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負けない

「・・・・・・テオ様」

「・・リリィ・・・」


リリィベルの優しい声で、テオドールは目を覚ました。

美しい笑顔がそこに居て、心が澄んでいく・・・。



昨晩、たくさんキスをした。星の数ほど・・・・。

眠くなりながら、顔を寄せて・・・きっと、一緒に落ちてしまった。


テオドールは、リリィベルの唇に手を伸ばした。


「・・・少し荒れたな?」

「ふふっ・・・いいんです・・・・あなたを独り占めしたんです・・・・。」

「朝から誘うな・・・。」

「・・・して、くれないのですか?」

少ししょんぼりした顔をしたリリィベルを見て、またきつく抱きしめた。


「ふっ・・・まさか・・・その唇は、俺のもんだよ・・・・。」

「はい・・・。朝のキスを・・・して下さいませんか?」

「俺の天使は、朝から甘いな・・・。」

そう言って、唇を重ねた。


「テオ様が愛しくて、はしたないですか?」

間近で見つめ合ったリリィベルは悪戯な笑みを浮かべていた。

「はしたなくて結構だ。俺を欲しがれと言っただろ。俺もそうする。」

「はい・・・テオ様・・・・どうか、いつも私を求めて下さい・・・・。」


久しぶりに安心して眠る事が出来た。リリィベルを抱きしめていると

幸せで仕方ないんだ・・・。俺の安らぎはここにある。


昨日までが噓のように思う・・・幸せな朝を迎えた。



ダイニングルームで、父上と母上と4人で朝食をとった。

母は心配そうにテオドールを見たが、またすぐ微笑んでくれた。


今日は貴族議会がある。気は抜かない・・・。


「じゃあリリィ・・・勉強頑張れよ。けど無理はするな?分かったな?」

「はい。テオ様。」

額に口づけをして名残惜しく手を離した。


皇帝オリヴァーと皇太子テオドールは、戦場へ向かうのだ。



テオドールと別れた後、リリィベルは護衛を連れて、

妃教育を受ける部屋は行くところだった。


長い廊下を歩いていると、その向かい側から

ヘイドン侯爵家、ライリーが歩いてくる。


リリィベルは、その目に入っていたが構わず歩き続けた。

爵位はライリーは侯爵家だが、辺境伯もほぼ同等な立場と言っても過言ではない。辺境伯とは、国の要である。

それをリリィベルは誇りに思っている。

そして、今は皇太子の婚約者、何があっても引くわけにはいかない。


ライリーはその目を鋭くさせ、スタスタと歩いてくるリリィベルを見た。


「‥‥待ちなさいよ。」

2人の立ち位置がほぼ同じ時だった。

口を開いたのはライリーだった。

「ヘイドン侯爵令嬢!皇太子殿下の婚約者のリリィベル様になんという口を!」

護衛は声を荒げた。


「ふんっ‥‥護衛は黙っていなさい。」


だが、リリィベルは静かに口を開いた。


「‥‥そんな言葉を掛けられる身分ではありません。改めください。」

リリィベルは目も合わさず、そう告げた。


「たかが‥伯爵家の分際で、私と張り合う気?」

「私の家はブラックウォール辺境伯、私は皇太子殿下の婚約者です。あなたと張り合うことなど、一つもありません。」

リリィベルは、ライリーを凛とした顔で見た。


「皇太子殿下の婚約者になって‥‥浮かれていられるのも今のうちよ‥‥」

「あなたが決めることではありません。皇太子殿下が、私をお選び下さいました。」


かぁっと怒りで赤くなるライリーの顔、今すぐにでも引っぱたきたい衝動。

「っ‥‥急に現れてなによ!私は小さい頃からずっと‥」

「‥では、幼い頃から今までずっと、殿下に選ばれなかった貴方は、殿下の目に留まらない存在なのでは?」


「なん‥ですって‥‥?」


冷ややかな瞳でリリィベルはライリーを見つめた。

「私は先日の殿下の誕生祭で、初めてお会いしましたが、

その時から、殿下のご寵愛を受けております。」


「っっ‥‥なんて‥失礼な‥‥‥」

激しい怒りをその顔に浮かべたライリーだった。


「そんなお顔をされるからです。そして、私に対する敵意‥‥殿下はご存じです。私から殿下を奪う事など時間の無駄でございます。私を愛する殿下でございます。

これは、自惚ではございません。事実です。


お忘れなき様‥‥その胸に刻み下さい‥。では、将来の為の妃教育があるので、私はこれで‥」


「‥‥なんて女‥‥‥」


図々しいわ‥‥殿下のご寵愛を振り翳して、なんて傲慢な‥

あなたは妃に相応しくない。


殿下はいつか、私を見て下さるわ‥


こんな傲慢な女なんかより、私の方が殿下のお役に立てる。

誰より、殿下を愛している‥この想いが負ける事などない‥




リリィベルは、その顔に初めて怒りの色を浮かべた。

「ヘイドン侯爵令嬢‥あの方が1番‥」


テオドールを恋い慕っているのが、ヒシヒシと伝わる。


私は負けない‥‥、どんな目で見られようと‥‥

テオ様を、誰にも渡さない‥‥‥


どんなに欲深い女だと言われても‥‥


私はテオ様を愛し続ける‥‥‥

あなたよりもっと、深く‥‥


テオ様の腕の中で、私は強くなる‥‥


誰にも負けるわけにはいかないの





私は、あの方がすべてなの‥‥

私の命は、あの方の為にあるの‥‥


それだけは、誰に理解されなくても

私の心は叫ぶ。



あの方のそばを離れないと‥‥‥

何度も繰り返される。離れたくないと‥‥‥




「皆に、伝えておくべき事がある。

この帝国で、現在20の闇ギルドが存在しているのを知っているか?」


貴族議会の場はしん‥と静まり返っていた。


皇帝の言葉に。



「皇太子、報告を‥‥」

「はい、陛下。」


皇太子は、その眼を強く‥貴族達に向ける。


「私が、婚約者を発表してから、今日まで‥‥

その闇ギルドから、暗殺者が送られてきている。」


皇太子が発した言葉にザワザワと貴族達の様子が変わった。

その光景を皇帝は涼しい眼をして見つめていた。


「今から、闇ギルドに関連し私の婚約者リリィベル•ブラックウォール伯爵令嬢の暗殺依頼に関わった者の名を挙げる。」


「ランドール侯爵家、ホイストン伯爵家。マッケラン伯爵家。本日、席を外している彼ら一族は、

すでに獄中で尋問中に死亡した。」


「彼らは!皇太子殿下の婚約者に暗殺者を送ったというのですか?!」

そう声を上げたのは、


「そうです。ブリントン公爵。」

「何という事か!帝国の皇太子に対してその様な!!」

怒りを露わにする公爵に、皇帝は目を細めた。


ブリントン公爵家は、皇太后の生家。

関わりがないはずがない。


リリィベルではなく、ヘイドン侯爵令嬢を望んでいるはずだ。


「実に私も残念で御座います。ブリントン公爵。」

「あぁ、皇太子殿下‥‥さぞ、リリィベル嬢は震えていらっしゃる事でしょうに‥‥」

その労わる様な表情は、嘘か、偽りか‥


「彼女は、皇太子の婚約者となった身である事を十分に理解しています。ブリントン公爵」

「えっ‥?」

テオドールはニヤリと笑みを浮かべた。


「この帝国の令嬢達の思いを、受け止めている。そうでなければ、私の婚約者など務められぬと‥

本当に、心強い‥どうですか。この未来の先、私の隣に立つに相応しい女性です。


普通の令嬢ならば、震えて私に泣きつくかもしれないな?


リリィベル暗殺成功報酬は、帝国予算2年分の額に相当する。」



その場にいた全員が目を見開きどよめいた。

その光景を見て、皇太子はさらに続ける。


「どうだ?未来の皇太子妃を殺した者には、多額の金が懐に入るのだ。その額だけで、帝国民が豊かに暮らせるであろう。


私の婚約者は、高い評価をされている様だ。


そんな額をかけるほどの存在であるとな。」



その言葉にブリントン公爵は驚いた表情を浮かべ、

ヘイドン侯爵は眉間にシワを寄せたのだった。


「その婚約者は、暗殺者を向けられているのですよね?」


そう言葉を発したのは、オリバンダー侯爵だった。


「そうです。オリバンダー侯爵。」

思いがけない所から声が上がったと、皇帝は感じていた。


オリバンダー侯爵家、当主ラダクス•オリバンダーは、中年男性で、後継者の25歳と18歳の息子が2人いる。どちらも優秀だと聞いている。25歳の息子、モリス•オリバンダーは城で国庫管理責任者の補佐として重要な任務についているし、18歳のレイブ•オリバンダーは皇室騎士団第3騎士団の騎士、皇太子妃を狙う年頃の娘は居ない。特別皇太后に接点はない。

オリヴァーがデビッドと争っていた時も、その立場はほぼ中立的で、沈黙を保っていた程だ。ヘイドン侯爵家とも邪な繋がりがないと考えていた。


「殿下の婚約者として、認められない。という事では?」

「‥‥なんだと?」



オリバンダー侯爵は立ち上がり口を開いた。

「女の嫉妬が絡むと申しましても、ギルドに暗殺を依頼される程の者であり、殿下の婚約者に相応しくないと言われているも同然です。いつ帝国がその婚約者がのちに皇太子妃となったとしても、皇太子が然るべき段階を踏まずに、急な婚約発表をなされたのが、そもそもの原因ではないかと思います。殿下の御世には、貴族が皆背を向けてしまいます。」



「そうか、それは、私がこの国を担うに相応しくないと、貴族達から、そなたから、謀反を起こされると言っているのか?私の評判は相当悪い様だな。然るべき段階とはなんだ?お前達一人一人に聞いて歩かねばならなかったか?

皇太子の私が‥‥?」


「恐れながら殿下、殿下の御世が安寧である事を私は貴族として望んでおります。国母となる存在が暗殺依頼の報酬が帝国の予算に匹敵するなど、前代未聞でございます故‥


‥‥その座から下ろすのが、最善ではないのですか?

さすれば、そのような無駄な金が暗殺者や闇ギルドの懐を潤す事もなくなりましょう。」


「‥‥そなたは、リリィベル嬢を私の婚約者から外せと申すか?私に向かって‥」

皇太子は、オリバンダー侯爵を睨み付けた。


「私は、殿下と婚約者様の身を案じて申し上げております。」


「では、私に相応しいと思う者を挙げてみてはどうだ?

この帝国の皇太子妃に相応しいと思う者に心当たりがあると?」


「恐れながら申し上げます。私は、隣国イシニス王国の姫君、レベッカ・イシニス第一王女を推薦いたします。」


「!!!!!」


皇帝と皇太子は目を見開いた。


「それはどういう事だ?」

皇帝はオリバンダー侯爵を睨み付けた。


「陛下、この帝国の同盟国は4つ御座いますが、イシニス王国では、最近新たな鉱山が見つかっております。イシニス王国は怒涛な発展をしております故、我が帝国の皇太子とイシニスの王女が婚姻なされば、この帝国の未来は明るいでしょう。暗殺者の懐が潤うよりも、然るべき位を持つ王女と婚姻し、同盟国となれば‥」


「なぜ、そなたがそんな事を口にするのだ?」

「陛下、私は国を想って発言しているのです。

恋だの愛だのと夢物語は、平民のする事で御座います。


‥このような意見を耳にして、私に罰を与えるのですか?」


「私は暴君か?」

「いいえ。聡明な皇帝陛下と皇太子殿下を信じて我々は存在しているのです。1つの意見として、お聞き届け下さいませ。」



「‥‥‥そうか、皇太子と婚約者に暗殺者が向けられているのは事実。私は徹底的に調べ上げ、処罰する故、どうか、皆も協力してくれ‥‥」


皇帝がその怒りを隠して、静かに笑みを浮かべた。


「それから。」


「イシニス王国との件だが、こちらから打診するつもりはない。オリバンダー侯爵。私は帝国の為に、皇太子に政略的結婚をさせるつもりはない。私は、自身が皇太子であった時のような苦労をさせたくないものでな‥。それに、愛されぬ妃など、飾りにすぎん‥。皇族の間で血を争うなど愚かではないか?」


「オリバンダー侯爵、そなたの意見は覚えておこう。

しかし受け入れるという答えではない。しかと心に刻んでおけ。」


「恐れ入ります。陛下‥」

そう言ってオリバンダー侯爵は頭を下げた。




リリィベル暗殺の件を最後に、貴族議会は終わった。



読んで下さりありがとう御座いました。

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