表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/212

探偵の目が曇る瞬間

無理

探偵の目が曇る瞬間

「りゅうとさん、これって……まずは玄関の扉が封鎖されているか確かめた方がいいよね? ……いいですよね?」


かんなは少し緊張しながら尋ねた。

今のりゅうとは、なぜか探偵モード。丁寧な口調で話さないと、空気が崩れそうだった。


「そうですね……まずは玄関の扉が封鎖されているか、確認しに行きましょう」


「分かったクロ!」


クロが元気よく走り出す。

だが神殿は広すぎた。迷路のような構造に翻弄され、三十分後――ようやく玄関に到着。


そして、そこにあったのは――封鎖された扉。

頑丈な鉄の檻が二重に張り巡らされていた。


(……これ、簡単には壊せないようにしてある)


グランファリーさんからもらった魔法を使えば、破壊は可能。

でも、そもそも逃げても意味がない。

どうせ後で強制的に別世界に連れて行かれるなら、封鎖する意味は……?


(敵の目的が……分からない)


逃げても、逃げなくても同じ。

その無意味さが、逆に不気味だった。


「これで玄関が封鎖されてることは分かったね」


「次に確かめることは……もうない気がするクロ」


「いや、別世界に繋がるゲートを探すなら、神殿の構造を把握しておいた方がいいかも」


かんなの提案で、神殿の探索が再開された。


お風呂、トイレ、テレビルーム、物置部屋……

一階はすべて見終わった。


「すごかったクロ! でも一番すごいのはキッチンクロね!」


「クロは食べ物にしか興味がないんだね……」


キッチンには、ずらりと食べ物が並んでいた。

今いるのは、何もない部屋。おそらく精霊が泊まるための部屋だろう。

とはいえ、特に目立ったものはない。


「りゅうとさん、怪しいところありましたか?」


「そうですね……特には……ただ、図書室が一番怪しいかと」


「え! 図書室なんてあったクロ!」


どうやらクロは見落としていたようだ。

図書室には、ぎっしりと本が詰まった本棚が並び、ドアには「蔵書十万冊以上」と書かれていた。


(多すぎ……学校にもそんなにないよね)


りゅうとが怪しいと感じた理由は、おそらく隠し部屋。

本棚の裏に隠し扉――よくある話だ。


でも、寝室にも本棚はあったし、テレビルームにも大量に並んでいた。

それなのに、なぜ図書室だけを疑ったのか?


「りゅうとさん、なんで図書室……」


かんなが問いかけようとした、その瞬間――


「お、俺は……一体何を……」


りゅうとの声が、急に震えた。


「り、りゅうとさん……?」


かんなは思わず立ち止まる。

その声は、いつものりゅうとじゃなかった。


神殿の空気が、少しだけ――冷たくなった。

無理

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ