扉の向こうにあるもの
無理
扉の向こうにあるもの
けれど、次に精霊たちが目を覚ました場所は、冷たい石と鉄に囲まれた監獄だった。
それぞれが、別々の牢屋に閉じ込められていた。
壁は分厚く、魔法も使えない。
ここは、警察署の地下にある“本物の”監獄だった。
風の精霊は、天井を見上げた。
そこには、小さな通気口があった。格子は錆びついていて、外の空気がかすかに流れている。
「……あそこから出られるかも」
彼女はベッドの下を探り、折れたスプーンを見つけた。
「これでネジを回せるかもしれない」
雷の精霊は、壁を叩いて音を確かめていた。
「……ここの壁、音が違う。中が空洞になってるかも」
彼はベッドの足を引き抜き、鉄の棒にして壁をこじ開けた。
中から古びた工具袋が出てきた。中にはドライバーや釘抜きが入っている。
炎の精霊は、床のタイルが一枚だけ色が違うことに気づいた。
タイルをはがすと、古い紙が出てきた。
『通気口を開けるには、みんなの力が必要。
風がネジを回し、雷が工具を渡し、炎が火でサビを焼く。
水は音で合図を送り、森は根を伸ばしてアイテムを探す。』
「……なるほど。これは、脱獄の手順か」
水の精霊は、壁に耳を当てて風の精霊の動きを聞き、
金属の水差しを叩いて、カンカンと音で合図を送った。
グランファリーさんは、床に置かれた小さな植木鉢を見つけた。
そこから伸びた根が、床の隙間に入り込んでいく。
「……何かに触れた」
引っ張り出すと、小さな金属の部品が出てきた。
風の精霊がそれを通気口のロックに取り付け、スプーンでネジを回す。
カチッ。
通気口のフタが、少しだけ開いた。
「やった……ここから出られる!」
雷の精霊が工具袋からワイヤーを取り出す。
「これ、通気口の中で使える。たぶん、監視室につながってる」
風の精霊は、通気口に体を滑り込ませた。
狭くて暗いけれど、風が通っている。
その先に、監視室が見えた。
そこには、牢屋の鍵を開けるスイッチがあるかもしれない。
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次章予告:「静かな連携、最初の突破口」
風の精霊が通気口を抜け、監視室へとたどり着く。
仲間の動きと小さな合図が、少しずつ道をつないでいく。
脱獄の第一歩は、静かで確かな連携から始まる。
無理




