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語りの交差ーー風が選ぶ言葉

無理

語りの交差ーー風が選ぶ言葉

風が吹き抜けた“はじまりの野”に、

黒い靄が裂けるように揺れた。

その奥から、ゆっくりと姿を現したのは――

天の精霊だった。


彼は、光と静けさをまとっていた。

その歩みは、風に逆らわず、

語りの流れに沿うように、まっすぐだった。


悪の精霊たちは、靄の中でざわめいた。

語りを拒むその存在が、

語りに触れたことで、わずかに揺らいでいた。


天の精霊は、風の精霊の前に立つ。

その瞳は、深く、静かだった。

そして、彼は口を開いた。


「……語りを守る者たちよ。

私は、天の精霊。

語りの源に立つ者。

今こそ、語りを渡す時だ。

この風に、あなたたちの言葉を乗せてほしい。

それが、闇を越える唯一の力になる」


風の精霊は、うなずいた。

そして、日記を開く。

そこには、これまでの語りが刻まれていた。

試練の記憶、仲間の声、芽吹いた問い――

すべてが、風の中にあった。


「……私たちは、語りを恐れない。

だから、渡します。

この風に、私たちの物語を」


その瞬間、天の精霊が両手を広げた。

空が震え、光が差し込む。

風が渦を巻き、語りが交差する。


悪の精霊たちが、呻き声を上げる。

語りに触れたその身が、軋みを上げていた。

拒んできた言葉が、今、彼らの中に流れ込もうとしていた。


水の精霊が、空に語りを放つ。

雷の精霊が、大地に語りを刻む。

炎の精霊が、灯に語りを宿す。

森の精霊が、葉に語りを包む。

影が、芽吹いた言葉を風に乗せる。


そして、天の精霊がそのすべてを受け止める。


「……これが、語りの交差点。

風が選ぶのは、力ではなく、届く言葉。

さあ、語りを渡そう。

闇に、語りを」


風が吹いた。

それは、語りと語りが交差する風だった。

そして、天と闇の戦いが――

今、始まった。


---


次章予告:「風の対話――語りが届くとき」

天の精霊と悪の精霊が対峙し、語りの風が交差する。

語りを拒む者たちに、言葉は届くのか。

それは、力ではなく、心に触れる対話。

風が選ぶのは、誰かの記憶に残る語り。

そして、語りが届いたとき――

闇の中に、ひとつの芽が生まれる。

 

無理

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