囚われたグランファリーの決意
無理
囚われたグランファリーの決意
ミオルドの全員は捕まえた。
だから、グランファリーさんが捕まるはずはない。
なのに――姿が見えない。
「クロ、グランファリーさんを最後に見たのは?」
かんなが尋ねると、クロは首をかしげながら答えた。
「確か……かんなが転移魔法でミオルドの所に行って……えっと……その後はいなかったクロかな?」
「りゅうとは?」
「俺は……かんなが飛んでいった後、ミオルドの奴らを見つけて、順番に捕まえていって……」
「うんうん」
「それで三人ぐらい捕まえた後、グランファリーさんと廊下で会った。普通にすれ違っただけだったけど……それ以降は見てない」
かんなは考え込む。
りゅうとは廊下で一度だけ会って、それっきり。
クロは……?
「クロ、私が転移魔法を使った後、どこにいたの?」
クロは少し考えてから答えた。
「うーんと……あ、キッチンにいたクロ!」
「そうなんだ……」
その時、りゅうとが思い出したように言った。
「おい、クロ! お前がやったのか? 俺さ、廊下歩いてる時にキッチンが見えたんだよ。そこにミオルドが倒れてたんだ! 三人ぐらい」
「そうクロけど……それがどうかしたクロ?」
「い、いや……ちょっと……凄いな……と思っただけだし!」
りゅうとの顔が少し赤く染まっていたが、今はそれどころではない。
「りゅうと、グランファリーさんとすれ違った時、どこに行くとか言ってなかった?」
「言ってなかったと思うが……」
かんなたちは沈黙する。
グランファリーさんはどこへ――?
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一方その頃、グランファリーさんは……
「出して下さい!」
グランファリーさんの声が響く。
だが、返ってきたのは冷静な声だった。
「そうですね……あと三十分後ぐらいには出します。すみませんね。私だって、したくてしてる訳じゃありません」
「じゃあなんで! 私はかんなさん達を心配させたくない!」
「おや? そうなのですか? 捕まっているのだから、心配された方がよろしいのでは?」
「そんな訳ないでしょ! かんなさん達に迷惑をかけてしまいます……!」
グランファリーさんの胸の奥には、強い思いが渦巻いていた。
――もう、かんなさん達に迷惑をかけたくない。
あの時、もうダメだと思った瞬間。
かんなさん達が助けてくれた。
もし、あの時助けられていなかったら、私はもうこの世にいない。
かんなさん達は、命の恩人。
だからこそ、今度は私が助ける番だと決めた。
なのに、また捕まってしまった。
こんなんじゃ、精霊としての誇りも持てない。
(こんなことで、また迷惑をかけるわけにはいかない……)
落ち込んでいる場合じゃない。
助けられないなら、自分で自分を助ける。
それが、精霊としての責任。
(早く……この奇妙な世界から抜け出さないと!)
無理




