よしよしの余韻と、心の告白
無理
よしよしの余韻と、心の告白
「よ……」
りゅうとは顔を真っ赤にしながら、片目でかんなを見つめて言った。
「よ……よしよし……やって……くれ……」
震える声だった。
かんなは一瞬、放心状態。
(え……褒めてほしいってこと? めっちゃ可愛いじゃん)
「……」
「……やれよ……」
りゅうとはさらに顔を赤くしながら、ぽつりと言う。
「スッスッスッ……」
かんなはそっと、りゅうとの頭を撫でた。
その瞬間、りゅうとはビクッとしながらも、嬉しそうな表情を浮かべる。
かんなの顔も、真っ赤になっていた。
それを見たクロは、心の中で思った。
(恋、進展中クロ……)
その時、りゅうとは自分が「よしよしして」と言ったことを思い出し、慌てて言った。
「あ! さっきのよしよししては違うんだ……!」
でも、かんなは撫でる手を止めない。
「っ!!!!!!!!」
(またお母さんって言いそうだ……)
「ありがと……」
りゅうとは顔を真っ赤にしたまま、そっとテントへ戻っていった。
「どういたしまして……」
かんなは小さくつぶやいた。
そしてテントの中では――
「よしよし、気持ちよかった……」
りゅうとは小さく呟いた。
あの優しさ、あの温もり。
「大好き」と言いそうになった。
危険すぎる。もう二度とお願いしない……はず。
でも、もう一回だけ……もう一度だけ……。
そんな気持ちが、胸の中でぐるぐると渦巻いていた。
「かんな……大好きだ……付き合ってくれないか……?」
りゅうとはテントの中で、かんなへの告白の練習をしていた。
(でも……あいつは優が好きって噂が……)
嫌だ。俺のかんなを奪うな――そんな気持ちがこみ上げる。
だからこそ、ゲームの中で出会えたことが、すごく嬉しかった。
学校では、俺は人気者だった。
バレンタインには女子から三十個近くチョコをもらった。
でも、その中にかんなはいなかった。
一度だけ、友チョコだと言って渡してくれたことがある。
それでも、すごく嬉しかった。
しかもそれは、かんなの手作り。
いちごチョコで、甘くて美味しくて――
ハートの形をしていた。
そのハートのいちごチョコには、こう書かれていた。
「ずっと友達だよ」
でも、学校ではあまり話すこともなかった。
本当に友達なのか、分からなかった。
それでも、俺は好きだった。
だから、諦めなかった。
何度も話しかけた。
でも――
「ほら、りゅうと人気者でしょ? 違う子と話してきな」
毎回、そう言われた。
嫌われてるのかもしれない。
そう思って、相談室に行って先生に話した。
「かんなさんは、自分を地味だと思っているのよね?」
「うん……俺がそう思うだけだけど……。あいつ、俺が話しかけた最後に私地味だからって言うんだ……」
その時、先生はハッとして言った。
「りゅうとさんは人気者。そんな自分と話しているところを見られたら、りゅうとが嫌われちゃうって思ったんじゃない?」
確かに、そうかもしれない。
俺はゲームも勉強もできて、モテていた。
何度も告白されたけど、全部断った。
かんなが好きだったから。
誰にもこの気持ちは話していない。
知っているのは、相談室の先生だけ。
その時――
「りゅうと……?」
無理




