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鬱陶しいんだよ

 護衛よりも早く、皇帝陛下と皇太子それぞれに、魔術師から信号が入る。


「リリィが西の塔に?」

「はい陛下。」

「どういう事だ?」

「ピアとリコーの念話で、先日のパーティーで、リリィベル様と殿下の振舞についてお叱りを受けたと。

 反省の為、西の塔へ行けとの事です。2人の話を聞き、ハリーには殿下の元へ。」

「テオはどうした?」

「西の塔へ向かっております。」

 オリヴァーは眉を潜めた。


「言葉では・・・防げないな。」

「申し訳ありません。」

「仕方ない。言葉まで防げるわけがないのだから。」

「テオはちゃんと、護衛からの伝言を待ったか?」

「・・・はい・・・。すぐに駆け付けようとする殿下を、ハリーが必死に止めました。

 不自然になるから待てと。少し拘束させました。」

「あぁ・・・仕方ない。気持ちはわかるが、これが不自然では、台無しになる。」

 ロスウェルは少し申し訳ない顔をしていた。


「お前たちに罪はない。私が話をつけよう。」

「・・・・リリィベル様に、娼婦のようだと・・・そのような言葉を発したようでございます。」

「はっ・・・愛された事がないと、それすら気になるのだな。」

「派手にしてましたからねぇ・・・。」


「まぁ、それについてはテオにも反省をさせねばならんが、2人のパーティーだ。

 未来の皇太子と皇太子妃が仲が良くて誰が損をするんだ。西の塔を守っていろ。」

「はい。私は一足先に、西の塔へ。後ほど報告致します。」

「あぁ、行ってこい。」


 ロスウェルの指がパチンと鳴る。


 消えたロスウェルの居た場所を見て、オリヴァーは険しい顔をする。

「思い通りにならないからと、自ら動いたか・・・・。」




「ふふっ皇太后陛下!あの女を追い出して下さって嬉しいです。」

 皇太后の私室でライリーは嬉しそうにしていた。

「まだ城の中にいるのだ、まだだ・・・。それに、すぐに抗議に来るだろう。」

「どうなさるのですか?」


「ふんっ・・・西の塔なら、隔離も同然。やりようはある・・・・。」


 ただ・・・魔術師達がきっと何かするに違いない。

 その事を公にする事は出来ない。秘密裏に毒を盛るか・・・。


「あぁ・・娼婦には、客が付けばいいではないか・・・。」

 皇太后はニヤリと笑った。


 あの女を別の誰かに襲わせて、婚約者の権利を失わせればいい。

 強姦された女など、婚約者で居られないだろう。

 皇太子だって、嫌だろう。人の手がついた女など・・・・。


「皇太子も、そのうち分かる。愛だけでは皇族の婚姻は無理なのだ。

 ライリー嬢、皇太子になんとしても近づきなさい。近いうちに事が起こるだろう。


 そうなった時、お前がお慰めするのだ。」


 皇太后の言葉を聞いて、ライリーは興奮気味に笑みを浮かべた。


「ふふっ・・・はい・・・陛下・・・・。」


 私が、殿下の・・・側に居ればいいのよ・・・・。


 あの指輪だって、私がつけてやる・・・・。


 それから、叩き割ってから・・・・私の為の指輪をもらうのよ・・・・。



 私だって、殿下の唇と自分の唇を合わせたもの・・・。





「・・・・・・・。」

 リリィベルは、西の塔にある部屋へ通された。

 そこは、カーテンを開けても暗い部屋だった。何もかもが地味で、城の中とは思えなかった。

 けれど、決して心は折れていない。


 瞳は強く、両手を絡めて握り、スッと埃っぽいソファーに浅く座った。


「まだ、牢屋じゃなくてよかったわ・・・。私がここに居れば・・・・。」


 あんな風に言われれば、淑女の鑑とは言えないだろう。確かにそうだ。

 だから、これは仕方ない事だ。


 私は、思うがままに、その愛を受け・・・人前でありながら、その身を皇太子に委ねて。

 それを欲していたのだから。私が欲しがったのだから・・・・。


 視線も、唇も、心も、何もかも・・・・・。



「大丈夫よ・・・。私は・・・・。」

 指輪に頬を摺り寄せた。


「テオ様・・・・。」

 これは、私たちが繋がっている証。私はどんなに言われても平気だ。


 テオドールが侮辱されるくらいなら、私が娼婦だと言われている方がましだ。


 その身に相応しくないと言うのなら、私が相応しくなる努力をすればいい。



「離れないと・・・誓ったもの・・・・。」


 この愛がある限り、どんな場所だって平気・・・・・。



 扉の向こうで、声が聞こえてきた。

「・・・・・?」

 小さな声が、どんどん大きくなって届いてくる。



 西の塔の部屋の前には、皇太后の命令を受けた護衛が立っていた。

「そこをどけ。」

 護衛に向かって放った声は、テオドールだ。

「なりません。皇太子殿下。皇太后陛下の命令で御座います。」

「あぁ?俺に言ったか・・・?俺は皇太子だぞ。」

「皇太后陛下の命令で御座います。リリィベル嬢はこれから謹慎し、反省の日を過ごして頂きます。」

「隠居した皇太后の命令を聞き、俺の命令は聞けないだと?」

 怒りにいつもより声のトーンが低いテオドールが、護衛を睨みつける。


「・・・・申し訳ありません。」

「反省とは何のことだ?一体なにを反省するんだ?言ってみろ。」


「・・・淑女らしからぬ行動を、人前でされた事で御座います。」

「俺が婚約者と何をしようが関係ない。」

「帝国の皇太子妃となるに相応しくない振舞いで御座います。」


「てめぇ・・・」

 テオドールは護衛の腹を靴で強く踏みつけた。

「っ・・・・」


「皇太子妃になるのは、俺が決めた女だ。誰に指図される覚えはない。

 それに、お前がこうして拘束しているのは、皇太子の婚約者だ。お前達こそ、立場を弁えろ。


 お前たちが、一体誰を拘束しているのか。俺に首を撥ねられたくなかったら早くそこをどけ。

 俺は、お前らを殺してでも中へ入る気だ。さぁ、死にてぇのか。


 皇太后に伝えに行け。帝国の皇太子が大層お怒りだとな。」



 ガシャァァッッ!!!!ガッシャァァ!!!


 扉の外で、鎧が崩れる音がする。




 そうして、扉は開かれた。険しい顔で大股で近づいて行く。

「リリィ、何故黙ってついてきたんだ!」

 テオドールは怒りのままに言った。

「テオ様っ・・・ごっ・・・ごめんなさいっ・・・・。」

 怒った顔のテオドールに身を縮めたリリィベルだった。


 けれど、その身体をテオドールはぎゅっと抱きしめる。


「イーノクと魔術師から話は聞いている。お前は何も悪い事はしてないだろう。」

「・・・・いえ・・・・皇太后陛下の言葉はごもっともです・・・。」

「っ・・俺たちが何をしようと誰に文句を言われる筋合いはない!!」

「ダメですっ!!」

 リリィベルは、テオドールの胸をグッと掴み、テオドールを見つめた。


「あなたは皇太子で、私はまだ婚約者です・・・。振舞いが相応しくないと、

 テオ様まで非難されるのです。私を選んで下さったテオ様が・・・それが嫌なのです!


 お義母様の話を聞いてもそうです。私は、この国の高貴なあなたの妃になるのです・・・。

 人前で、あなたと口づけ一つ交わすだけで、人から中傷を受けるのであれば、

 私はそう出来なくても、たとえ謹慎されようと、あなたの側を望みます。


 だから良いのです・・・。」


「俺は良くねぇよ・・・・。」

 テオドールは険しい顔をして、リリィベルの二の腕をぎゅっと掴んだ。


「俺はちっとも良くねぇんだよ・・・。俺は人目なんか少しも気にしねぇし。

 お前が俺に相応しくないなんて事は、塵ほど思ってねぇ。

 どんなに人から言われても、やめねぇよ俺は。」


 その言葉にリリィベルは悲し気な顔をする。


「お前の事を、俺以外の奴が決めることなど一つもない。いいか・・・。

 俺は、どんな事があっても俺の思った事しかやらねぇ。


 愛し合って反省しなきゃならねぇことなんてねーんだよ!!!!」


「・・・皇太子殿下が・・・そんな事を言っては・・・・・」

 リリィベルの力が抜けてしまう。




「皇太子の前に・・・お前の前では、俺は一人の男なんだよ。


 こんな身分なんかじゃなかったら。とっくに結婚してその身体をひん剥いているよ。


 不自由過ぎて鬱陶しいんだよ・・・・。



 もっと、自由に愛して何が悪いんだよ・・・・。

 俺たちにその権利はねぇのかよ・・・・。


 ・・・・とにかく・・・・ここを出るぞ。ここはお前のいる所じゃねぇ。」


 グイっとリリィベルの手を掴んでテオドールは扉の方へ向かった。

 しかし、グッとリリィベルは力を込めて歩みを止めた。



「・・・・・・なにしてんだリリィ。」

 テオドールは、真顔で振り向いた。それは向けた事がない顔だ。


「っっ・・・嫌ですっ・・・・。」

「なんだと・・・・?」


 リリィベルの瞳から涙が零れ落ちていた。


「私がっ・・・今ここを出てしまったら・・・あなたの隣に堂々と立てません。

 あなたは皇太子殿下です。私は・・・あなたの権力を欲して側にいるのではありません!

 あなたと適切に愛せる事を主張するために・・・此処にいるのです!


 反省すると言ったのですから・・・然るべき時を待ちます・・・・。


 身分など関係ないとっ・・・言ってしまったら、私達はただの男と女ですっ。


 けれど、それを持って産まれたのですっ。ですからそれを捨てるわけにはいかないのですっ・・・。



 私だけを守って生きる訳にはいかないのです!!!目を覚ましてください!!!

 私はっ・・・皇太子であり、男でありっ・・・私を愛するあなたを愛しています!!!


 身分など関係ないとおっしゃるあなたにっ・・・手を引かれて出ていく訳にはいけません!」


「・・・・・・・」



 ポロポロと涙を流し、その愛しい瞳が険しく悲し気にテオドールを見つめる。

「・・・リリィ・・・・」


 その時、正気に戻ったような気がした。

 でもそれは違う。正気じゃなくて・・・・。



 自由に愛し合っていた、前世を思ったんだ。


 あんな自由な世界に産まれていた時は、こんな事はなかった・・・。

 どこでキスをしようが、誰に文句も言われずに・・・。


 ただひたすらに、愛し合っていた時・・・・。


 俺たちは、何故・・・離れてしまった?



「っ・・・うぅっ・・・」

「・・・・・・・・・・」

 声を漏らして泣き出すリリィベルを、テオドールは優しく抱きしめた。



「怒鳴って・・・ごめんな・・・・。」

「っ・・・テオ様っ・・・・」

「・・・手・・・痛かっただろ・・・。すまねぇ・・・・。」


 その身体を抱きしめて、心の中は雨の様に泣いていた。


 この身分をもう何年も生きていたけれど・・・・。


 お前と愛し合う事が、難しくて・・・遮るものが多くて・・・・。


 すぐ・・・我を無くしてしまう・・・・。


 俺は、前世で・・・どんな罪を犯した・・・・・。




 散々、この権力を使って‥‥偉そうな顔してても


 心の中で思ってしまう瞬間がある





 王子だなんて・・・面倒だって・・・・・。

やさぐれテオさんでした。読んで下さりありがとう御座いました!

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