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閑話 とある毒舌メイドの独白①

 お嬢様が料理を始められて1か月。お嬢様は毎日の日課をこなしながら料理をし続けている。


 日課も料理も公爵家のお嬢様がやるようなものではないのでしょうけど、お嬢様は規格外なので特に違和感も何もない。


 お嬢様が初めて作った『ちゃーはん』なる料理を食べさせていただいたが、本当に美味しかった。きっとお嬢様が前世で料理人だったという話は本当なのでしょう。


 ですが、私はそれをお嬢様に伝えることなく毒舌メイドに徹します。それがお嬢様の望まれることなのですから。





「いただきます」


 今日も私は一人、館の使用人用の食堂でお昼ご飯を食べております。この館には使用人が多く、それぞれの仕事があるため全員が一度に食事をすることは難しい。そのためこうして交代で食事に来ることになっておりました。


 食堂のテーブルには大きな鍋がいくつも並んでおり、そこから各自が皿に取り分けて食べるビュッフェ形式になっております。ここに料理は当然この館の料理人たちによるもので、とても美味しいため使用人たちからの人気も高いですね。


 ですが、私はそれらの鍋に手を伸ばすことはありません。なぜならお嬢様の作った料理をあれから毎日いただいているからです。


「おい、サラ。それは俺の料理じゃねえな。なんでこの屋敷の人間が俺じゃねえやつの作った料理を食ってるんだ」

「これはお嬢様の作った試作料理です。あなたには差し上げませんよ?」


 私が昼食を食べていると料理長のアレクシスが現れた。おそらく遅い昼食を食べに来たのだろうが、私は気にせずお嬢様の作られたものを頬張る。


「おい、その今食ってるものはなんだ?パンに肉と野菜を挟んでいるのか?」

「これはハンバーガーという料理だそうですよ」

「見た感じ貴族の館で食うような料理じゃねえな。そっちは揚げた芋か?」

「フライドポテトというそうです」


 料理長の言うように単純な料理であるし、似たような料理は既にあるのだが、お嬢様はソースに非常にこだわっている。私はこれでも十分に美味しいと思うのですが、どうやらお嬢様はまだ納得いっていないようだった。


「貴族のお嬢が料理なんてなんてなぁ……。この間は料理中に倒れたって言うし……大丈夫なのか?」

「あなたが厨房に入れさせなかったのが原因でしょう。お嬢様に『大嫌い』と言われて崩れ落ちていた料理長様?」

「ぐっ……それ誰に聞いたんだ……。あれは仕方ないだろうが!あんな小さい体で刃物とか竈とか使わせて酷い怪我でもしたらどうすんだ!」

「そんな風に女子供を差別する方がお嬢様はお嫌いだそうですよ。私はお嬢様に好かれておりますけどね。わ・た・く・し・は」

「お嬢に毎日毎日ひでぇこと言ってるやつが何言をいっている。つーか、ちょっと味を見させろ」


 アレクシスはそう言うが早いか、おやつにと言ってお嬢様から渡された厚切りポテトチップスコンソメ味なる料理を数枚奪い取ると口に入れてしまった。この私も驚きの早業である。


「ほー?芋を揚げた料理なんぞ珍しくもないが、これは触感がザクザクしてていいな。味付けは……これは……野菜と鶏肉の出汁(フォン)か?だがこれはこんな風に使うよりはもっと……うお!?何しやがる」

「よくもお嬢様からいただいたものを……。刺されたいのですか?」


 私の渾身の投擲ナイフが鍋の蓋で防がれてしまいました。お館様といい、この料理長と言い、化け物のような人しかいない屋敷ですね、ここは。


「本当に刺そうとすんじゃねえよ、おっかねえ女だな。そっちの料理も味見させろよ」

「あなたに渡すくらいならこうです」


 私は急いで残った料理をすべて平らげることにする。少々はしたないですが仕方がないでしょう。このような野獣に大切なお嬢様の料理をこれ以上渡して貯まるものですか。

 お嬢様は忘れてしまっているかもしれませんが、厨房をお嬢様に使わせなかった恨みは忘れておりません。


「もぐもぐ……ごくんっ。いつかお嬢様があなたの料理を打倒するのですからそれまで首を洗って待っていなさい」

「は?お嬢が?俺に挑んでくるのか?」


 きょとんとしている間抜け面は置いておいてさっさと仕事に戻りましょう。お嬢様は今日も何をするか分かりません。私がいなくてはまた勝手に地面に倒れているのかもしれないのですから。

お読みいただきありがとうございます。

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