星の記憶 6 〜 想いを形に 〜
高校を卒業後、暁は看護大学へ進み、礼蘭は製菓専門学校へ進んだ。
卒業から2年、2人は成人し大人になった。
礼蘭は後に実家のカフェの為。そして花嫁修行だと笑っていた。学校の後は実家のカフェで働いている。
暁の看護大学の生活は忙しかったが、幸い電車で移動できる距離。
引っ越す事もなく実家から通い、夜は毎日礼蘭の実家へ帰ってくる。
課題もカフェで、礼蘭の側で。
「暁、コーヒーだよ」
勉強の途中で礼蘭が持ってきてくれた。
「さすがー・・・良いタイミングだー。」
背伸びをして休憩する暁に微笑む礼蘭。
暁はニヤッと笑って伸ばした手でそのまま礼蘭を抱きしめた。
「暁ぁっ、まだお客さんいるんだからっ」
「休憩なんだよ。補充させろ」
礼蘭の匂いを思い切り吸い込んで、暁は笑った。
2人の仲は相変わらずだった。
高校生の夏、ホテルから帰ってきた2人を迎えた父親達は切な気に目を逸らしたが、母親達は笑っていた。
家で事に及んだ事は内緒だ。2人は愛を順調に育んでいた。
「礼蘭ー、腹減った。」
「そう?じゃあオムライス作る?」
「えーい。」
軽めの喜びを表現し、暁は礼蘭の頬にキスをした。
「こらぁ!暁!」
礼司が遠くで怒鳴っている。
「あっ・・・・。」
礼蘭がヤバイって顔をして振り向いたが、暁はそっぽを向いた。
「お客さんいるんだから気を付けよう・・・。」
礼蘭は暁の髪を撫でてそっと離れた。
「あぁ・・・俺の栄養剤・・・。」
離れた礼蘭を見ながら、シャープペンを指先でくるくると回した。
「いーじゃん、どうせ常連しかいねぇ時間なのに・・・。」
「お前ねぇ。ここは店なの?わかる?お触り禁止!!勉強しろっ!」
礼司がそのためだけにやってくる。
「礼司おじさん、最近冷たいね?」
「バカ言うな。俺は優しい方だ!他の父親なら外に放り出してるからな!」
「そ?まぁおじさんは俺のお義父さんになるからしょうがねぇな・・・・。媚び売っとくか。」
「えっ・・もうそんな話してるの!?」
ビクっと飛び上がる礼司に、暁はニヤリと笑った。
「考えてない訳ないじゃん。大丈夫だよ。あと2年はまだおじさんとこに居るから。」
「にっ2年っ・・・あっ・・・そか、大学・・・」
「そ・・・。2年、俺が看護師になったら、覚悟しといてよ?」
ほっとしたのも束の間で、あと猶予は2年なのだ。
「はぁー・・・そうだよなぁ・・・・。今更お前達が離れるなんてありえないもんな。
仕方ない。一発食らわして我慢してやるか・・。」
「そう、俺の面取らせてあげるから、お祝いしてくれな?」
「はははっ・・・しょうがない・・・。覚悟しておくよ。」
そう言って礼司は暁の頭を一撫でした。
「お前はずっと、礼蘭の為に頑張ってくれてるからな・・・。」
「ふっ・・・俺、礼蘭のことすげー大事。たぶんおじさんと同じぐらい。」
そう言って微笑んだ。礼司もその顔に笑って返す。
「暁ぁ!オムライス出来たー!」
そう言って、オムライスを持ってきた礼蘭を、2人は笑って迎えた。
「愛してるレイー!キスしようぜ!」
暁が両手を広げて見せる。その頭を礼司が叩くのだった。
オムライスにデフォの様なハート形のケチャップ。
そう、2人が2人でいる事は通常のこと。離れる事のない。揺らぐ事のない愛だった。
大学の帰り道、同じ大学の女の子に呼び止められた暁。
頬を染めた女の子の様子を見て、分かっていた。何度も目線を送られていたから。
「あの、如月君・・・」
「あ、ごめん。」
「えっ・・・?」
「あ、ま。いいや、一応聞いとく。勘違いな場合もある。」
そうブツブツ呟き、暁は女の子と向き合った。
「続けて?」
「あのっ・・・大学入って如月君の事・・・ずっとす」
「はいダメ、ごめん。俺彼女いるから、さいなら」
撤収はいつも恐ろしいほど早かった。
くるりと方向転換して、女の子を置いて帰る。
礼蘭以外の好きを受け取る気は少しもなかった。
礼蘭以外の人との未来を少しも考えた事はない。
いつもそうだった。大学に入って礼蘭が隣にいない生活にやっと慣れ始めても、
次から次へと、女の子は現れた。
「俺の隣に礼蘭の幻見えねぇのかよ。」
そう言って暁はすぐ隣を見た。いつも隣に居た礼蘭の場所。
「・・・・それはさすがに俺、頭おかしいかな。」
真剣に呟いた。
でも本当にそう思っていた。いつも自分の隣には礼蘭がいる。
大人になって、別々の専門へ進み、会えるのは夜。連絡はスマホ。
それでも、常に俺たちは隣にいるように、メールで愛を交わすんだ。
空を見上げて、帰り道を歩く。
「あー・・・・礼蘭食いてぇな・・・・今日はどっか出かけるかぁ・・・・。」
その日の夜は連絡を入れておいたおかげで、夜、礼蘭が店に出る事はなく2人で食事に出掛けた。
腕を組んで街を歩く。それも少し久しぶりな事だったかもしれない。
けれど、いつも会っているから変わらない。
「礼蘭、何食う?俺礼蘭。」
「私は食べ物じゃないよ?」
「・・・じゃあ飲み物?中から湧き出るような?」
「その表現やめない?」
「え?今の分かったの?」
「・・・・・・怒るよ?」
「ごめんなさい。」
バカな会話をしてても、腕を組んで歩く2人は幸せそうだった。
お洒落な飲食店で食事をした。食後のデザート食べながらまったりしたところだ。
「今日は、何習ってきたの?」
テーブルの上で礼蘭に指を絡めながら暁は聞いた。
「えとね、和菓子。」
「もう今年で卒業だろ?」
「そうだよー。暁はあと2年かぁ・・・これから実習入るんだよね?」
少し寂し気に礼蘭は呟いた。
「うん・・・またちょっと忙しいなぁ・・・。」
「実習の時、暁すごい量の課題してるもんね・・・・。」
「まー・・・そら、人の身体に関わる事だからねぇ、中途半端じゃねぇ?ダメだよ・・・。」
「おじさん達にも聞いたりするの?」
「まぁ、現場知ってる人間に聞くのが早いね。」
「そっかぁ・・・」
悲し気な顔は晴れず手が止まる礼蘭。暁はそれが何を意味するか分かっている。
「大丈夫だよ。課題は礼蘭の側でやるから。」
「っ・・・いない方が捗るんじゃない?」
「無理、居てくれないと捗らない。」
礼蘭の手首裏にそっと二本指を当てたのだった。
「でも・・・」
「俺がいいって言ってんの。俺が勉強してるそばで寝てていいから。」
「・・・それもなんか悪い気がするんだよね。」
「いいんだよ。礼蘭の寝顔見て休憩するから。」
「えっいつもそうなの?」
「知らなかった?」
「寝てるんだよ?知らないよぉ・・・。」
「いつも可愛いなって思いながら見てるよ・・・。」
そう言って今も、愛しそうに見つめた。
「っ・・・ずるいっ・・・あたしは忙しそうな暁しか・・・・」
「ふーん・・・でも俺と一緒に居たいでしょ?」
「そうだけど・・・。」
「実習入る前に・・・・たくさん補充しねぇとな・・・。」
ニヤリと笑って礼蘭を見つめた。
「っ・・・暁っ・・・顔が・・・・。」
礼蘭の頬の色と、脈が速くなったのを確認した暁。
そっと大きく開いた。
「がおー・・・・・」
それは、これから食べるよの合図。
その日も、飽きない夜がくる。何度触れても触れたくなる。
熱くて長い夜。湧き出るような愛を舐め合う夜。
数日後の夜。礼蘭の実家のカフェに客が来た。
「いらっしゃいませ。2名様ですか?」
対応したのは礼蘭だった。
「はい。」
2人は礼蘭と同じような歳の子。けれど、なんだか少し警戒されている?
「・・・・では、こちらのお席へどうぞ?」
丁寧に2人を案内した。
メニューを渡していつも通りの接客をする。
「決まりましたらお呼びくださいね?」
痛く目線を感じながら、礼蘭は笑って下がった。
「礼蘭、どうした?」
礼司が戻ってきた礼蘭に声をかけた。
「いや・・・なんか、すごい見られてるような気がして・・・。」
「ふーん・・・。お父さん代ろうか?」
「あ、いや、大丈夫。そんな事言ってたら接客業なんて出来ないし。文句言われるわけじゃないから。」
そんな2人のお客からすいませんと声を掛けられて、礼蘭は向かった。
「はい、お決まりですか?」
「あの・・・。お姉さんに聞きたい事が・・・。」
「・・・はい?なんでしょう・・・?」
1人は口を閉ざし、1人は高圧的な態度で向かってくる。
「あの、如月暁さん、知ってますか?」
「・・・・はい。」
不思議そうな顔をして礼蘭は答えた。
「あのっ・・・こないだの金曜日、如月君と街歩いてました?」
「・・・はぁ・・・そうですけど・・・。」
ここまで来て礼蘭は察したのだ。あぁ、暁目当ての子だったのかと。
実際少なくないのだ。ここに暁が通っている事を知ってやってくる女の子。
そして、今度は一緒に居る事を見られて、ここまで来たという事か。
それはちょっと怖いな。
「如月君と付き合ってるんですか?」
「はい。」
「・・・・いつからですか?」
向かってくる女の子に、礼蘭は険しい顔をして答える。
「産まれた時からです。」
「はぁっ?ふざけてるの?」
とうとうキレ始めているその子に向かって、礼蘭も少しムカついていた。
これは接客ではない。女の闘いだ。
「だから、暁とは産まれた時からです。あちら?ご覧になります?」
指をさした所には、礼蘭と暁の思い出の写真がズラリとある。
産まれた時の並んだ写真、それぞれの誕生日、七五三、入園、入学、卒業、成人式。
正に産まれた時からなのだ。
そのフォトギャラリーを見た2人は固まった。
「どうです?産まれた時からでしょう?まだ何か?」
「っ・・・・・」
悔しそうにする女の子、今にも泣きだしそうな子。
その二人を見て、礼蘭はため息をついた。
「じゃぁ・・・・如月君の彼女ってあなたなんですね・・・。」
泣き出しそうな子がそう聞いた。
「・・・暁と何があったかは知りませんけど、そうですね。」
「っっ・・・やっぱり・・・あなただった・・・ホテルに入ってったのも・・・。」
「えっっっ・・・・」
その言葉に礼蘭は顔を真っ赤にした。
その日は確かに食事した後、2人でホテルに入った。朝帰りして2人で怒られたのだから。
「やっ・・・・あのっ・・・・」
慌てた礼蘭を女の子は狂気な目をしてみた。
「ずるい・・・。」
「えっ・・・・?」
カラーンと扉を開く音がした。
「ただいまぁー。礼蘭~?」
さも自宅に帰った様にやってきた暁だった。
けれど、礼蘭を見つけた時、礼蘭は床にへたり込んでいた。
「礼蘭!!!!!」
暁の大きな声に、礼司もびっくりして厨房から顔を出す。
「っ・・・あきっ・・・・。」
礼蘭は腕を押さえていた。上着の真っ白な制服が赤く染まり、床にも点々と血が落ちている。
「なんだおいっ!どうしたんだよ!ちょっ、おじさん!!なんかタオル!!」
「あっうんっ!!」
暁が顔を見上げると、ナイフを持っている女の子。
咄嗟にナイフを持っている手を掴み上げて捻る。
ナイフは床に転がった。
「お前・・・・・こないだ・・・・・っおじさん!警察!!!」
「っへぁっ・・・?」
礼司が見ても、どう考えてもナイフを持った女の子に礼蘭は傷つけられたのだった。
暁はその女を睨みつけた。
「てめぇ・・・・なんで此処にいるんだよ。それにこれはどういう事だ。逃がさねぇからな!」
女は暁と礼蘭を見下ろした。
「ずるいのよ・・・産まれた時から一緒なんて・・・・・。
如月君の彼女で・・・その上、腕を組んでホテルに・・・・・」
「っ・・・てめぇには関係ねぇんだよ!!!!!!なんで礼蘭を傷つけるんだ!!!!!」
「如月君を傷つける訳ないじゃない!!!!その子がいなくなればいいのよ!!!」
「礼蘭がいなくても俺はてめぇみてぇな女選ばねぇよ!!!!ざけんなっっ!!!!!
同じ看護師目指してる分際で人を傷つけるなんてどういう神経してんだよ!!!!!!!
てめぇもだ!!!黙って見てんじゃねぇよ!!!!!」
暁はもう一人にも怒鳴りつけた。
「暁・・・大丈夫・・・。」
「大丈夫じゃねぇよ!!!!変な所切れてたらどうすんだよ!!!」
「大丈夫っ・・・ちょっとだから・・・・。」
「るせぇ・・・こいつらは警察突き出すんだ。」
そうしてるうちに警察はやってきた。礼司と楓が対応し女達は連行されていく。
礼蘭と暁は病院に向かった。幸い傷は浅かった。
病院にいる間も暁の顔はずっと険しいままだ。
腕に包帯を巻いてもらって、暁と礼蘭はタクシーで家に帰る。
「・・・・暁?」
「どうした?痛むか?」
「そうじゃなくて・・・・顔・・・・」
礼蘭は暁の眉間に指を当てた。
「・・・・仕方ねぇだろ・・・・・・」
「大丈夫だってば・・・・。」
「俺のせいだから・・・・。」
呟いた暁に、礼蘭はそっと暁の足に手を当てた。
「告白されたの?あの子に・・・」
礼蘭の手に、自身の手を重ねた。
「すぐ断ったよ。聞くのも嫌なんだよ・・・。毎日お前連れて歩きてぇくらいだよ。」
その言葉に礼蘭は笑みをこぼした。
「・・・・暁・・・・大好きだよ。」
「れい・・・ごめんな・・・。俺・・・」
「暁は悪くないでしょ・・?暁がカッコいいから・・・仕方ないよ。
それに、暁目当てで来てるお客だっているんだよ?」
「はぁ?俺知らねっ!」
「あははっ!そうだね。あたしと暁見て帰っちゃう子多いもん。」
「・・・そうだったの・・・?」
暁が申し訳なさそうに礼蘭の顔を覗き込んだ。
そんな暁に、礼蘭は笑顔を向けた。
「暁が・・・いつもたくさん愛情表現してくれるから・・・
諦めて帰っちゃうの。・・・あたし罪な女じゃない?」
「はぁっ?なんで罪なの?俺が誰を愛そうが誰にも関係ないだろ!」
「そうだね・・・でも、女の子は・・・嫉妬するんだよ。泣いてる子もいるかも・・・。」
「だからってお前を傷つけていい理由にはならないだろ!!」
「・・・うん。けど、いいの・・・。」
「はっ・・・?」
過ぎ行く外灯に照らされる礼蘭は、幸せそうに言った。
「私は、暁と産まれた時から一緒で・・・誰よりも暁に愛されて・・・・。
独占してるから・・・暁に愛されてるからいいの。
ずっと一緒に居てくれたらそれでいいの・・・。」
その笑顔は、強がりでもなんでもなく、自信と愛に満ちていた。
「・・・・・バカ・・・・・」
暁は、優しく礼蘭を抱き締めた。
自分のせいで礼蘭に傷がついてしまった。
俺がもっとうまく対応していれば防げたかもしれない。
あんな風に流して‥その思いは礼蘭に向けられて‥
俺はバカだ‥‥
大事にしてきたのに‥
周りが見えなくて、適当にしてたから‥
俺のせいで礼蘭に傷が‥‥
「ごめんな礼蘭‥‥ごめん‥‥」
「暁、大好きだよ‥‥泣かないで?」
「‥泣いてねー‥‥」
それは、礼蘭に初めてついた嘘だった‥。
カフェに帰り、暁は礼司を見つけると礼司に頭を下げた。
「おじさん!ごめんっ・・・・・礼蘭に傷・・・つけちまって・・・・。」
そんな暁を礼司は黙ってみていた。
「あいつ・・・こないだ俺、告白されて・・・断ったんだけど・・・
こんな風になるなんて思わなくて・・・。俺のせいで礼蘭に・・・・。」
「・・・暁」
「・・・・・・」
ちらっと顔を上げた暁、礼司は暁の肩に手を置いた。
「もちろん、彼女たちが悪い。立派な犯罪だ。けどな?恨まれる原因を産むこともある。
お前は礼蘭しか見てないから分からないかもしれないけど、お前や礼蘭を好きだと思う人は
こうやって牙をむくこともあるよ。だからどんなに面倒でも、それを適当にしちゃだめだ。
相手は切実で、わかってくれる人がいるかもしれない。こんな例がないとは言わない。
恋人がいても諦めきれないと思う人がいるんだ。
お前の礼蘭を思う気持ちの少しくらいは、告白してくれた人に返してやれ・・・。
ありがとうとな。それと同時に、自分に大切な人がいる事を伝えるんだ。
全員に分かってもらうのは無理かもしれないが、お前を好きになってくれた人だ。
そうする事で、わかってくれる人もいる。これからは慎重にしないとな・・・。」
「っ・・・ごめん・・なさい・・・・。」
暁は深く頭を下げたのだった。
「お前は悪くない。今回は相手が悪かっただけだ。これからも気を付けないとな・・・。」
「もう・・・二度と礼蘭を傷つけないように・・・気を付けるから・・・・。
本当にごめんなさい・・・・。」
「気が気じゃなかったけど、礼蘭は無事だ。お前の対応が良かったんだ。
立派な看護師目指してくれよ。な?」
礼司はやっぱり、礼蘭の父親だった。礼蘭と同じように・・・
こんな俺を慰めてくれて・・・俺は甘やされていたのかもしれない。
礼蘭の傷が癒えた頃、暁は礼蘭と共に食事に出掛けた。
その日は2人が付き合った記念日。8月10日。
食事をした帰り道、綺麗な夜景が見える場所で二人はベンチに座った。
「はぁ~ご飯美味しかったね?」
「うん・・・。」
「初めて行ったけど、なんか見たの?」
「あ?うん、学生仲間に聞いて、旨いって聞いてたから。」
「そうなんだ。記念日にはお洒落な店だったね。ちょっと感動した。」
そう言って笑う礼蘭の横顔を見て、俺はまた幸せな気持ちになっていた。
ポケットに隠したある物を握りしめて・・・。
「礼蘭・・・・」
「んー・・・?」
暁の肩にもたれて礼蘭は心地よさそうに返事をした。
「・・・俺さ、お前に、渡したいものがあるんだ。」
「えっ?なぁに?記念日プレゼント?」
「あーうん・・・まぁ・・・。」
「いつも豪華なご飯連れてってくれるのに・・・。」
「そんくらいしかしてねぇけど・・・。」
「えっ十分だよ?」
「今年は・・・ちょっと・・な・・・・」
暁の顔は少し曇っていた。自信たっぷりな暁じゃない。
その顔を見て、礼蘭は少し心配そうな顔をした。
「・・・・暁・・・・まだ気にしてる?もう治ったよ?」
「・・そうじゃ・・・ねぇけど・・・・。」
暁は、少し気合を入れなおして、ポケットからそれを取り出した。
「・・・・・・」
礼蘭はそれを見て、口を閉ざした。
少し緊張した暁が、頬を染めて、その箱を開けた。
「・・・・ペア・・・リング・・・・?」
礼蘭がぽつりとつぶやく。
「・・・これは・・・将来の予約・・・・。」
「え?」
「こないだの事もあるけど・・・・いや、罪悪感とかで用意したわけじゃねぇよ?
その・・・お前が俺ので、俺がお前のである目に見える証・・・・。」
暁は、そっと指輪を取り、礼蘭の左手の薬指にはめた。
「・・お前と将来一緒になりたい・・俺の気持ち・・・・」
「・・・・・・・・・」
礼蘭はその指輪を見つめた。
それは花弁が彫られて赤い宝石がついた綺麗な指輪だ。
「OKなら、俺にもつけて?」
礼蘭は暁を見上げて、ふっと笑った。
「これ付けたら、もう離れないよ・・・・?」
「俺はお前以外・・・考えられない。」
真剣な瞳で、暁は言った。
「お前を愛してる・・・礼蘭・・・・。お前の未来、全部俺にくれ・・・。
まだ・・・予約だけどな・・・・?これ付けたら・・・俺たちはいつも一緒だって
誰が見ても分かるだろ?お前にもそうしてほしい・・・。お前目当ての客も多いんだから・・・。」
「・・・・・・」
礼蘭の物とは大きいその指輪には黒い宝石がついていた。
「ふっ・・・細い指輪だけど、結構派手だね?すぐ分かるね。」
微笑んで、礼蘭はその指輪を手にした。
そして、暁の左手の薬指にはめたのだった。
「暁の全部、あたしが予約しちゃった・・・・。」
耳元で、礼蘭は囁いた。
「それがしたくて、用意したんだよ・・・・。」
「ありがと、暁・・・愛してるよ。」
自然と抱き合って、キスをした。
「もう・・・予約、したからな・・・・?」
「ふふっ・・・うん・・・嬉しいよ。これからもずーっと暁と一緒に居られるね。」
「あぁ・・・ずっと一緒だ・・・。愛してる。」
星も、月も輝く夜空の下で、互いの証を指に宿した。
その夜も、2人は家に帰らなかった。
この幸せを噛みしめて居たかったから・・・・・。
読んで下さりありがとうございました!




