開戦 2
イシニス城では、城壁からライディン王太子が城までの道をまっすぐ進んでくるテオドールと騎士団を見た。
王国民はその姿に驚き、家の中に引っ込んでいく。
「っ・・なんだっ・・・あの格好は!!」
あんな鎧も着けずに、裾の長いあんな服で、戦に来たと言うのか?
「なめられたもんだ・・・・。」
ライディン王太子は激怒し、私室から自分の剣を持ちだした。
「あんな女みたいなやつに・・・俺がやられるわけねぇんだ・・・。
クソガキには実力で分からせないとダメみたいだな・・・・。」
城の門では、イシニスの騎士団達が待ち構えていた。
それを見て、テオドールはニヤリと笑う。
「あぁー・・・ご苦労さんだな。イシニスの騎士たちよ。お前らは奇襲には来なかったのか?
お前んとこの新兵たちは、俺の後ろについているぞ?どうやら訓練がお気に召さなかったようだ。」
その問いに、テオドールより一回り以上大きな図体の騎士が前に出た。
「実戦こそ力になるのだ。アレキサンドライトの皇太子。」
「へぇ、お前が指揮官か?」
「左様・・・」
「口の利き方がなってねぇのは、この国特有か?俺は帝国の皇太子だが?」
「宣戦布告をした国の皇太子などに、気遣う事はない。」
「まぁ、それもそうだな。俺も分かり易くて助かる。お前らんとこの新兵は皆可愛い者たちばかりだ。
是非うちで引き取らせてもらう。こんな腐りきった国の兵士にしておくのは可哀想だ。」
「敵国の主に泣き言を言う者など、我が国には必要ない。」
「忠誠する価値もないからではないか?」
その言葉に怒りを露わにした指揮官は大きな大刀を振り上げた。
「ここから先へは行かせん!!」
ブォン!という大きな風が大刀から鳴り響く。
けれど、その大刀を身軽に交わしたテオドールはその指揮官の手首を切り落とし、頭頂部を斬り叩いた。
「ぎゃあぁぁぁっ!!!!!!」
一瞬にして指揮官の身体から血が噴き出る。
指揮官の横を涼しい顔で通り過ぎるテオドール。
「指揮官がこの程度なら、たかが知れているな・・・。王太子はさぞ手応えがあるといいんだが?」
「・・・・・・・・」
あっという間の出来事に、イシニスの兵士たちはテオドールが何をしたかすら見えなかった。
ただ恐れていた指揮官が簡単に破られ、イシニスの騎士団達はテオドールに圧倒されている。
テオドールは、第二騎士団に向かい口を開く。
「指揮官は倒したんだ。後は適当にてめぇらで片付けろ。国民たちを人質に取られてくれるなよ。
あと、サイモン、カール、お前達2人は俺について来い。イーノクとアレックスの座は今はお前達のものだ。
それからロスウェル、お前も、様子を見て俺について来い。」
「サーーーーー!!!」
「やめらんねぇのかよ」
どんどんと突き進むテオドール、城の玄関ホールにも騎士たちが構えている。
「なんだよ。いるじゃねぇか騎士・・・出し惜しみしてたって訳か。」
佇まいが良い騎士たちは城の中にもいた。
「アレキサンドライトの皇太子!!ここから一歩も通すわけにはいかん!!」
「ほぉ?お前はあの指揮官より強いのか?なら楽しみ甲斐があるんだが?」
「その首をもらうまでは死んでも通さん!」
テオドールの目は鋭く吊り上がる。
「では死ね。」
いつもの様に、大きな一歩で相手の間合いに踏み込みその胴を斬りつける。
次々に湧いて出る騎士たちを、テオドールとカールとサイモンが後に続き同じように剣を振るう。
流れるように斬り捨てていくテオドールの力。
それを見る王城の者達は、血しぶきとテオドールの圧倒的戦術に当てられ腰を抜かしていた。
1つ、また1つと階段を上がる度に、出てくる騎士たちを斬っていく。
カールとサイモンがテオドールの前を進み、その道を開けた。
テオドール直々に仕込まれた彼らも、相当な剣の使い手だ。
そして、玉座の間にたどり着く。
扉を開くカールとサイモン。扉が開いた瞬間に、矢が飛んできた。
テオドールはその矢を反射的に避ける。その顔には傷一つ付かなかった。
扉が完全に開かれると、目当ての人物が鎧を身に纏いそこにいる。
「よぉ・・・初めまして。イシニス王国、ライディン王太子殿?結構な重装備だな。そんな装備で大丈夫か?」
「・・・貴様・・・よくここまで来れたな・・・・。」
「あぁ、イシニスは・・・どうやら騎士たちが弱い・・・・。これでは大切な国は守れない。
お遊びに帝国に喧嘩を売るからこうなるんだ。
それに、扉が開くなり矢を撃つなんて、男として・・・恥ずかしくないのか?」
首を傾げてテオドールは、ライディン王太子を挑発した。
「恥は負ける事だ。手段など知った事か‥
強い者だけが勝者。弱い者は死あるのみ‥
テオドール・アレキサンドライト。お前の事だ。」
ライディン王太子は上から見下ろす様にその目を向けた。
「そうか、ではここまで俺を通してしまったお前は弱者だ。
イシニスの王太子。それと、この国の国王はどうしたのだ?
玉座は簡単に座れるものではないはずだが?」
「あんな弱き王など、我が国にはいらん。
私が‥直々にあの世へ送ってやった‥‥。
この国は帝国を飲み込み、イシニス帝国となるのだ。
つまり、俺が皇帝となる‥‥。」
「へぇ‥‥出来るといいなぁ?夢はデカい方がいいだろう。
だが‥夢は寝てから見るものだ。せいぜいあの世で夢でも見てろ?さぁ、俺はどこからでも構わない。
てめぇの夢になんざ、アレキサンドライトは付き合ってらんねーよ。」
「お前は今日!ここで死んでその首を皇帝の足元に蹴り飛ばしてやる!!!」
キィィン!と剣同士が重なる音がした。
テオドールとライディンの剣がぶつかる。
「皇太子よ‥‥お前の剣術はまるで舞う様だと聞いたが、踊ってられる余裕はありそうか?」
力一杯の王太子の剣が、皇太子の刀に圧を掛ける。
その言葉にテオドールは笑みを浮かべていた。
「あぁ‥‥力任せなど‥俺の前では役に立たないぞ‥‥?」
力任せの圧力に刀を震わせもせず、受け止めた。
「ふっ‥‥ならば‥‥剣だけではつまらないな!」
ライディンの足がテオドールの脇腹目掛けて飛んでくる。
「‥‥‥」
刀を翻し、その足を避け後ろに飛び回り後退する。
「はっ‥‥てめぇのそーゆつのをチャンバラごっこって言うんだよ。」
ひらりと交わした涼しげな顔でテオドールは言った。
「誰が剣だけで戦うってんだ‥‥言ったろうが‥
勝った者が強き者だとな‥‥てめぇの踊りなんかに付き合ってらんねーんだよ!!!」
ライディンが一気にテオドールの間合いに入ってくる。
その瞬間にテオドールはニヤリと笑う。
「久しぶりに、戦ってる気がするなぁ!
良かったよ!クソ程弱い奴じゃなくて!!」
上段から真っ直ぐ降りてくる剣先を払い、テオドールの刀はライディンの肩を打った。咄嗟に頭上に下りる刀を避けたのだった。
「へっ‥‥嬉しいな‥‥敵で避けてくれる奴がいるってのは‥
一本取り甲斐がある‥‥」
テオドールは久しぶりの真剣試合に、胸を躍らせていた。
1番いいのを頼んだ方がいい。
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