かんなの朝と、少しの勇気
無理
かんなの朝と、少しの勇気
「かんなたち、いなくなって寂しいクロ……」
クロはテントの中でお留守番をしていた。
かんなたちがゲームに入ってこない時間分の食料は、ちゃんと置いていってくれた。
だから生活には困らない。
でも――誰もいない空間は、やっぱり寂しい。
……クロはお喋りが大好きだし……。
「……かんなたち、早く帰ってきてくれるクロかな……」
クロはずっと起きていたが、とうとう疲れ果てて眠ってしまった。
---
その頃、現実世界のかんなは――
「こら! いつまでゲームしてるの!? 宿題は!?!?」
「その……」
「言い訳は無用! さっさと宿題しちゃいなさい!」
「はい……」
お母さんは、クロがゲームの中にいることを知らない。
でも、今の機嫌では話しても信じてもらえそうにない。
これは、しばらく言えそうにないな……。
かんなは宿題に取りかかった。
今日は作文もあったので、適当に今日の出来事を書いて済ませた。
30分もかからずに終わり、お風呂に入って夜ごはんを食べた。
そういえば――クロが言ってたっけ。
「明日、学校に可愛い服で行ってみろ」って。
(……絶対やめとくけど)
そう思いながら、かんなは眠りについた。
---
――朝5時。
かんなはいつもよりずっと早く目を覚ました。
普段は7時に起きるのに、今日はなぜか目が冴えていた。
学校に出発するのは7時45分頃。
まだ時間はあるけど、かんなは食パンを焼いて食べた。
横を見ても、クロはいない。
やっぱり、ゲームの中に残っているんだ。
そして、かんなは学校の準備を始めた。
「どうしよう……」
クロの言葉通り、可愛い服で行ってみるか。
それとも、いつも通り地味な服で行くか。
「もちろん地味だよね……」
そう思って手を伸ばした先にあったのは――可愛いワンピース。
「!?!?!?!?」
自分でも驚いた。
(私……これ、着たいって思ってるのかも)
まだ時間があるので、試しに着てみることにした。
意外と――似合ってしまった。
長めのタイツも履いてみる。
鏡の中の自分は、思った以上にしっくりきていた。
でも……恥ずかしい!
悩んだ末、かんなはお母さんに相談することにした。
「それ、全然着てくれないから勿体ないと思ってたの! それ着て行きな!」
お母さんの後押しもあり、かんなは決心した。
髪型も、今日は変えてみる。
青と白のワンピースに合わせて、ポニーテールにしてみた。
マスクは給食用に持っていき、顔はそのまま。
ランドセルと水筒を持って、学校へ向かった。
まだ時間が早いので、他の小学生は見当たらない。
でも、通勤中の大人たちは多く歩いている。
その中の何人かが、かんなの方を見て、何かを話していた。
「なぁ、あの子さ……」
無理




