、

語り合って、支え合って……

ぼくには、それがすごく、まぶしく見えてました」


風が、彼の語りを包み込む。

それは、憧れの語りだった。

遠くから見ていた、届かないと思っていた語り。


「ぼくは……あなたたちに、悪いことをしました。

語りを拒んで、風を止めようとして、

仲間を傷つける側にいた。

でも……」


アリサンは、胸に手を当てた。

そこには、語りの芽が確かに根を張っていた。


「でも、ぼくは……あなたたちの仲間になりたい。

いや、仲間じゃなくて――友達になってほしい。

ぼくの、友達になってくれますか?」


その言葉が、風に乗って天の精霊たちのもとへ届いた。

語りの流れが、彼らの胸に触れる。

炎の灯が揺れ、水の雫がきらめき、雷の根が震える。

森の葉がそっと広がり、風が静かに吹き抜ける。


そして――


少しの沈黙のあと、天の精霊たちは声を揃えて叫んだ。


「もちろん!!」


その声は、風に乗って空へと響き渡った。

語りの力が、絆となって世界を包み込む。

アリサンは、驚いたように目を見開き、

そして、涙をこぼした。


「……ありがとう」


その言葉は、語りの証だった。

拒絶ではなく、受容の語り。

孤独ではなく、絆の語り。


だが、その瞬間――


リルドは、遠くからその光景を睨んでいた。

黒い靄の中で、ひとり立ち尽くし、

拳を握りしめながら、低く呟いた。


「あいつら……」


その声には、怒りだけではない、

何か別の感情が混じっていた。

語りに触れた者だけが知る、揺らぎの気配。


風は、リルドの周囲にも吹いていた。

語りの流れは、彼の沈黙を包み込もうとしていた。


物語は、最終の扉へと向かう。

語りを拒む者の心に、風は届くのか――

そして、語りの世界は、どこへ向かうのか。


---


次章予告:「語りの扉――リルド、語るか否か」

アリサンは語りを選び、友達を得た。

天の精霊たちは、語りの力で絆を結んだ。

残されたのは、リルド。

語りを拒み続けた彼の心に、風は届くのか。

次回、語りの扉が開かれる。

それは、語るか否か――

風が最後に選ぶ、語りの行方。

無理

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