図書室の静かさと、二人の鼓動
無理
図書室の静けさと、二人の鼓動
かんなたちは図書室へと移動した。
図書室は一つ上の階。
階段を上り、静かな空間へと足を踏み入れる。
前回借りた本を図書の先生に返し、席に座る。
「今から一時間目の授業を始めますよ」
先生の声に合わせて、子どもたちは元気に挨拶をした。
「今日読むお話は……『私、僕の愛が実るまで』です。これは、ある女の子と男の子が恋をする物語です」
「???作、??絵。『私、僕の愛が実るまで』。宗谷は恋をした。今まで恋なんてしたことなかった。あの子と会うまでは……」
先生はページをめくりながら、物語を読み聞かせていく。
「これで読み聞かせを終わります。みんなは借りる本を選んで、静かに読みましょう」
「はーい!」
教室中に元気な返事が響く。
かんなが選んだのは、もちろん恋愛系の本。
どうすれば好きな人と付き合えるのか。
どうすれば、りゅうとが自分を好きになってくれるのか。
そんなことが知りたくて、いつも恋愛系の本ばかり読んでいる。
今日手に取ったのは『可愛い服になりたい!』という本。
恋愛系ではないけれど、見た目の印象も恋には大事な要素。
そう思ってページをめくる。
「ペラペラペラペラ……」
かんなの目に止まったのは、こんな一文。
「いつも地味な服だけど……可愛い服を着てみたい! でも恥ずかしい……そんな人におすすめ!」
ブラックのワンピースに紫を合わせるコーデ。
白と青の爽やか系には、花柄を取り入れると可愛さアップ。
夏なら、リボン付きの麦わら帽子がベスト――。
(こんな服、持ってないけど……お母さんに頼めば……!)
かんなは、帰ったらお願いすることをメモに書いた。
その頃、りゅうとは――
(かんな、可愛すぎて本に集中できねぇ……)
読んでいるのはファンタジー系の小説。
異世界に転移した高校一年生が、ゲーマーとして世界を攻略していく物語。
でも、まったく頭に入ってこない。
隣にかんながいるから。
昨日のゲームの出来事が、まだ心に残っているから。
その時だった。
かんなが疲れて、足を横に伸ばした。
それが――りゅうとの足に触れた。
「……!!!!!!!!!!!!」
「!?!?!?!?!?!?!?」
二人とも、顔が真っ赤。
「……ごめん……」
かんなは本で顔を隠しながら謝る。
りゅうとは照れながらも答えた。
「許してやるよ……」
「……いいの……?」
りゅうとは、よく男友達と喧嘩をする。
女子でも、ムカつけば容赦なくぶつかることもある。
それなのに、なぜ女子から人気なのかは謎。
でも、殴られた子は「りゅうと君と友達になれた!」と喜ぶらしい。
なのに――私には、殴らない?
「他の人は……殴るのに?」
かんなが尋ねると、りゅうとはさらに顔を赤くしながら答えた。
「こ……こんな……」
「こんな……?」
「こんな……可愛い子……俺が……殴れるかよ……」
震える声だったけれど、確かにそう言った。
「それって……」
その瞬間、チャイムが鳴った。
「キーンコーンカーンコーン……」
「これで授業を終わります!」
先生の声に合わせて、みんなは教室へと戻っていく。
あとはただ帰るだけなのに――
ここで、また新たな事件が起ころうとしていた。
無理




