もうこの世界にはいない
無理
もうこの世界にはいない
「も、もう一回やってみるね! 定位封環!」
かんなが再び叫ぶと、小さな魔法のかたまりが左右に少し動いて――
「パッ」
またしても、前と同じように消えてしまった。
「……どういうこと……?」
「俺にもさっぱりだ……」
意味がわからない。
この魔法は、思い浮かべた相手を特定し、その居場所を小さな魔法のかたまりが示してくれるというもの。
たとえ何万キロメートル離れていても、確実に特定できるはず。
迷子を探すための魔法としては、まさに最適なはずなのに――見つからない。
「ね、ねぇ……みんな……なんでだと思う……?」
「そ、そんなこと言われても……わかんねぇよ」
「も、もしかして……あの世に行っちゃったクロ……?」
「そんなわけないでしょ! でも……」
沈黙が落ちる。
もしこの世にいないなら、特定魔法は反応しない。
違う世界にいるということだから。
でも、ミオルドは捕まえた。あの世に行くはずがない。
それなのに、特定魔法が反応しない。
ということは――もうこの世界にはいないということになる。
例えば、私がミオルドのボスに使った夢魔法《紅景奏塔》のようなもの。
あれは夢魔法だけど、寝て見る夢とは違う。
夢が現実になるような、そんな魔法。
その時は、夢の中の別世界に送り込まれる。
でも、私の場合は数分だけ。
グランファリーさんがくれた魔法でも、永遠に閉じ込めることはできないし、そんな魔法を作ることもなぜかできない。
もし転生のように、本当に永遠に別世界へ行ける次元魔法があるなら……。
でも、そんな魔法をグランファリーさんが使えるとは思えない。
いや、精霊だから、もしかしたら……。
仮にグランファリーさんが次元魔法を使えたとしても、なぜクロが違う世界に行ったのかがわからない。
それなら、やっぱり……あの世に……?
いや、そんなはずない……!
でも、もしこのままグランファリーさんに会えなかったら……やっぱり……。
そうかんなが思ったその時――
「かんな、メモがあるクロ!」
クロが叫んだ。
無理




