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ちょっと傷ついた

休み時間も終わる頃、2人で教室に戻るために廊下を歩いていた。すると奥からすごいスピードで走ってくる小さな人影が見える。その人物は月の目の前まで来て、そのままの勢いで抱きついてきた。遠心力でグルグルも回った末、ゆっくりと止まり、月から離れる。


「やほやほやっぴー、るなちじゃん!今日はどこいってたんだ〜?クラスが離れてからというものご飯タイムは貴重なコミュタイムなのに!」


「ごめんって恋奈!……ってかそう、今日!!聞いて!」


月は恋奈が膨らませた頬をつついた。その時の月の顔が母親に何かを自慢する直前の子供のようで、恋奈は口いっぱいに溜めた空気をぽっと吐き出す。てけてけとドラムロールのように呪文を唱える月は後ろに何かを隠しているようだ。(今度は虫じゃないといいな…)恋奈は心の中で祈る。


「デデーン!クアムです!」


くるっと一回転して月が左にズレると、月の後ろに隠れていたクアムが驚いた顔でそこに立っている。恋奈は少し放心して固まったがすぐに叫んだ、


「うぇ!人!??」


「そだよ〜失礼な反応じゃぞ〜?」


恋奈はデコピンを食らい、赤くなったおでこを両手で押さえた。虫では無かったことに安堵してほっと一息つくと月が意気揚々と言う。


「そんでクアム!このちっちゃいのは麗句(れいく) 恋奈(こいな)、アタシの友達!恋奈、ほら顔上げて、こっちはクアム。転校初日だから仲良くしたげて!」


痛みで疼く待っていた恋奈は顔を上げた


「あ〜もう…ルナち、いっつも唐突なんだ……から………」


「えト、トリーシャ・クアムです。よろしク…」


「っえ?………黒っ……」


冷笑というのだろうか、引かれたということなのだろうか、恋奈の表情は引きつっていた


そんなの、クアムがいい思いをする訳がなかった。


「…恋奈、なんか嫌な感じじゃない?いっつもアタシのこと褒めてくれるじゃん。いっつもいいなって、恋奈も同じになりたいって…っ」


月はなるべくいつものように、明るく話したつもりが語気には少し怒りが含まれていた。ただそれ以上に、月は隠しきれない悲しみを抱いていた。


「っぁ…!ごめん……ルナち、その…嫌な思いさせたかった訳じゃなくて……恋奈、嫌な態度取っちゃったよね、ごめん。」



「クアムん、ほんとごめん。嫌かもしれないけど、恋奈、仲良くなりたくて……」


恋奈は制服の裾をぎゅっと握って俯いた。一連の流れにクアムはいつしかの自分の姿を重ね、一瞬呼吸を忘れた。だからこそ、だろうか、クアムは恋奈を許したかった、あの日の自分を孤独から解放したかった。


でも────


「こいな、わたしチョっと、傷ついタ」


恋奈は更に俯いた。クアムから恋奈の顔は見えない。きっと暗い顔をしている。クアムは更に続ける。


「デも、わたし、こいなと仲良くないたイ」


その瞬間、恋奈はばっと顔を上げクアムに抱きつく。


「ありがと!クアムん!恋奈嬉しい!!」


「クアムはもう恋奈のともだっちだからね!明日からは一緒にご飯を食べます!!ルナちも!絶対だからね!!」


恋奈はクアムから離れて、ビシッと指さしながら満面の笑みでそう言った。

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