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風の戦場ーー語りを渡す者たち

無理

風の戦場ーー語りを渡す者たち

 朝が、静かに“はじまりの野”を照らし始めた。

空は淡い金色に染まり、風は夜の匂いを残しながら、

新しい一日を迎える準備をしていた。


精霊たちは、それぞれの場所に立っていた。

風、水、雷、炎、森――

五つの語りを宿した者たちが、

試練で得た力を胸に、静かに息を整えていた。


風の精霊は、丘の上に立つ。

日記は開かれていない。

語りは、もう彼女の中にあるから。


「風は、語りを運ぶ。

だから私は、吹く。

誰かの背を押すために」


水の精霊は、空を見上げる。

雲はほどけ、流れは整えられていた。

彼女の手には、語りの雫が宿っていた。


「語りは、心に染みるもの。

だから私は、流れる。

誰かの声に寄り添うために」


雷の精霊は、大地を踏みしめる。

拳は握られていない。

語りは、守るものだから。


「語りは、揺れても折れない。

だから俺は、立つ。

誰かの言葉を支えるために」


炎の精霊は、灯の丘に立つ。

灯は揺れていない。

語りは、照らすものだから。


「語りは、闇の中でも消えない。

だから俺は、灯す。

誰かが見失わないように」


グランファリーさんは、森の縁に立つ。

葉は編まれ、語りは包まれていた。


「語りは、歩くもの。

だから私は、共に歩く。

誰かの記憶を守るために」


そして、影は“はじまりの野”の中心に立つ。

胸の芽は、ひとつだけ葉を広げていた。

それは、語りの証。

彼自身の言葉だった。


「……ぼくは、語る。

誰かに届くかはわからない。

でも、語りたいと思った。

それが、ぼくの力だから」


風が吹いた。

それは、試練を越えた者たちの背を押す風だった。

静かで、力強く、

語りを未来へと運ぶ風だった。


そして――

戦場が、ゆっくりと姿を現す。


---


次章予告:「語りの始まりと風の一撃」

精霊たちは、語りを胸に立ち上がった。

悪の精霊が現れるその瞬間、語りは試される。

だが、語りは奪われるものではない。

それは、渡すもの。

風の精霊たちは、語りの力を解き放つ。

最初の一撃は、語りの始まり――

それは、風が選んだ者たちの物語だった。

 

無理

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