1-1 黒い雪
西暦2019年12月25日0時00分(24日と25日の間)
異変が起きた。
雪が降ったのだ。
雪が降る事もあるが、それは様子が変だった。
暗闇の中、街灯に照らされたそれは光を反射せず、気付けば自分の常識は180°回っていた。
それは黒い雪だった───
この雪は世界中で降っていたと朝のニュースで知った。
てっきりこんなことが起きたのだから大混乱になるのかと思って心の準備をしていたが案の定この様だ。
眠たい…全然眠れなかった…
大混乱だったのは自分だった…
あのあとベッドに入って色々考えていた。
何故自分は雪だと思ったのか、手に落ちた雪が一瞬完璧な雪の結晶に見えたから。
驚きなのはこの後、結晶が溶けて黒い水になるかと思えば砕けて跡形もなく消えた。
そう、本当になにも残らなかったのだ。
でも触れたら冷たく感じたので雪だと思っていた。
あの雪は積もらず落下途中で消えたりして、空気もなにか違った気がした。
街灯を後ろにポロポロと降るその雪は見たことないくらい不気味だった。
そんなものに少しでも触れたくないので、クリスマス会の帰りそそくさとベットに向けて気持ち早く歩いた。(なんで零時まで出歩いてたって?友達を家まで送ってった事もあるけど、年に一度のクリスマスイブにサンタの恩恵をもう受けられない三人が自分でプレゼントを買ったり夜遅くまでファミレスでだべったりしたっていいだろ!)
昨日、いや、今日の未明そんな事を考えてた、
と、朝ごはんを食べながらそんな事をつらつらと考えていた。
私の名前は加山慶理、18歳、高校三年生、男、友達は二人、二人とも夜遅くまで付き合ってくれる親友だ。
友人二人は付き合っていて、よく三人か自分の妹を入れた四人で遊んでいた。
(よく彼氏彼女が居るのに遊びに誘って来たな…)
朝ごはんが終わり学校へ行く準備も済んで玄関に着くと、
慶理「いってきまーす」
「いってらっしゃーい」
母さんが言ったと思えば妹が後ろで返してきた。
私が振り向くと、妹は階段を降りる足を止め、顔に何か付いてるのかとまさぐるも、何も無く、顔に「?」を浮かばせていた。
改めて思う、「ちっちゃ」、不意に言ってしまった事に後悔する間もなく、腹パンを食らう前に学校いこう、と妹の腹パンを食らいながら思った。
加山野乃、私の妹、17歳、不登校気味、高2にもなって身長136㎝、ちなみに私は154㎝、何気に人の事言えない。
ただ身長が低いと野乃がちっちゃくて可愛い、そんな妹になんて事を言ってしまったんだとお腹を擦りながら悔やんで歩いていたら学校に着いた。
「おはようございまーす」
「はい、おはよう、妹は今日も休みか」
校門前で先生に挨拶するといつもこの話しになるので、だんだん挨拶が億劫になってきている。
先生「家では元気にしてるか?」
慶理「はい、そりゃもう元気いっぱいです」
先生「そうか、ならいいんだ、担任から話しがあると思うから早く自分のクラスに行きなさい」
いつもは不登校はダメだの悪いだの言ってくるのに今日は随分と素っ気ない。
むしろ心配しているまである。
不登校のドキュメンタリーでも観たのだろうか。
校門を過ぎると清掃員が掃除していた。
変な臭いがしたので生ゴミでも燃えたのかと思って深く考えず、靴を履き替えて自分のクラスに向かっていった。
教室に入ると何故か空気が重く感じた。
二人いる友達の一人 蓮の席の側まで寄って聞いた、
「どうした?なんかあった?」
蓮がぼろぼろ泣きながら縋るようにこっちを見て言った、
「納谷が…死ん…じゃった…」
────え?
声が出なかった。
納谷は私の二人目の友達だ。
昨日だってクリスマス会で3人一緒にいた。
何で?どうして?頭の中で思っても言えなかった。
しばらくして蓮が納谷のことを喋ろうとしたが、担任の先生が蓮を宥めて自分を廊下に連れ出して説明してくれた。
自分でもどうやって先生の話しを頭に入れたのか分からないくらい頭が真っ白で、
ただただ廊下が冷たかった。