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階段の奇跡と、心に残る感触

無理

階段の奇跡と、心に残る感触

「こんな可愛い子、殴れるかよ」

――あぁ、言われた。


でも、それが本心なのかは分からない。

だって、りゅうとに殴られたら「友達になれた!」って喜ぶ子もいるって噂がある。

もしそれが本当なら、私はまだ友達として認められていないことになる。


そんなふうに考えると、胸が少し痛くなる。

でも……りゅうとは、確かにあの言葉を言ってくれた。

そう思うと、顔が熱くなってくる。


今いる場所は、図書室から教室へ戻るための下り階段。

かんなはりゅうとの言葉を思い返していて、前も下も見ていなかった。


その時――


「ツルッ……!」


階段を見ていなかったせいで、足を滑らせてしまった。

落ちたのは階段の最上段。

手すりも掴めず、衝撃を和らげるものもない。


このまま落ちれば、骨折は免れないだろう。

(クロに会いに行けるかな……)

そんなことまで頭をよぎる。


(クロ、ごめん。しばらくりゅうととよろしく……)


そう思った瞬間――


「かんな!」


「……りゅうと……?」


りゅうとが、突如階段の下に現れた。


「ここに乗れ!」


手を差し伸べるりゅうと。

かんなは空中で必死に体を動かし、りゅうとの腕の中へと飛び込んだ。


「ン……」


恐る恐る目を開けると、目の前には――りゅうと。


「ギャー!」


思わず叫んでしまい、りゅうとの腕から転げ落ちる。


「だ、大丈夫か……?」


りゅうとは心配そうに見つめてくる。


「ありがと……。落下でちょっと痛いけど、りゅうとが支えてくれたおかげで軽い怪我で済んだよ」


「よかった……」


りゅうとは安堵の表情で、地面に座り込んだ。


その時――一人の女子が叫んだ。


「みんな、大ニュースです! さっきりゅうと様がかんなさんをお姫様抱っこしてました!」


「え……」


「嘘……だろ……」


二人は言葉を失った。

どうやら、かんなを受け止めた時の姿勢が、まさにお姫様抱っこだったらしい。


「バカ! 変態!」


「ごめんだけど……しょうがないだろ! お前が……」


「しょうがないですって!」


「えー!!!」


「私のこともお姫様抱っこしてくださいよ……!」


「ちょちょいちょい……! 少し待ってくれ!」


りゅうとは女子たちの勢いに押され、慌てて教室へと逃げ込んでいった。


一方、かんなは――

まだ、あの感触が残っていた。


あたたかくて、しっかりしていて、まるで王子様に抱かれたような……。

その場から一歩も動けず、顔は真っ赤。


ふと鏡に映った自分の顔を見て、恥ずかしくなって髪を整える。

落ち着こうと思っても、心臓はバクバク鳴り続けていた。


そして――

かんなは気づいていなかった。

その様子を、影から誰かがじっと覗いていることに……。

 

無理

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