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パーティーは華やかに始まる

 婚約記念の舞踏会当日。


 テオドールは白い皇族の正装だが、手首の袖が薄紅色になっていて、衣装の縁は薄紅色で作られている。そして皇族の真っ赤なサッシュを付けた。リリィベルは薄紅色の首元を隠したノースリーブドレスで、細い腰は白いシルクできゅっと締められ右側でリボンとなりそのリボンはふんわりとしたドレスに沿って流れ落ちる。細い腕にアームロングの手袋をつけ、控え目で清楚なカチュームティアラをつけ、ストレートな金髪はゆんわりと結い上げられ、耳元が露わになりティアラとセットの耳飾りが輝いた。


「リリィ、今日もとても綺麗だ。」

 テオドールがリリィベルに囁いた。

「ありがとう御座います。テオ様も素敵ですよ?」

 綺麗な笑みを浮かべるリリィベルだが、テオドールは言葉とは裏腹だった。


 この綺麗な姿を、見せたくない。自慢している場合ではないのだ。


 邪な気持ちでリリィベルを見る存在がいる。どれほど気持ち悪いことか・・・・。

 首元と手袋で、肌の露出は控えたものの、リリィベルそのものがその対象となる。

 着ている服が何であれ、リリィベルで性を想像されるのが、殺したい程の思いだ。



 けれど、婚約パーティは始まる。自分のものだと・・・主張するのだ。

 彼らが、リリィベルに触れる機会はない。


 時が来たら、必ずその目を抉り取り、心臓を掴みとってやる・・・・。


 そんなテオドールと共に、オリヴァーもまた張り詰めた気持ちでいた。

 自分の母が愛するマーガレットに仕掛けてくる事はわかっている。それが何かは分からないが、

 ロスウェル達を信じ、己の力で愛する者を守る。


「テオドール・・・。」

「はい・・父上・・。」


 入場前、2人は険しい面持ちで扉の前に立っていた。


 皇太后の企みを知ったとは言え、その人たちを露骨に排除する事は出来ない。

 作戦を知っていると知らせてしまう事になる。だから、名前と顔を覚えこちら側が注意するしかない。

 ロスウェル達はすでに大ホールに姿を隠して待機している。

 皇族席にハリーが、会場の四隅にピア、ドラ、リコー、フルー。

 オリヴァーの後ろをロスウェルが、姿を隠しついて歩く事になっている。


 4人の身体はロスウェルの魔術によって見えないバリアが包んでいる。


「行くぞ、気を抜くな・・・・。」

 オリヴァーはそう呟き、マーガレットと共に入場したのだった。

 それに続き、テオドールとリリィベルが入場する。


 盛大な拍手と共に、皇族たちと婚約者は迎えられた。

 キラキラと光るシャンデリアの下。オリヴァーは瞳だけで四隅を笑って確認する。


 そして、上段から会場に声を張る。


「皆、集まってくれてありがとう。今宵は我が皇太子テオドールとリリィベル・ブラックウォール伯爵令嬢の婚約を祝う舞踏会だ。楽しんでくれ。まずは開会のダンスのお披露目だ。」


 そう言うと、大ホールの中央へテオドールとリリィベルが進み歩く。


 中央に立った二人は見つめ合い、笑みを浮かべた。

「・・・・リリィ。愛してる。」


 そう呟いてテオドールはリリィベルの額に口づけた。


 それが合図の様に音楽は始まった。

 優雅に踊る2人を・・・集まった貴族たちが穏やかに、悔し気に・・・様々な思考を浮かべている事だろう。


「テオ様。」

 リリィベルに呼ばれ、ハっとしたテオドール。

 ずっとリリィベルを見つめていたはずだった。

 けれどリリィベルの声に驚いたのだった。


「どうした?」

 踊りながらリリィベルに返事をした。

 リリィベルは、肩に置いていた手をそっとテオドールの首に回し、曲に合わせてふわっと抱き着きテオドールの唇に口づけた。


 口づけを交わしながらくるりと回ってリリィベルはそっと離れ、また踊る。


「私を・・・見つめて下さい・・・・。」

 テオドールの心を取り戻すようにリリィベルは囁いた。

 その言葉にテオドールは穏やかな笑みを浮かべて、リリィベルを見つめた。


「あぁ、いつも見つめるさ・・・。俺がお前をどれだけ愛しているか、

 見せつけてやるんだからな・・・・。」

 そう囁いて、テオドールはリリィベルをさらに引き寄せてダンスを踊った。


 身を寄せ合う瞬間、くるりと回したリリィベルを引き寄せその身に近づく瞬間・・・。

 ダンスに沿い、身体を寄せ良いタイミングに合わせて口づけを交わす。



「はっ・・・本当に見せつけてくれるな。あいつらは・・・。」

「ふふっ。こうでなくっちゃね。オリヴァー様。」


 その二人の愛が溢れるダンスを見ながら両親は微笑んでいた。

 そしてその二人の後ろでロスウェルがオリヴァーに囁いた。

「し過ぎでは?」


「ははっ・・・二人の舞踏会だ。好きなようにさせておけ。」



 ダンスの締めくくり、くるりと回り身を離したリリィベルをくるりと引き寄せ、音楽は終わった。

「もう一度だ・・・」

「はい・・・・。」

 そう言って2人は口付けをしたのだった。



 拍手に包まれ2人はゆっくりと唇を離した。



 全員に向かいテオドールは告げる。

「今宵は私たちの為に集まってくれた事に感謝する。私はこのリリィベル嬢と共に、

 次代を背負って歩くと誓った。リリィベルは私が生涯、愛する者だ。


 ここに集まった皆達にも、愛する者がおるであろう・・・。


 私たちの幸福と共に、そなたらの幸福を私たちも願っている。

 今日は、楽しんで行ってくれ。」


 テオドールの言葉に拍手と歓声があがる。


 テオドールはリリィベルをエスコートし、両親の元へ向かった。


 2人の前に立ち、頭を下げたのだった。

 温かく両親が迎えてくれる。ついでにロスウェルとハリーも・・・・。


「さぁ・・・・皆、今宵は楽しんでくれ!」



 テオドールとリリィベルは2人掛けのソファーに腰掛けた。

 貴族たちが皆、ぞろぞろと2人に祝いの挨拶にやってくる。

「皇太子殿下、リリィベル嬢、ご婚約おめでとうございます。」

 ブリントン公爵が挨拶にやってきた。

「あぁ、ありがとう。ブリントン公爵。」

「リリィベル嬢、お初にお目にかかります。」

「リリィベル・ブラックウォールで御座います。お見知りおきを・・・。」

 凛とした瞳で、返事をしたリリィベルだった。


 リリィベルは家紋と爵位を覚えていた。皇太后の弟である事ももちろん知っていた。

 だから、知っている。この人も敵だと言う事を・・・・。


「皇太子殿下、リリィベル嬢、この度はおめでとうございます。」

「あぁ・・・・ヘイドン侯爵。ありがとう。嬉しいよそう言ってもらえて。」

 テオドールはリリィベルの肩を抱き寄せて返事をした。

「ありがとう御座います。」

 リリィベルも微笑んで返した。少し後ろにいるライリーにも目を向けて・・・。

「しかし、殿下とリリィベル嬢はとても仲睦まじいご様子ですね。」

「あぁ、私はリリィをとても愛しているのだ。ついダンスも・・・近づく度に口づけをしてしまう程だ。

 伴侶に巡り合えていないものには目に毒だっただろうか?」

「ははっ・・・二人はまだ婚約したばかり、今が楽しい時期でしょう。まだ日も浅いですからね。

 ずっと・・・そのまま居られると良いですね。」


 その言葉には、裏がある。ずっとそのまま居られるか見物だと・・・。

 テオドールはニヤッと笑った。


「ヘイドン侯爵の娘も、良い伴侶を得られるとよいな?舞踏会にはたくさんの将来有望な者たちが来ている。きっとダンスに誘われる事だろうな。たのしんでくれ。」


「・・・・・ありがとう・・御座います。殿下・・・・・・・。」

 作られた微笑みでライリーは返事をしたのだった。


 そんな返事を聞きもせず、テオドールはリリィベルの頬に口付けをした。


 お前の事など、見ていない。

 そう、見せつけるための口づけだった。


 戻っていく2人を黙って見送るテオドールだった。


 〝さぁ‥腹が立っているだろう‥‥


 その怒りに任せて、お前達が転がり落ちてくるのを、待っている‥‥〟



 そんな中、彼等は現れた。テオドールはリリィベルの腰をグイッと抱き寄せる。リリィベルはスッと扇子を広げて口許を隠した。


 スッと頭を下げたオリバンダー侯爵一家

「皇太子殿下、リリィベル嬢、お祝い申し上げます。」

「オリバンダー侯爵‥あぁ、ありがとう。そなたも祝ってくれるのだな。嬉しい限りだ。」


 ドス黒い殺意を胸にしまい、テオドールは返事を返した。


「息子のモリスと、レイブでございます。殿下。」

「あぁ、城の国庫管理補佐と、皇室騎士団第三番隊の騎士であったな‥‥よく働いてくれているな。騎士の息子は、今日は警備はないのか?」


「是非殿下とリリィベル嬢へお祝い申し上げるべく、本日侯爵家の者として来ました。」


「そうか、ありがとう。下がっていいぞ。」


 テオドールは1度も頭を上げさせずにそう言った。


「っ‥‥」

 後ろで控えているレイブは少しだけ顔を歪ませた。


 テオドールはその瞬間を見逃さなかった。

「なにか、あるのか?下がれと言ったが?」

「いえ、失礼致します。」

 オリバンダー侯爵家はその場を去った。


 前を向いたまま、リリィベルに聞こえる声だけで囁く。

「それでいい。お前のすべてを見せたくない奴らだ。」

「はい‥‥テオ様‥」

 リリィベルは訳は聞かされてはいないものの、

 彼等が来た際は、腰を抱くから、扇子で隠し、自分に身を寄せろと伝えて居た。



 テオドールの雰囲気は一気に険しいものとなった。

 それを察したリリィベルは、テオドールの頬に手を当てた。

「テオ様‥‥ご機嫌斜め?」

「子供か?俺は‥」

「ふふっテオ様、また後でダンスを踊りましょ?」

「‥‥何度でも踊ろう。俺達の舞踏会だ」


 そう言ってリリィベルの頬に口付けた。


 険しい雰囲気は少し和み、その後も挨拶へやってくる者達を迎えた。


「皇太子殿下、リリィ!」

「お父様っ!」


 2人の前にリリィベルの父、ダニエルがやってきた。

 リリィベルは立ち上がり、その身をダニエルへ預けた。

「伯爵!遠い所ありがとう。変わりはないか?」

「はい。殿下。リリィは殿下を困らせてはおりませんか?」


「まぁ‥お父様ったら‥‥」

「ははっ困る事など何もない。私はとても幸せだ。 感謝している。」

「そうですか、それは良かった。」


「父上が、そなたが来るのを楽しみにしていた。今夜も部屋を用意してあるから、泊まって行ってくれ。」

「ありがとうございます。殿下。では、皇帝陛下と皇后陛下に挨拶して参ります。リリィ、殿下に迷惑かけないようにな?」


「お父様っ私は小さな子ではありませんっ‥後で、またお話ししましょうね?」

「あぁ、楽しみにしているよ。じゃあまた後で。殿下も失礼します。」

「伯爵も楽しんでくれ。」


 笑顔で去っていくダニエルを見送った。

「嬉しそうだな、リリィ。」

「はい、久しぶりにお父様に会えました。」

 嬉しそうなリリィにテオドールも微笑む。


「だが、寝るのは私とだ?いいな?数日居るんだから。

 お前が居ないと寝れないんだ。」

「ふふっ、私もテオ様と一緒がもう当たり前になりましたので、お側を離れません」

「あぁ、そうしてくれ‥」

 頬と体を寄せ合って笑う2人。幸せな2人だった。




「あぁ‥‥憎らしい‥‥」

 そう声を漏らしたのは、オリバンダー侯爵家長男のモリスだった。


「しっ‥声を小さくしろ‥」

 オリバンダーはそっとモリスを諌めた。


 その側にはドラが居た。


「王女を勧めたおかげで、あぁして警戒しているのだ。

 けれど、それが逆にギルドに我々が関わっていることは知られない。」


「あの細い腰を見ろ‥‥なのに、あの豊かな胸‥‥代わりとは比べ物にならないぞ‥‥あの小さな唇も‥‥自分がしている思えば、唆られる‥‥」

 涎でも垂らしそうな勢いのレイブが呟いた。


「ふっ‥‥‥暗殺者は寝静まった夜だけ来るのではない‥‥」

 オリバンダーは呟いた。



 ピリッ‥‥


 ロスウェルは耳を抑え、オリヴァーにそっと近づいた。

「陛下‥‥、オリバンダーの近くにいるドラから念話がきました。」

「なんだ」

「暗殺者は、寝静まった夜だけ来るのではない‥と。襲撃に備えましょう。」

「わかった。任せる」

「畏まりました。殿下にもお伝えを。ハリーに伝えます。」


 テオドール側にも伝言はハリーによって伝えられた。

「リリィ、絶対に俺から離れるな。」

 何食わぬ顔で、2人掛けのソファーで身を寄せて座った。

「テオ様‥?」

「心配するな。俺の腰にしがみついていろ。」

「はい‥‥」

 そう言ってテオドールはリリィベルの肩を抱き、リリィベルはその胸に身を寄せた。


 しばらくの間、緊張感が張り詰める。

 そんな時マーガレットの元へ給仕がやってきた。

「ありがとう」

 マーガレットは笑顔でグラスを受け取った。それは前もって決まって居た給仕だ。

 計画を知った上で、予めグラスを運んでくる時間を決めて居た。

「問題ありません。」


 側に控えるロスウェルがグラスの中身を透視する。

 毒の類は入っていない。

「それでも、私が先に口をつけよう。」

 マーガレットの持ったグラスを、オリヴァーはスッと静かに取り自分で一口飲んだ。


「あぁ、大丈夫だ。」

「陛下?私は命懸けですよ?」

「わかっている。疑ったんじゃない。喉が渇いたんだ。」

 そう言ってニコッと笑った。


 1つのグラスを仲良く分け合う2人。

 側でロスウェルはため息をついた。

 何せ、マーガレットに何かあれば、火炙りなのだから。



「テオ様、私も‥お義父様達みたいにしたいです。」

 リリィベルは頬を赤くさせてつぶやいた。

 テオドールは2人を盗み見ると、ふっと笑いをこぼし、ニヤリと笑った。

「口移しで飲ませてやろうか?」

「そっれは、やり過ぎですっ‥恥ずかしいです。」


 時間通りに訪れる給仕がテオドールとリリィベルの元へやってくる。

 グラスを手に取ったテオドールは、くいっとシャンパンを一口飲んだ。


「ほら‥‥飲ませてやろうか?」

 自分の口をつけた所をリリィベルの唇に当てて囁いた。

「むゥ‥‥」

 グラスを当てられて声を漏らしたリリィベル。

 良いも悪いも言えず真っ赤な顔をした。


 その顔を見て笑うテオドール。

 その2人を、間近で見ているハリーは呆れた顔をしていた。

 慣れたものだ。





「‥‥お父様、私やっぱり我慢できないわ‥‥」

 遠くで、ライリーがヘイドン侯爵につぶやく。

「‥‥もうすぐだ‥‥次の給仕で、回ってくる‥」


 ピリッ‥

 またロスウェルに念話が来る。リコーからだった。

「陛下、次の給仕のようです。」

「そうか、わかった。口を割ったのか?」

「そのようです。リコーの範囲にヘイドン侯爵がおります。発言者はヘイドン侯爵です。また、ライリー嬢も、何か仕掛けてくるかもしれません‥。殿下達に当てられてます。」


 グイッと首を傾げて、オリヴァーは2人を見た。


 仲良くグラスに口を当てたり、口移しで飲ませたり、

 もうやりたい放題だ。ハートが飛び交うとは正にこの事だ。


 オリヴァーも流石にそれにはため息をついた。

「あぁ、アレだけされれば‥目の毒だ。レースがついてるだろうが、レースがっ・・・」

そう、皇族の二人掛けのソファーにはレースの目隠しがついている。


「オリバンダーらも見てます。ハリーに伝えましょうか?」

「天然でしてるからな‥言っても止められない。むしろ何があっても離れないだろうから放っておけ。」

「ですね。普段だったら傍迷惑なバカップルです。高貴な身分で無ければ、石投げられますよ。」

「ははっ、その時は小石だけ当ててやれ、いい加減にしろとな?」

「そうしましょう。」

 オリヴァーとロスウェルはクスクスと笑っていた。


 皆が音楽に合わせて踊ったり、話したり・・・会場は賑わっている。


 そして、オリヴァーとマーガレットの元へ、次の定時の給仕がやってきたのだった。


「ありがとう。」

 マーガレットは、それを受けとる。


「なにか入っております。やはり毒ですね‥。」

 予想は当たった。ロスウェルもそれを確認した。

「そうか、では私がもらおう。」

 マーガレットのグラスをオリヴァーはその手に取った。


「オリヴァー様‥‥」

 マーガレットが心配そうに呟いた。

「安心しろ、私は飲まない。余興をしよう。」



 ニヤリとオリヴァーは笑って見せた。


前話を払拭できるように、糖度増して書いてます。ちょっと急ぎ目で書いたので誤字脱字多いかもしれません・・・。読んで下さりありがとう御座いました。

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