勝手に青春、でも少しだけ本気
無理
勝手に青春、でも少しだけ本気
意見が分かれてしまった。
かんなには、どちらが正しいのか分からない。
でも――どっちも試せばいいんじゃない?
そう思ったその時――
「りゅうとって本当にダメクロね……! 絶対、図書室の天井クロよ!」
「そんな訳ないだろ!」
「もう知らないクロ!」
「俺も知らない!」
二人が、まさかのケンカに突入してしまった。
「二人とも……お、落ち着いて!」
かんなが慌てて声をかけるも、言い争いは止まらない。
「大体りゅうとって……!」
「大体クロは……!」
(ヤバい……このままだと本当に戦いになっちゃう!)
かんなは必死に止める方法を考える。
そして――ひらめいた!
「クロ、これ! たくさんのおにぎりだよ!」
「え……お、おにぎりクロ!? やったクロ! バクバク……」
(よし……!)
クロの怒りは、見事に沈んだ。
あとは、りゅうとだ。
「おい! お前は何呑気に……!」
りゅうとはまだ暴走中。
でも、止める方法が思いつかない。
一つだけ手はある。けど――恥ずかしい!
(で、でも……し、しょうがない……)
「りゅうと……」
「何だ!」
口調まで荒れている。
「……ご、ご主人様! 怒ったら……せ、せっかくの可愛いお顔が台無しですよ! ……も、萌え萌えキュン!」
(最悪だ……!)
かんなは顔を真っ赤にしながら、心の中で叫んだ。
でも――作戦は成功。
りゅうとの顔も真っ赤になり、無言で頷いた。
(……怒るのやめるって合図……だよね?)
「……あ、ありがと……」
「……うん……」
もう喋りたくない。
恥ずかしすぎて、黒歴史確定。
「そ、その……ごめん……」
「べ、別に……」
穴があったら入りたい。
でも、そこに割り込んできたのはクロ。
「かんな、さっきのセリフもう一回言ってクロ! 萌え萌えキュンって……!」
「む、無理……」
すると、りゅうとまで言い出した。
「お、俺も……も、もう一回……聞きたいな……」
「っ!!!!!! や、やるよ……萌え萌えキュン!」
(本当に何してるの私……)
「か、可愛……じゃなくて……えっと……」
「私だけなんて……恥ずかしいじゃん……りゅうとも……やってみてよ……」
「……無理……」
「じゃあ……かんなお嬢様、お帰りなさいませ。寂しかったんですよ。罰として私のこと、抱きしめてくださいねって言ってクロ!」
「……無理だ……恥ずすぎる……」
すると、クロがりゅうとを見つめて言った。
「かんなだって恥ずかしながらもやってくれたクロよ? 恩を返さないとクロ」
「っ!!!!!!! 行くぞ……か、かんなお嬢様……お帰りなさいませ。さ、寂しかったんですよ……。罰として私のこと……抱きしめて……くださいね」
「っ!!!!!!! ギュッ……お、お約束のギュ。ちゃんとしましたからね……ご主人様」
「……」
「……」
かんなもりゅうとも、無言。
二人とも思っていることは同じ――
(恥ずかしい……)
しかも、りゅうとはかんなに抱きつかれてしまった。
「は? え……さっきの……」
「ち、違います! ご主人様! ご主人様のご命令だったので……!」
「でも……さっき……か、完全に……抱きついた……よな?」
「は、はい……ダメでしたか? 私的には、いくらでも抱きついていられますよ。ご主人様にチュだってできますよ?」
「は……? チュって……キ、キス?」
その時だった。
「勝手に青春? しないでクロ! 早くグランファリーさんを探すクロ!」
「うん……」
「そう……だな……」
結局、りゅうとは図書室の上の階の天井、
クロは図書室の天井、
かんなはどっちも見る係に分かれたのでした。
無理




