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一緒だとモっとおいしい

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午前の授業が終わり、昼食の時間を告げるチャイムが鳴った。クアムは授業自体が久しぶりで、意識するまもなくこの時間が来た。それに対し、(るな)はずっとこの時間だけを待ちわびていた。いつもなら友達と駄弁るだけの時間だが、今日は違う。休み時間、クアムが授業の説明やらクラスメイトの質問攻めやらに合いほとんど会話できてなかったからだ。


やっとゆっくり話せる時間が確保されたのだ、今だけは誰にも邪魔させない。月は椅子を引いて立ち上がり、クアムの肩を掴んで言った。


「ク〜ア厶っ!!ご飯!一緒に食べよ!」


クアムは頬を赤らめて、目を輝かせた。一生懸命首を縦にうんうんと降っている。


よし!と言って月がクアムの手を掴むと階段へ駆け出す。普段は封鎖されてる4階まで駆け登り、ある教室に飛び込んだ。そしてクアムに振り返った月が両手を広げて意気揚々と言った。


「じゃーん!見てこれ!!アタシの秘密基地!」


クアムの目に映ったのはもうずっと使われていなさそうな教室だった。レースのような綺麗な布で飾られていながら、他は少し埃っぽい。少し大きめな窓が1つ、机と椅子は端に避けられていて使われている形跡はない。


「すごい…すごい……ルーナ、ホんとすごい!」


「すごいでしょーってルーナ?…んー……あっ(るな)、私の名前!覚えてくれたんだ!!えへへっ…ありがと、クアム」


「うん、ありガと。ルーナ」


フワッと笑ったクアムを見て、アタシは柄にもなく照れてしまった。こんなに素直に応えてくれる人には出会ったことがない気がする。別に捻くれている人ばっかって訳じゃないけど、クアムだけはどうにも可愛く見えてしまう。


「よっし、おべんと食べよ!見てこれ、私が作ったタコさんウインナー」


月は熱をもってきた顔を見られないためにクアムの視線をお弁当に集中させる。すごく軽く、クアムにバレないように深呼吸してからにっと笑う。


「ね、これ1個あげる。だからクアムのおべんと見たいなー…ねねっ、みーせてっ!」


「うん、みせたい」


そう言ってクアムがお弁当の蓋ぱかっと開けると月があははっと笑う。


「もー!ラインナップほぼ一緒じゃん。これ、お母さんが作ってくれたの?」


「そウ、でも、るーなのお弁当モおいしそう。だから、たこさん、クださい?」


クアムの言葉はどこかカタコトだけど、精一杯伝えてくれてるのがわかった。慣れない日本語で、いっぱいいっぱい喋ってくれた。ちょっとした返答も大変そうなのに、頑張って言葉を出してくれた。


「めっちゃあげる!クアム大好き!!…マジあげ!」


「ウん、まじあげ」


少しの沈黙のあと、2人は顔を見合せて笑った。

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