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第17話 悪役令嬢と農場

「さぁ!いざ農業よ!」

「お嬢様って農業家ではなく貴族令嬢でございましたよね……?」


 奴隷解放をお父様が宣言した際、領内は一時大混乱に陥ることになった。これまでただ同然で使役してきた人々に賃金を払わなければならないのだ。それは混乱するだろう。

 大農家については私の税金から出た補助金のおかげか、意外なことに農奴をそのまま雇われ農家として雇用したところが多かった。待遇については大幅に改善されたので以前のように若くして亡くなる人は少なくなると思う。

 

 それらの周知という名の脅しには魔道具店を脅していたチンピラ二人を使ったが、それが意外と効果を発揮した。

 借金取りで私の買いたかった魔道具を壊したからぶっ飛ばした二人だけれど、悪役令嬢的には脅しや脅迫の腕については及第点をあげてもいいと思う。腕っぷしの方は私に負ける程度だけれどね。

 

 一方、奴隷商人については完全に没落した。

 最初は新しいデズモンド領の施策に反対していたが、それでも国内最強と言われるデズモンド領軍に逆らうことは出来ず、二束三文の保証金を渡されてしぶしぶ領内から去ることになった。

 今後、領内に奴隷を持ち込みことは出来ても売ることは出来ないし、奴隷を領内からよそに異動させることもできない。つまり、奴隷を持ち込んだ時点で奴隷は解放されてしまうのでおそらくもうデズモンド領で商売することはないだろう。


 一方、中小規模のところでは奴隷をクビにして規模を縮小するところや廃業するところもあった。行き場を失った農奴たちは私がスカウトすることになる。


 そして今私がいるのはマナブレアの森の近く、傭兵団の拠点からも近く広い野原の中だ。いや、元野原といったほうが正しいかもしれない。

 目の前には見渡す限りの畑が広がっており、盛り上がった畝が規則正しく列をなしているのは見ていて気持ちがいい。


 これは我がメアリ一家の農場である。

 地主から解雇された農奴やスラムの人々、要するに仕事がなくて暇な人たちをすべて私は雇い入れて畑を作ったのだ。お給料は最低賃金よりずっと高い金額を払っているのでたくさん人が集まって私的には満足である。

 もちろん私も一緒に鍬を振って種をまいた。サラも最初は嫌がっていたけれど今は一緒に泥だらけになった仲間だ。

 

「あそこにはトマトを植えたし、あそこの先はずっと小麦畑になる予定なのよ」

「こんなに野菜を作ってどうするのですか?売る先はあるのですか?」

「はぁ?売るわけないじゃない」

「……え?」

「だから売らないわよ。野菜」

「売らないのに何で作るのですか?阿呆なのですか?」

「私が自分で料理にするのに使うに決まってるじゃない。そのためにわざわざ領内にあまり出回っていない野菜も植えたのよ。まぁ従業員が自分で料理するために欲しいって言うなら譲ってあげなくもないけど、よそに売るつもりなんて全くないわ」

「そんなにたくさんの野菜を保存はどうされるのですか」

「私の保存魔法『大口』に全部収納しておくわよ。それで沢山料理の練習をするの。もちろん余った料理もみんな収納しておくわ。だってあと10年もしないうちにこの国ではレボシューションが起こるのよ。そのためにも保存食をたくさん作っておこうとも思ってるのよ。それに野菜が出来たら酪農も始めたいわね。牛豚鳥を育てるための飼料になる野菜も育ててるのよ」

「……その将来のレボリューションのための野菜の苗がカラスについばまれているのですがよろしいのですか?」


 サラが指さす先を見ると先日植えたばかりの苗をカラスが咥えて振り回していた。


「あーー!私の野菜に何するのよ!」


(斬り裂け!!)


 私の想いが魔法として発動する。私の手の先から飛び出した不可視の斬撃がカラスの首を斬り飛ばした。


「お嬢様?今のは?」

「私の新しい魔法よ。風の魔法なんだけど空気を送るだけじゃなくて風の刃で相手を切り裂くことができるようになったわ。料理している時に換気扇を見ていて思いついたの。この魔法『換気閃』っていう名前にするのはどうかしら?」

「普通にウインドカッターとかでよろしいのではないですか?控えめに言ってお嬢様のネーミングセンスは壊滅的でございます」


 そうかしら?でも確かにウインドカッターでいいかもしれない。シンプルイズベストだ。


「それよりお嬢様、他の畑にもカラスがたくさん集まっておりますがよろしいのですか?」

「いいわけないでしょ!いくわよ!ウインドカッター!」


 こうして私は畑を回り、カラスを殺して回った。幸いなことにデズモンド領には鳥獣保護法なんてないし、動物の保護団体なんてものも存在しない。もし存在してもそんなもの私は知ったことないけどね!


「火よ!燃え上れ!」


 そして私は集めたカラスの死体を魔法で燃やしている。別に料理しているわけじゃない。そのまま置いておくと不衛生だし、骨まで灰にすれば肥料にもなるし、植物に撒けば虫よけにもなる。カラスよ、骨まで利用してあげるから安らかに眠るがいいわ。


 しかし、次の日───


「私の畑がーーーーーーーー!!」


 翌朝私が見たのはさらに荒らされまくった畑だった。


「マナブレアの森が近いからでしょうか。カラスが多いですね。カラスは頭が良いと申しますし、学習してお嬢様のおられない夜中に荒らしたのですね」

「おのれカラスめ……。サラ、今夜はここで泊まるわよ」

「ここって……畑で……でございますか?」

「この私、メアリ・アン・デズモンドの夢を阻む者は絶対に許さないわ!」





 そしてその日の夜中。


「ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!」


 私はカラスを切り裂きまくっていた。それにしても昼間に比べてカラスの数が多いこと多いこと。森の中から次から次へとカラスがやってきている。そして私の大切な野菜の苗を食べている。


「お嬢様の魔法に当たって落ちてくるカラスがまるでゴミのようでございますね」

「ウインドカッター!ウインドカッター!ウインドカッター!カラスなんてみんな肥料にしてやるわ!ウインドカッター!」


 そして昼夜を問わずカラスを殺しまくった結果……。



「あ、カラス。ウインドカッター!そして燃えなさい!」


 私の魔法の熟練度が上がった。

 日課のジョギング中に見かけたカラスを風の魔法で切り裂き、落下してくるカラスが火の魔法で燃え上がると灰になってパサリと地面に落ちる。


「もうすっかりカラス駆除に慣れましたね。お嬢様。もうカラススレイヤーと名乗ってもよろしのではないですか?」

「誰がカラススレイヤーよ」


 こうしてカラスが私の畑を荒らすことはなくなった。たまに出くわすカラスは私を見ると逃げようとするが、もはや慣れた私は落下する前にカラスを肥料にすることが出来るまでになっていた。


「サラ、野菜が出来るのが楽しみね」


 今日もデズモンド領は平和だ。


お読みいただきありがとうございます。

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