封印の扉と、精霊達の覚醒
無理
封印の扉と、精霊達の覚醒
神殿の空気は、まだ重く沈んでいた。
風の精霊の叫びに反応して、仲間たちは次々と目を覚まし始める。
炎、水、雷、土――それぞれが、ぼんやりとした意識の中で、状況を把握しようとしていた。
「……え? 今、全員出撃って……?」
炎の精霊が、寝ぼけた声でつぶやく。
グランファリーさんは、風の精霊の横顔を見つめながら、そっと問いかけた。
「……それって……本番の話、ですよね?」
風の精霊はしばらく黙っていたが、やがて静かに頷いた。
「……ああ。決戦の日。あいつらは本気で来る。こっちも負けていられない。全員で迎え撃つしかない」
その言葉に、神殿の空気がさらに張り詰める。
雷の精霊が、低く唸るように言った。
「でも……それって、結晶の守りを捨てるってことだろ。もし負けたら……」
水の精霊が、静かに言葉を継ぐ。
「……世界が終わるかもしれない」
誰もが、言葉を失った。
グランファリーさんは携帯を見つめながら、悪の精霊からの返事を思い出す。
「戦争なんだから、死者はたくさん出るでしょう」
その冷たい一文が、胸の奥で何度も響いていた。
風の精霊が、ゆっくりと立ち上がる。
「……でも、今はまだ一週間ある。準備はできる。立て直せる。あいつらに、後悔させるくらいの力を……」
その時だった。
神殿の奥――誰も近づかない古文書保管庫の裏手にある石壁が、微かに震えた。
ギィ……と、重く軋む音が響く。
精霊たちが一斉に振り返ると、そこには苔に覆われた古びた扉が現れていた。
封印されていたはずの精霊の書庫。
「……あれって、50年前の戦争のあと、閉ざされたはずじゃ……」
土の精霊が、驚いたように呟く。
風の精霊は、目を細めながら言った。
「もしかして……今こそ、あの力を解放する時なのかもしれない」
グランファリーさんの胸がざわめいた。
40秒で倒された私たちが、たった一週間で立ち上がるには――
何か、決定的な力が必要だ。
そして、その扉の奥に、それが眠っているのなら――。
無理




