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前にもあったね

 裏の城門から出て2人は姿を変えた。


 リリィベルの金色の髪は、綺麗な黒髪へと変化した。

「・・・・・・・・・」


 その姿を見て、テオドールは泣きそうなくらい顔を緩めた。



 礼蘭・・・・だな・・・・。



 振り返ったリリィベルは、ポカンとしてテオドールを見た。


「・・・・テオ様・・・・・。」


「あぁ・・・。どうだ・・・?」


 黒髪のテオドールを見て、リリィベルはその小さな唇を開けたまま。


 凝視するその瞳を黙ってみていた。



「・・・・・あ・・・・・」


 口から漏れた先の言葉を、期待してしまう。

 リリィベルの瞳がほのかに滲んで見えた。


「・・・・お義父様・・・みたい・・・・・。」




「・・・そうか・・・・」

 テオドールは少し切なげに笑った。


「この髪は・・・・。」

 自身の髪も一房手に取り驚くリリィベル。

「あぁ・・・魔術師に変えてもらったんだ。元々分かりづらい様にしてもらってるが、

 ほら・・俺達、目立つから・・・。」


「それもそうですね・・・。テオ様が城下に現れたら、大騒ぎになってしまいます。」

「お前も・・・だろ?婚約者?」

「ふふっ・・・はい。」


 2人は手を繋いで、城下まで繋がる裏道を歩いた。


「・・・・・・・・」


 テオドールは自身で言いだしたけれど、思った以上に動揺していた。



 黒髪が靡く度に胸が高鳴っている。


 夢で何度も見ていた。黒髪のリリィ・・・・いや礼蘭・・・・


 どちらとしても、同じ人物・・・・。


 リリィの瞳は濃紺の瞳で、髪を黒くするだけで、そのものだった。




「なぁ・・・リリィ?」

「はい?」


「・・・今日は・・・バレないように・・・・名前を変えないか・・・?」


「あ・・・そうですね。テオ様って・・・呼んでしまったら・・・・。」



「あぁ・・・だから・・・。」



 足を止めて、リリィベルを振り向かせた。



「俺の事は・・・・あき・・・・・」






「あき・・・・・・・。」


 黒髪のリリィベルがそう口にした。



 涙が出そうだ・・・・。



「あぁ・・・あきって・・・呼んで・・・・・。」



「あき・・・・・」

 リリィベルは、真顔で、呟く。




 あき・・・・・



 あき・・・・・




 何故、こんなに泣きたくなるのだろう・・・・。



「・・・・・あきっ・・・・・」

 何度もそう呼びたくなる・・・。


 目の前のテオドールが・・・・泣きそうなのに、嬉しそうだから・・・。

「あき・・・・・」


「・・・・あぁ・・・・。」


「あき・・・・・」


 心が喜んでいる気がした・・・。



 テオドールと向き合い、リリィベルはその手をぎゅっと握りしめた。



「では・・・・私は・・・・?」


 アキは懐かしげに口にした。


「今日は・・・れい・・・と、そう呼ぶ・・・・・。」




「れい・・・・?」


「あぁ・・・・今日のお前は・・・・れいだ。・・・れーい・・・・・?」


 首を少し傾げて、アキはレイを呼んだ。


「れーい・・・・・・れい・・・」


 アキは何度も、レイを呼ぶ・・・・。


 レイは、涙目で笑った。


「なぜだか・・・しっくりするのは・・・何故でしょうね・・・?」



「俺達2人の・・・秘密の名前だよ・・・。レイ・・・・。」


 アキは、レイの手を引いて歩きだした。




 2人の空気は、不思議なものとなり、まるでテオドールとリリィベルという名を

 忘れてしまいそうだった。



 アキは、空を見上げて微笑んだ。


 これは、俺達の愛してるのサイン・・・・。


 あきとれい


 小さな時から、そう呼ぶと、2人で嬉しく思っていた・・・。



 大人になっても、そう呼ぶと、愛が滲んできて止まらなかったんだ。





 城下につながる道。

「さぁ・・・・そろそろ街だぞ、レイ?」

「わぁ・・・・」


 レイは、その賑やかな街中を見て目を輝かせた。

「帝都は賑やかだろう?どうだ?レイ」


 アキはレイの顔を覗き込んだ。



「うん!すごい!ねぇアキっ!!あれ見たい!!!」





 一瞬テオドールは目を見開いた。


 街に出てレイと呼ばれた瞬間に、リリィベルは普段の敬語を崩して話した。


 それはまるで、本当に礼蘭だった。


「おいっ・・・レイ!」


 走り出すレイを、アキは追いかけた。


 そして笑った。嬉しくて・・・懐かしくて・・・・。



「アキっ!早く!」

 振り返ったレイが、眩しく見える。


「わぁーってるよ!!待てよレイ!」



 街中に溶け込む。アキとレイが・・・・2人の世界に入り込んでいく。



 出店の食べ物を買って分け合って食べる事も


 綺麗なブティックに飾られているドレスを見ていても


 飲み物を買って、2人で交互に飲み合う事も・・・・。


 民たちが手作りしたアクセサリーを見る時も・・・。



「あ、これ可愛い。見てみて!アキ、この栞すごい綺麗!」

「おっ・・いいじゃん。買うか?」

「うん!!今読んでる本があるからそれに使いたいっ」

「おばちゃんこれ買う~。」


 レイが気に入った栞を手に取り、アキは購入した。

「ほい。」


 それを嬉しそうに受け取った。

「ありがとっアキ!」

 そう言って、レイはアキの頬にキスをした。


「ははっ大げさだな。もっと買ってやるからその分キスしろよ。」

 アキはレイの唇にキスをした。


「ふふふっ・・・アキはキス魔だなぁ。」

「嬉しいくせに・・・。」


 そう言ってもう一度キスをする。


「お客さん!いちゃいちゃするなら余所でやってね?」


 店員にそう言われて、笑って誤魔化した2人は、また手を繋いで歩き出した。




 出店街を少し離れると、休める広場に出る。

 ベンチに座り、アキはその長い足の踵を片方の膝に乗せ、背もたれに腕を伸ばした。


「疲れてないか?レイ。」

「大丈夫!楽しい!」


 アキはその黒髪を撫でていた。

 レイは自然とアキの腕に頭を乗せて寛ぐ。

 そして、空を眺めた。


「すごい空がきれい・・・・。」


「あぁ・・・。」


 アキは、レイを見て返事をした。


「・・・・アキ・・・・?」

「・・・ん・・・・?」




 レイは、また名を呼んだ。


「アキ・・・・」




「レイ・・・・?」



 レイは、ふと隣を見てアキの顔を見た。

 瞳が合う・・・。そっとアキに顔を近づけた。




「あき・・・・・・・ら・・・・・」


 アキの唇にキスをした。


 アキは、目を見開いてそのキス(・・)を受け入れた。




 あぁ・・・・お前の中でも・・・あきらは今も・・・生きている・・・・。




 少し唇を離して、角度を変えた。

 あきらの目に涙が浮かんだ。



「れい・・・・ら・・・・・。」





 前にもあったね‥



 俺達が‥‥こんな風に、昔に戻った瞬間が‥‥‥




 この世界でも、何度もキスをした・・・。


 けれど、魂がまた・・・喜んでいる。


 その名を呼び合う事が・・・・。



 悲しくて・・・・悲しくて・・・・・


 おかしくなりそうだ・・・・。




 長いキスの果て・・・・。


 レイの閉じた瞳が開いて、また閉じて


 涙を零した。






 長い夢を・・・見ているようだ・・・。





 人込みの中、自分たちだけ時が止まっていたような気がした。

 見つめ合って頬を撫でる。


「レイ・・・。さっき通りにあった、宝石店を見に行かないか?」

「ん・・・・?」


「俺さ・・・考えたんだ。指輪に変わる、2人の大切な思い出にしたいんだ。

 結婚式で、それを一緒につけたい。」


 レイは嬉しそうに微笑んだ。

「うん・・・・・・。あ・・・・。」


「ん・・・・・・?」


 アキがもう一度レイに唇を寄せた時。


「あたし・・・アキに言わないと・・・いけ・・・ない・・・・事が・・・・。」





 それだけ言い残して、



 ・・・レイは、夢から覚めた。




 ピタリと止まるレイに、アキは不思議そうに首を傾げた。

「・・・なんだ・・・・?」



 リリィベルはハッと目を見開いて、テオドールを見た。

「・・・アキ・・・様・・・・・。」


 心配そうな瞳でレイを見つめるアキ。

「・・・・レイ?」


 パっとレイは俯いた。

「あっ・・・なんでもありません・・・・。」




 今、私は・・・・何を言おうとしていたの・・・・・?


 それに・・・・ここまでの間・・・・ずっと・・・・。



「アキ様・・・私ずっと・・・なんて口を・・・・。」

「・・・・・・・・」



 テオドールはその様子を見て、察したのだった。


「いいんだ。俺と2人の時はその方がずっといい。堅苦しいのは嫌なんだ。

 様もいらない。俺たちは、婚約者で、いずれ夫婦になるんだぞ?」


 リリィベルの髪を撫でた。



 どうやら・・・・忘れては・・・・ないようだ・・・・。


 これまでが、どんな風だったか・・・・・。



「アキ・・・?」


「あぁ・・そうだよ・・・?」




「では・・・・テオ・・・・も・・・?」

 恥ずかしそうに見上げるリリィベルを見て微笑む。


「そ・・・。それでいい。最初からそう言ったのに。様なんかいらねぇんだよ。」


 そう言って、また口付けをした。


「・・・じゃあ・・・そうする・・・・ね・・・?」


「あぁ・・・。そうしてくれ・・・・。」



 夢から覚めたとしても、俺の側にはいつもお前がいる。


 その事実は変わらない。


 礼蘭も、リリィベルも、どちらも同じだから・・・。






 テオドールはリリィベルを連れて宝石店へやってきた。

「アキ・・・何を?」


 キョロキョロと見渡すリリィベルに、テオドールは笑みを浮かべた。

「あぁ、これだ。」


 ショーケースの中にあるのは、ピアスだった。

「・・・イヤリングではない・・・ですね・・・・。」

「あぁ、耳に穴をあけるからな敬遠されがちだが・・・・怖いか?」


 じっと見ていたリリィベルだったが、その言葉に首を振る。


「いいえ?イヤリングは落としてしまうかもしれないし・・・。

 この方が、離れないよね・・・?」

 少し照れながらリリィベルはテオドールを見つめた。


「あぁ・・・だから、いいだろ?一つを2人で、分けないか?」

「・・うん・・・。」


 手を重ねて笑い合った。


 その日、その宝石店で特別にオーダーメイドをした。

 身分は伏せたが、運び先を城に指定したらひどく不思議そうな顔をされた。


「皇太子殿下の命令であるから、必ず、丁寧に仕上げるようにな。」


 そう言って、テオドールとリリィベルは店を出た。



 2人でデザインしたピアスは、満月を縁取りした円の中に、雪の結晶のような細やかな星の形に宝石を細工をする様にしたものだった。


 月が星を守れるように・・・・。

読んで下さりありがとう御座いました!

少しでも面白いと思って頂けましたら、

ブクマ&評価を宜しくお願い致します・:*+.\(( °ω° ))/.:+


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