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選ばれる未来とかたられる真実

無理

選ばれる未来と語られる真実

扉の奥は、まばゆいほどの光に満ちていた。

だが、それは目を刺すような強さではなく、

記憶の奥に差し込むような、柔らかな光だった。


風の精霊が一歩踏み出すと、足元に風が巻き起こる。

それは彼女の内側から吹き出した風――

過去を越え、未来へと向かう意思の風だった。


仲間たちも、静かにその光の中へと歩みを進める。

雷の精霊の足元には、赤い稲妻が走る。

水の精霊の周囲には、静かな波紋が広がる。

炎の精霊の背には、揺れる灯が灯り、

グランファリーさんの足元には、柔らかな根が伸びていた。


光の中を進むと、やがて空間が変わった。

そこは、まるで記憶と未来が交差する場所。

空には、過去の場面が浮かび、

地には、まだ見ぬ選択肢が刻まれていた。


中央に、ひとつの台座があった。

その上には、三つの道が描かれていた。


ひとつは、空へと続く道――「自由」。

ひとつは、大地へと続く道――「使命」。

そして、もうひとつは、霧の中へと続く道――「未知」。


風の精霊は、台座の前に立つ。

その瞬間、空間が静かに問いかけてきた。


「あなたは、何を選ぶのか。

誰かのためではなく、自分のために。

この物語を、どう紡ぐのか」


彼女は、日記を胸に抱えたまま、目を閉じた。

過去の記憶が、静かに浮かび上がる。

手を伸ばせなかったあの日。

でも、伸ばしたかったという願い。


「……私は、風の精霊。

誰かの背中を押す風でありたい。

だから、私は――“未知”を選ぶ」


その言葉に、霧の道が淡く光る。

風が、彼女の背を押すように吹いた。


雷の精霊は、拳を握りしめる。


「俺は、守りたいものがある。

だから、“使命”を選ぶ。

それが、俺の答えだ」


水の精霊は、静かにうなずいた。


「私は、誰かの声を聞き続けたい。

だから、“自由”を選ぶ。

心のままに、流れていく」


炎の精霊は、迷わず言った。


「俺は、“未知”だ。

怖いけど、信じたい。

この先に、何かがあるって」


グランファリーさんは、少しだけ笑って言った。


「私は、“使命”を選びます。

根を張る場所を、見つけたいから」


五人の選択が、空間に刻まれた瞬間――

台座が光を放ち、空間が静かに震えた。


そして、三つの道がそれぞれ開かれた。

それぞれの未来へと続く扉。

それぞれの物語が、今、始まろうとしていた。


風の精霊は、霧の道へと歩き出す。

その背に、仲間たちの選択が重なっていく。

誰もが違う道を選んだ。

でも、誰もが同じ場所から始まった。


それは、囚われの物語ではない。

語られるべき物語でもない。

彼ら自身が、語る物語だった。


---


次章予告:「風の先へ――語る者たちの旅立ち」

それぞれの道を選んだ精霊たちは、いよいよ旅立つ。

風の精霊は“未知”へ。雷は“使命”へ。水は“自由”へ。

炎と森も、それぞれの選択を胸に進む。

その先に待つのは、誰かの答えではなく、自分たちの問い。

語る者となった彼らは、世界に風を吹かせる。

それは、静かで力強い――新しい物語の始まりだった。

無理

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