君って呼ばれて、心がほどけた
無理
君って呼ばれて、心がほどけた
「いや、これは……その……本当に違うんだ!」
「何が違うの……?」
かんながにやけながら問いかける。
「これは……あくびだ!」
りゅうとは必死に言い訳する。
自分はそんなに泣かない。たぶん、だいたいは。
「でも、今も涙溢れてるよ?」
「っ!!!!!!!!!!」
りゅうとは慌てて手で顔を隠す。
涙を見られたくない。
「違うんだ!」
「りゅうと、可愛すぎクロ……!」
「可愛いですね……」
グランファリーさんにまで可愛いと言われてしまった。
りゅうとの顔は真っ赤に染まる。
「もしかして……恥ずかしいのもあるけど、可愛いって言われて嬉しいから顔赤い説……ある?」
「ち、ちげぇ!!!!!! この涙は悔し涙で……決して悲しくて泣いたわけじゃ……!」
「ふーん……そうなんだ……。りゅうと、意外と……可愛いところあるじゃん……」
「……!!!!!!!!?????????? え……そ、それって……ど、どういう……?」
「さ、さぁね?」
(俺、可愛がられてる……? いや、悪くない……じゃなくて!)
「クロ、お前よしよしするのやめろ! 俺は幼稚園児じゃないんだぞ!」
「別にいいクロじゃん。かんなならOKするくせに……」
「するわけ……ない……だろ……」
「……」
かんなは無言でりゅうとの背後へ回り――
「スッスッスッ……」
優しく、りゅうとの頭を撫でた。
「……っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
頭がパンクしそうだ。
なんだこれ……すごくいい……。
まるで、かんながお母さんみたいな……。
いい匂いもする。撫で方も、あたたかくて、ぽかぽかしていて――
「……よく言ったね、りゅうと……君……」
「っ!!!!!!!!!」
君? 俺、幼稚園児じゃ……。
でも、なぜか否定できない。
なんか……嬉しい。
まるで、本物のお母さんだ。
「……俺は……何もしてないし……」
「そんなことないわよ。あなたは……いいことをした。えらいね……りゅうと君……」
かんなの声は、少し震えていた。
このセリフを言うのは、きっと恥ずかしかったはず。
「ありがとう、お母さん」
「お母さん……? え……え……え……!」
かんなの顔は真っ赤になった。
「りゅうと君、かんなのことお母さんって呼んでたクロよ!」
「かんなさんとりゅうとさんは、すごいカップルですね……。この事を確かラブラブと言いましたっけ……」
その言葉で、りゅうとは自分が言ったことに気づいた。
「かんな、違うんだ! ただ、かんなのよしよしが気持ちよすぎて……あ……」
「……あ、ありがと……」
「……っ!!!!!!!!!!! 本当に違うんだってばーーーー!!!!!!!」
りゅうとの叫び声が、部屋に響き渡った。
無理




