危険の正体は、まだ言えない
無理
危険の正体は、まだ言えない
「危ない!」
その一声で、かんなは反射的に一歩後ろへ下がった。
何かが上から落ちてくる――そんなことはなかった。
「何が危なかったんですか……?」
かんなが尋ねると、グランファリーさんは静かに言った。
「左右を見てください」
かんなが左右を見渡す。
……何もない。空間が広がっているだけ。
「どうしたんですか?」
恐る恐る問いかけると、グランファリーさんは震える声で答えた。
「……危険なんです。とりあえず、真っ直ぐ歩いて、私を助けてくれませんか?」
不安を抱えながらも、かんなは牢獄へとゆっくり向かい、鍵を開けた。
グランファリーさんは青ざめた顔で外へ出てくる。
「本当に……何が危ないんですか?」
「炎です……」
「え?」
もう一度左右を見てみると、焚き火のような炎が灯っていた。
焚き火ができるスペースがあるだけ。
火傷するほどの火力ではない。
燃え移っている様子もない。
(これくらいなら、火傷で済むはず……)
なのに、グランファリーさんは震えている。
寒いのか? いや、寒いなら焚き火はむしろありがたいはず。
意味が分からずにいると、りゅうとがぽつりと呟いた。
「なるほどな……」
どうやら、りゅうとは何かに気づいたらしい。
「ねぇ、何だったの? ねぇ!」
かんなが詰め寄ると、りゅうとはからかうように言った。
「お前バカかよ。ちゃんと考えろ。考えたらすぐ分かる話だから」
「うっさい! 私より算数のテスト成績悪かったくせに言うな!」
「これ算数じゃないしな……」
「と、とにかく……これ何!」
「教えね。俺はお前自身で考えてほしいんだ……その……考えてるかんな……可……可愛いから……」
りゅうとは顔を真っ赤にして言った。
その一言に、かんなも顔を赤く染める。
(嬉しいけど……悔しい! なんで教えてくれないの!?)
でも、りゅうとが「考えてる顔が可愛い」と言ってくれたから……考えるしかない。
(でも、何!?)
グランファリーさんは森の精霊。名前はグランファリー。
何か関係があるはず――。
その時、クロがそっと近づいてきた。
「……かんな、熱でもあるクロ?」
ふわふわの小さな手が、かんなの額に触れる。
「熱……ないクロね……」
(私が天才だとでも思ってるの? いつもバカですよーだ)
でも、飼い主のことは天才って思いたいよね。
私も、もし飼われてる側だったら、そう思いたいかも。
すると、クロが言った。
「かんな……教えてあげてもいいクロけど……」
「教えて!」
かんなが叫ぶと、クロは首を横に振った。
「え……」
問いかけても、クロは何も答えない。
(なんで! 教えてくれるって言ったじゃん。と言うか、クロは家族だし、りゅうとも……その……友達でしょ! 教えてくれてもいいじゃん……)
「炎……危ないです……」
そりゃそうだよね。火傷するもん。
でも、精霊なら火傷くらい平気なはず。
その時――かんなの中で、何かが閃いた。
「もしかして……」
無理




