ぬいぐるみクロ、ログインしました。戦闘力は……ゼロ?
ポテクロkaです!
よろしくお願いします。
今回からぬいぐるみゲーマーというお話は書いていこうと思います。
まずは題名を決めるのは大変でしたけどみんなに興味を引かれるように書いたつもりです。
こちらが一話です。
ご覧ください。
私のお気に入りのしば犬のぬいぐるみ「クロ」はVRゲームに転生していた!?
ある日、かんながいつものようにVRゲームにログインすると、ありえない存在がいた。
それは、ふわふわで愛らしい彼女の黒柴のぬいぐるみ「クロ」。
ゲームのバーチャルな光と影に包まれながら、クロは小さな手を動かし、不安げに辺りを見回している。
光の粒が舞い上がる草の中に、ぽつんと立つぬいぐるみ――ふわふわの黒柴。
風も音も、そこだけ止まったように感じられた。
クロは動かず、ただ静かに、世界の中心にいるように佇んでいた。
「ここ……どこクロ?」
か細い声には、不安と少しの期待が混じっていた。
クロはきょろきょろと周囲を見渡していたが、ふと、かんなの存在に気づいた。
ふわふわの体を揺らしながら、嬉しそうに駆け寄ってくる。
「もしかして……かんなクロ?」
クロの目が輝いた。
「そうだよ、クロ!」
かんなは驚きながらも微笑んだ。
しかし、心の中では戸惑っていた。
――現実とゲームが交差する奇妙な世界で、二人は再会した。
「……でも、なんでクロがゲームの中にいるの?アップデート?夢?」
かんなが混乱しながら言うと、クロはふわふわの耳を動かしながら答えた。
「え? クロはかんなのぬいぐるみクロよ? 気づいたらここにいたクロ」
「え、じゃあここからどうやって出るの?」
「それも分からないクロ」
そう、クロが答えたその瞬間、背後の茂みからガサガサという音が聞こえた。
かんなの背筋がゾクリとする。
空気が急に重くなり、肌に冷たい圧がまとわりつく。
背筋にじわりと冷気が這い上がり、見えない何かが背後に忍び寄ってくるような気配がした。
「クロ! 後ろ!!」
クロは一瞬固まった。
「え、何クロ?」
とゆっくり振り向いた。
――そこには、ゴブリンがいた。
かんなは即座に呪文を唱える。
「ウォーターグラウンド!」
かんなが叫ぶと、足元の魔法陣が青く輝き、空気が震える。
地面が低く唸り、空気がわずかに震えた。
遠くから、波の音がゆっくりと近づいてくる。
それは、世界の鼓動が一拍ずつ重くなっていくような音だった。
そして――ドォンッ。
次の瞬間、水の大波が駆けるようにゴブリンへ向かって押し寄せる。
その波は冷気を帯び、ところどころに氷の粒が跳ねている。
ゴブリンは逃げる間もなく、意味不明な叫びをあげながら波に飲み込まれた。
冷たい水が全身を包み、氷の霧が巻きつく――
「ギャァァアア……!」
という最後の絶叫とともに、ゴブリンは凍てついたまま動かなくなる。
残ったのは……倒れたゴブリンだけだった。
冷たい空気が澄み渡り、地面には氷の粒がきらめいていた。
風が通り抜けると、葉の隙間から柔らかな光が差し込み、世界が静かに息をしているようだった。
クロは、倒れたモンスターをじっと見つめた。
ゴブリンが凍りついたあと、クロがぽつりと言った。
「……あれ、アイスクリームになったクロ? チョコミント味クロ?」
かんなは一瞬絶句してから、
「違うよ! 敵だよ! 美味しくないよ!」
そしてかんなは眉をひそめて辺りを見回す。
「クロ……まずいことになった」
「何がまずいクロ?」
「ここには私たちを攻撃してくるモンスターがいる。弱いのもいれば、強いのもいるんだ?さっきのもゴブリンっていう、モンスター」
クロは耳をピクピクさせながら考える。
「じゃあ、なんでクロはそのゴキブリとか言うやつに襲われなかったクロ? もしかしてゲームの神様が助けてくれたクロ!」
かんなは思わずため息をついた。
「違うよ、クロ。助けたのは神様じゃなくて私。あとゴキブリじゃなくてゴブリンね。こんな人型の大きなゴキブリいたら怖いよ」
クロはポンと手を打った。
「ああ、ゴブリン……人型の大きなゴキブリじゃなくてよかったクロ!」
かんなは心の中で(どっちもイヤだよ)と思いながらも、それ以上ツッコむのはやめた。
「クロって戦えるの? レベルはいくつ?」
クロは胸を張り、ふわふわの体をぐっと反らせた。
「クロは世界一強いクロ!」
かんなは冷静に考えた。
(……いや、クロって最強どころか最弱では?)
周囲の草原には風が吹き抜け、遠くで鳥の鳴き声が響いていた。
「じゃあ、私に向かって攻撃してみてよ」
クロは一瞬不安そうに揺れた。
「断るクロ! だってクロが強すぎてかんなが死んじゃうクロ!」
かんなは慌てて説明した。
「いやいや、ここはゲームだから、死んでも生き返れるよ」
クロはホッとしたように息をつく。
「それなら……しょうがないクロね。かんな、準備はいいクロ?」
「もちろん!」
クロはカウントダウンを始める。
「3、2、1……いけ!クロのスーパーキック!!」
ぽふっ。
かんなの顎に軽くめり込んだのは、クロのふわふわの肉球だった。 まるでマシュマロがめり込んだようだ。
「……え?」
クロは首をかしげる。
「あれ? おかしいクロね。クロのキックは最強のはずなのに、なんでかんなはぶっ飛ばないクロ?」
かんなは苦笑いしながら言う。
「クロ、もしかして……最強じゃなくて最弱じゃない?」
クロは慌てながら
「そんなことないクロ! クロはぬいぐるみ界では最強クロ!」
と主張する。
「ぬいぐるみ界では最強? でもぬいぐるみって動かないじゃん、クロだって現実では動かなかったし……」
「ふっふん! クロは特別なぬいぐるみだからぬいぐるみ界にいけたクロよ!」
「さっきからぬいぐるみ界、ぬいぐるみ界って言ってるけど……私、ぬいぐるみ界なんて聞いた事ないよ?」
そうかんなが言うと、クロは目を見開かして
「そうだったクロ!? あんなにいい所クロのに……」
「どんな所なの?」
かんなが聞くと
「店があって家もあって……一番人気のカフェには、クロもよく行ってたクロ!」
「そうなんだ……あ、そう言えばぬいぐるみの家ってどれぐらいなの?」
かんなが聞く。
でもこんなゆったりクロの話を聞いている暇もない。
今は、一刻でも早く安全な場所に移動した方がいい。
するとクロが
「えーと……これぐらいクロ」
クロが指したのはかんなの半分ぐらいの身長のお家。
かんなは心の中で思った。
(ちっちゃ)
するとクロがその心をよんだのか
「ちっちゃくないもん……クロだって広いと思ってるクロ……」
クロはふわふわの体をぎゅっと縮めて、かんなから少しだけ顔を背けた。
その仕草が、かんなには「もっとかまってほしい」のサインに見えた。
でもとにかく言いたいことがある。それは……
「ぬいぐるみ界って……ゲームの世界とは違うよね」
するとクロは調子を取り戻しふわふわで無邪気なクロに戻った。
「むむむ……つまりクロはもっと強くならなきゃダメクロね!」
クロはかんなの顔を見上げて、ふわふわの耳をぴくりと動かした。
その瞳には、疑うことを知らないまっすぐな光が宿っていた。
かんなはニッコリ微笑んだ。
「その通り! じゃあ、一緒に訓練しよう!」
かんなは笑いながらも、心の奥で決意していた。
(ぬいぐるみが動いてる。それだけでも、世界が少しずれて見えるのに――クロは、私を信じて疑わない。
この世界で、クロを守れるのは私しかいない。
ぬいぐるみでも、大事な家族。
たとえこの世界がどんなに危険でも、クロだけは絶対に見捨てない。私が守る。何があっても。何度でも。)
かんなの決意に呼応するように、空の雲がゆっくり流れ、光が差し込んだ。
クロは元気よく飛び跳ねた。嬉しさが全身から溢れ出すように、ふわふわの体が弾む。
足元の柔らかな苔がふわりと沈み、舞い上がる光の粒が、まるでクロの喜びを祝福しているようだった。
クロは元気よく飛び跳ねた。
「やるクロ! かんな、手伝ってクロ!」
かんなはクロを見て、微笑んだ。
こうして、クロの修行が始まる……。
果たして、最強のぬいぐるみは本当に強くなれるのか!?
「元々最弱のぬいぐるみです!」
「いや、クロは最強のぬいぐるみクロ!」
「……レベル1からだけどね」
するとクロが間を開けて
「クロは世界一強いクロ! しかもクロはすごいクロ!」
「すごいって……何したの?」
「カフェのクッション席を一番に取ったクロ!」
「すごいって……それ、ただの早起きじゃん……いや、クッション席って何!?……でも、そんなことを誇らしげに言えるクロが、ちょっと羨ましい」
「……しかも三日連続クロ。ぬいぐるみ界では……クッションマスターって呼ばれてるクロ」
(……そんな称号、聞いたことないけど)
「なんと、クロの家は、風の音で目覚ましが鳴るクロ!」
おまけ クロの家
どうやらクロの家は小枝で組まれた屋根には、花びらの飾りがついていて、風が吹くたびにふわりと舞い上がり、まるで隠れ家のようだったらしい。
そして家の周囲には小さな花畑が広がり、風に揺れるたびに甘い香りが漂って来るらしい。
木の枝にはリボンのような布が結ばれていて、まるでぬいぐるみたちの手作り装飾のようだったらしい。
どうでしたか?
もしかしたらクロのパンチが最強と聞いてもしかしたら本当かもと思ったかもしれませんが違いました。
本当はとても弱いのでした。
まあぬいぐるみなので当たり前かな?
もし評価と感想頂けると嬉しいです。
もしよかったら修正点も教えてくださいね。
私、読んでくれているみなさんがどんなところがダメっていうのかわからないですから。
よろしくお願い致します。




